JAの活動:今さら聞けない営農情報
土壌診断の基礎知識(32)【今さら聞けない営農情報】第262回2024年8月17日
みどりの食料システム法の施行によって国内資源を活用した持続型農業への転換が求められ、国内資源の有効活用に期待が高まっています。作物が元気に育つためには、光、温度、水、空気に加え、生育に必要な栄養素を土壌から吸収しますが、作物が健全に生育するには土壌の健康状態を正確に把握することが必要で、そのために土壌診断があります。現在、本稿では土壌診断を実施して土壌の状態を知り、正しい処方箋をつくるために必要な土壌診断の基礎知識を紹介しています。
前回までに肥料の施用量を決める要因と2つの手順を紹介しましたが、近年では、肥料価格の高騰やみどり戦略のKPI達成に向けて、化学肥料を減らして堆肥など地場の肥料資源を使用した施肥へ変更するケースが多くなっています。その場合、堆肥が最も多く使用される肥料資源ですが、堆肥の施用量を決める場合、ちょっとしたコツが必要になりますので、若干補足しておきます。
土づくりなどで土性の改善や腐植の追加などの目的で堆肥が施用されることが多くありますが、実は堆肥は窒素分の他、多くの肥料成分を含む資材であり、堆肥を大量に施用する場合は、堆肥中に含まれる肥料成分量を考慮して施用する必要があります。
特に堆肥を連用しているような圃場では、牛ふん堆肥であればカリ、豚ぷん堆肥であればリン酸、鶏ふん堆肥ではリン酸と石灰といった肥料成分が過剰になりやすいので、必ず土壌診断を行って土壌中の肥料成分を正確に把握し、過剰であればその成分の減肥を考えなければなりません。
堆肥の施用量を決めるためのポイントは、堆肥は速効性ではないため基肥と位置づけ、堆肥の肥料成分に肥効率を掛け算して化学肥料の成分量換算値で施用量を決め、施用量は窒素分をまずは計算し、その量でリン酸やカリが過剰のようであれば堆肥自体の施用量を減らすといったものです。,
ところで、堆肥に含まれる肥料成分には、化学肥料のようにすぐに作物が利用できるものと、すぐには利用されないものが含まれており、堆肥の施用量を決める際には、堆肥中に含まれる肥料成分のうち直ぐに利用される成分がどれくらいの割合で含まれているのかを把握する必要があります。そこで必要になるのが肥効率であり、それは、化学肥料の肥料成分利用率を100%とした場合に、堆肥に含まれる肥料成分がどの位の割合で利用できるかを示したものです。堆肥の窒素分肥効率は、鶏ふん堆肥であれば50%程度、牛ふんや豚ぷん堆肥であれば30%程度です。このように堆肥の種類や窒素含有量によって肥効率は異なりますので、事前に把握しておく必要があります。
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