JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(13)【今さら聞けない営農情報】第243回2024年3月30日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。現在、本稿では土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋をつくるために必要な土壌診断の基礎知識を紹介しています。
今回は、土壌診断項目の1つであるケイ酸です。
ケイ酸は稲にとっては必要不可欠な要素ですが、全ての作物に必要な要素ではありません。
稲の場合、稲体の乾物換算で15%も吸収し、茎数や1穂あたりの籾数、登熟歩合といったことに影響が及びます。ケイ酸が不足すると、稲の生育が悪くなって収量・米の品質が低下したり、茎葉が軟弱になって倒伏しやすくなったり、病害虫の被害を受けやすくなったりします。また、根の酸化力が低下して根腐れを起こしたり、出穂期頃から稲の生育が急に悪くなって収量が減る、いわゆる「秋落ち」の原因になったりします。
このケイ酸の補給量を正確に把握するためには、稲が吸収しやすい「有効態(可給態)ケイ酸」を計測します。ただし、ケイ酸の計測方法に統一した方法はなく、分析機関によって異なる場合があり、それによって目標値が異なりますので、どの方法で分析したかを確認するようにして下さい。
また、黒ボク土か、非黒ぼく土で基準値が異なりますので、土壌の種類にも注意するようにして下さい。
ケイ酸は、河川水からも供給されますが、必要量を確保するために多くの水田では、ケイカルなどのケイ酸質肥料が施用されます。ケイカルは、鉄や合金鉄などをつくるときにできる鉱さい(スラグ)を原料としており、原料鉱さいの種類によって「製鉄鉱さい」、「転炉さい」、「普通鋼鉱さい」、「シリコマンガン鉱さい」といった製品がありそれぞれでケイ酸の含有量が異なりますので、分析値に合わせて施用量を決定する際には施用する製品のケイ酸含有量をよく確認するようにして下さい。
有効態ケイ酸が土壌中に増加すると、アルミニウムなどによるリン酸の固定を抑制しますので、リン酸の効果が高まることが知られています。
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