JAの活動:農協時論
【農協時論】世界が驚いた都市農業 消費者のすぐ隣で食の大切さ訴え JA東京青壮年組織協議会顧問 須藤金一2024年3月28日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回はJA東京青壮年組織協議会顧問の須藤金一氏に寄稿してもらった。
JA東京青壮年組織協議会顧問 須藤金一氏
「ビニールハウスの中ってこんなに暖かいんだ」「身近に農業があるって大事だね」「初めて炊き出しを体験した」
これは私の地元東京都三鷹市でJA東京むさし三鷹地区青壮年部が2017年から取り組む「農業×防災」イベントでの参加者の皆さんからの言葉です。都市農地の持つ多面的機能の一つに防災機能がありますが、いざという時に初めて体験するよりも、日頃から体験することで災害時に機能させることが大事ではないかという思いと、都市にも農地があることの価値を体験してもらいたいという思いから始めました。
都市農地の多面的機能の中の防災機能は2011年の東日本大震災以降、非常に関心が高まっている機能の一つです。農地があることで火災発生時の延焼防止につながったり、食料の供給はもちろん、ビニールハウスで雨風が防げるといった面が期待されています。
今年の1月1日に発災した能登半島地震でも実際にビニールハウスで避難生活を送られている方々の様子を何度も報道で目にし、多くの皆さんの記憶にも残っているのではないかと思います。
「地産地消」「環境保全」「景観創出」「食育・教育」「防災」「交流創出」これらは都市農地のもつ多面的機能ですが、農水省が示す農業・農村の多面的機能では「洪水を防ぐ」「土砂崩れや土の流出を防ぐ」「河川の流れを安定させ。地下水を涵養する」「生物のすみかになる」「農村の景観を保全する」「文化を伝承する」といった7項目が掲げられています。
これらの多面的機能を農家自身が理解し、周りの消費者に対して自ら伝えることが次世代に日本の農業を残し、発展させる上で大事になっていくのではと考えています。なぜなら、農家自身が一番農業の厳しさを理解しており、それを身近な消費者に伝えることとこそ真の理解者を増やし、やがて世論を動かすことにつながるのではないかと思います。まさにその役割を果たすのがJA青壮年組織の役割でもあり、若い力でこそできることだと思っています。
先月、第70回JA全国青年大会が開催されました。その中のJA青年組織活動実績大会で最優秀賞を受賞されたJA山形おきたま飯豊地区の活動では「東京の子どもたちに食べ物や農業の大切さを伝えたい」との思いから都内の小学校100校に稲作体験出前授業をしますといった内容の手紙を書き、2校が参加を希望。そこから児童の親も含めた双方の交流が始まり、さらには参加校のある商店街からも飯豊町産の農産物を使った商品開発の相談を受け、さらにはアンテナショップを開店するなど、一つのつながりがきっかけで次々とつながりが広がる様は、まさに農家自身が伝えることで、人々の心を動かした好事例だと感じました。
日本の農業が抱える課題は山積しています。担い手の高齢化、ロシアとウクライナの紛争による物価の高騰による経費の負担増など、「未来が明るい日本農業」とは決して言うことが出来ない現状が続いています。
しかし、諦めてはおしまいです。農家自らJAとタッグを組み、協同の力を今こそ発揮し、次世代に農業・農地を残し発展させていく。そのためにも、伝えて行きましょう「自分たちの農業の今」を。そして作りましょう、農家の応援団を。その先に日本の農業の課題を共に理解し、共に動いてくれる仲間が増えると思います。
1歩1歩着実に、1人では出来ないけど仲間となら出来る。それこそがJA青壮年部の持つ力なのだと思います。私も今できる一歩を仲間と共に歩み続けたいと思います。
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