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JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー

地域複合農業戦略に挑む(2)JA秋田中央会会長 小松忠彦氏【未来視座 JAトップインタビュー】2024年4月19日

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秋田県全体の地域農業浮揚をめざし、2022年からJA秋田中央会会長に就任した小松忠彦氏。JA秋田しんせい組合長の時代から、米プラス複合経営で将来の展望を模索してきた。座右の銘は「不易流行」と、改革の先頭に立つ。地域農業活性化への道を、文芸アナリストの大金義昭氏が聞いた。

「不易流行」胸に JA連携を嚮導

農業継承へ雇用策模索

小松 米だけでは農家所得の増大は図れませんし、後継者も生まれてきません。私自身、集落営農から法人を立ち上げたのも、雇用形態を導入しないと後を継ぐ人が生まれてこないという危機感がありました。

「今、集落に10人の農家がいるとして、機械を集約したら3人で地域の田んぼが守れる。残りの7人は何をすればいいのか?」と、ある農家から言われた言葉が耳に残っています。農業の新たな分野や部門を立ち上げれば7人の仕事が生まれるし、所得も増える。だからこその複合経営なんです。

地域には家族農業で頑張っている人たちが大勢います。しかし高齢化が進み、離農が加速している。家族農業だけで田んぼを守っていくのが難しいので、農家以外の、たとえば会社の定年後にまだ元気な人を迎え入れる"受け皿"をつくったりして、農業を守っていこう。家族農業が「ダメ」というわけではなく、実情に合った新しい方法や態勢を積極的に採り入れ、地域農業の「進化」を遂げようという考え方です。

大金 農業産出額の増大を図る県域の成長戦略は、その延長線上にあると?

小松 そうです。私のところの法人も11戸だった農家が6戸に減っています。定年退職した人って、農業が分からない。体力も次第に落ちていく。「若者に入ってもらおう!」と思っても、お金を払わなければ来てもらえない。だから、雇用という形態が必要になるし、一方で「やりたい!」と思う人がいても「受け入れる組織」がなければすぐにはできません。細々した作業は、集落の女性の皆さんにパートで来てもらえる。

多様な人たちと新しい関係を積極的に築き上げ、夢があり持続可能な集落や地域の農業を守っていくことが求められています。消費者の皆さんにも、できる作業を手伝っていただき、応分のお金を手にしていただきながら農業や地域への理解を深めていただく。

文芸アナリスト 大金義昭氏文芸アナリスト 大金義昭氏

大金 周囲の受け止めは?

JA合併で力を一つに

小松 農家はこれまで個人経営で頑張ってきたので、「誰かと一緒に!」となるとなかなか難しく、岩盤が堅い。それでも、急激な人口減少に対応するにはこれまでにない新しい発想や取り組みが求められる。米だけで農地を守れるかという課題も目の前にあるのです。

出身JAでは地域計画を策定し、「うちの田んぼだけでなく、集落や地域の田んぼをどう活用し、守っていくのか」と話題を広げ、JA主導で「地域農業者協議会」を立ち上げ、農業者同士が連携して複合型の農業集団の形成に向け、協議を重ねてきました。

多様な担い手による地域農業の大胆な成長戦略が、「県1JA」といった組織再編にもつながっていくように思っています。

大金 秋田県のJAグループは18年のJA大会決議で「県1JA」をめざしましたが、13JAのうち5JAが離脱し、今年に入って「凍結・休止」の決断をしました。

小松 JA合併には「経営が危うくなったJAを救済する」といったイメージがつきまとっていますが、私たちがめざす合併はそうではありません。十分な説得力が足りませんでした。しかし、それぞれのJAが単独ではどうしても先が見えています。県域で一つのJAになれば、新しい施設の導入や喫緊の課題であるデジタル戦略なども含め、思いきった成長戦略が描けます。

大金 「単協」を超えた相互の「越境行為」、言い換えれば事業・活動・業務の相互連携を積み重ねる先に実利的な合併が見えてこないと、独自の歴史や文化を持ち、地域特性が異なるJAの合併はハードルが高くなる。

小松 確かに、実例で合併のメリットを示せませんでした。今、それをやろうとしています。たとえば能代市の『白神ねぎ』が有名ですが、それを県域で作っていけないかとか。縦長の秋田県なら旬が伸びます。「この品目をこの時期に!」といった具体的な取り組みを現場に提案し、コストを抑えながらロットを大きくしていきたい。

大金 なるほど。

小松 タマネギもそうですが、そういう具体的な「越境行為」の積み重ねでお互いに成果を共有していくことが大事だなと感じています。

大金 19年にアフガニスタン東部で凶弾に倒れた医師の中村哲さんを尊敬しているとか。

小松 「一燈照隅・萬燈遍照」という言葉に心を引かれました。「自らが灯(ともしび)になる」ためには、「自分から先に動き出さないと!」という中村さんの実践が胸を打ちます。瞬く間に立場が変わってきた自分が、道を踏み間違えないためにも大きな勇気をいただいています。

【インタビューを終えて】
風雪に曝(さら)されて屹立する「秋田スギ」のように、颯爽(さっそう)と背筋を伸ばす廉潔の「美丈夫剣士」といった印象が涼(すず)やかだ。「青天白日」の姿勢と視線の先に、地域農業の大胆な成長戦略を見据えている。悠揚(ゆうよう)迫らぬ立ち姿、自然体の構えが小松さんの魅力である。
「あせらず・あわてず・あきらめず」必要な布石を果敢に積み上げていく覚悟を秘めた極意が垣間見える。未曽有の危機が農業や地域に進行する時代を突破して閃光を放ち、秋田の「農業新時代」を切り開く「不易流行」の光源をあかあかと灯し続けていただきたい。(大金)

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