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JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー

農のある豊かな社会を(2)神奈川県JAはだの組合長 宮永均氏【未来視座 JAトップインタビュー】2024年9月2日

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「協同組合らしいJAづくり」を一貫して追求する神奈川県のJAはだの。2021年に代表理事組合長に就任した宮永均氏に「新たな協同」の方向や「共助」の意味を文芸アナリストの大金義昭氏が聞いた。

農のある豊かな社会を(1)神奈川県JAはだの組合長 宮永均氏
【未来視座 JAトップインタビュー】
から続く

農業と農地維持 協同組合の役割

【未来視座】神奈川県JAはだの組合長 宮永均氏02.jpg神奈川県JAはだの組合長 宮永均氏

大金 国際的な姉妹提携もそうですが、秦野市とも親密な関係ですね。

行政と連携農業支援へ

宮永 JAはだのは、一市一JAですので、2005年に秦野市・秦野市農業委員会・JAはだのの三者で「はだの都市農業支援センター」を立ち上げました。事務所をJA本所内に置き、農業支援をワンストップで行っています。その目的は、人づくり(農業の担い手育成・確保)、ものづくり(持続可能な農業の実現)、地域づくり(地域営農の活性化)です。

人づくりは、秦野市長に塾長になっていただいている「はだの市民農業塾」があります。また、コロナ禍で秦野市と連携し、子どもたちの給食がなくなる夏休みに入ったときに「今こそ協同助け合い」と、困窮世帯の食料支援に取り組みました。

大金 新自由主義経済が「格差と貧困」を生み出してしまった。

宮永 貧困世帯というのはなかなか目に見えないので、地域で支える助け合い運動を展開し取り組んでいくことが大事です。お米を提供して支援をいただいた農家には、私がお礼の手紙を持参して一軒一軒巡回し、感謝いたしました。

今は「チームよりも個」さらには「自己責任」を冷たく押しつけるような時代なので、JAは地域経済・社会のかじ取りをしっかり改めなければいけないと思います。来年は国連が定めた「国際協同組合年」です。地域に根ざした農業協同組合をすすめるために、もう一度組合員加入促進運動を組みたいと計画しています。また、パルシステム神奈川ゆめコープとの包括協定(2019年)も締結しています。

大金 JAの目標は?

宮永 「夢のある農業と次世代へつなぐ、豊かな社会を地域で築く」という基本理念を掲げています。そのためには、JAのミッションである地域農業の振興と地域に根差した協同組合としての社会的な役割を誠実に果たすことだと考えています。地域農業と組合員の農業経営を支えるのが第一で、さらには命と健康を守ることも含めて組合員の生活を支え、住みよい元気な地域社会づくりに貢献したいと取り組んでいます。

少子高齢化と都市化で離農者が増え、資材も高騰していて課題も大きいです。食料安全保障としての自給率向上には地産地消の取り組みが重要です。担い手を守り育て、農家と農地を維持していくことが農業協同組合に求められています。

「はだの都市農業支援センター」が行う「市民農業塾」では、2006年から昨年までに105人が修了し、95人が秦野で就農しています。うち80人は農外からの参入者で16㌶の利用権設定農地で農業をしています。所有者が耕作するだけでなく、農地の所有権がなくても農業をしたい人に農地を使っていただく体制を整備しています。そのほか「体験農園」や「はだの農業満喫CLUB」なども活発です。

大金 望めば誰でも取り組める「市民皆農」を目ざしている?

【未来視座】文芸アナリスト 大金義昭氏.jpg文芸アナリスト 大金義昭氏 

宮永 そのとおりです。ただ、農業生産の拡大や農家所得の増大は実現できていません。多様な担い手に少しでも元気になっていただき、産出額を引き上げていきたい。

それと、地区にある支所の事業再構築をすすめていますが、統廃合ではありません。組合員のよりどころとしての支所を残し、地域協同活動の拠点として活用していくためにできる限りのことをしています。

大金 職員の定着率は?

食と農核に協同深化へ

宮永 正直、良くないですね。今年は4人新規採用しましたが、1カ月で2人辞めました。中途離職もあります。社会的な風潮とも関わり、悩ましい問題です。

また、うちは都市JAですが、金融・共済事業が難しい時代となりました。これからの農業協同組合は、食と農を中心に経営が成り立つような形態を目ざしていかなければならないと思っています。「共選・共販」は現在、手数料が1%程度です。このため15%の手数料収入が見込める「ファーマーズマーケットはだのじばさんず」での買い取り販売を拡大しています。さらに手数料収入を確保するために「じばさんず」で買い取りした農産物を学校給食や量販店、道の駅へと取り扱いを拡大してきました。

大金 早くから「有機」にも取り組んでいますが。

宮永 「ゆうきの里づくり」と銘打って、畜産農家から耕種農家に堆肥を流通させる「耕畜連携」などに取り組んでいますが、「有機」は大きく広がっていません。収量にも品質にも課題があり、農水省の「みどりの食料システム戦略」担当者には「国がある程度のレールを敷いてくれないと、一歩が踏み出せない」という話をしました。

大金 最後に何か?

宮永 自宅の近くに中学校時代の90歳近い恩師がおります。この先生がコミュニティーに必要なのは「動かなければ出会えない。語らなければ広がらない。聴かなければ深まらない」と説いています。「協同組合はまさしくこれだな!」と、この言葉を許しを得て使わせていただいています。

【インタビューを終えて】
JAはだのには、松下雅雄・古谷茂男・山口政雄そして宮永さんへと続く歴代組合長を中心に継承してきた「協同組合らしいJAづくり」の歴史と伝統がある。その先端に立ち、「新たな協同」に挑む明晰で柔らかな物腰が宮永さんの魅力だ。しかも「一人の100歩より100人の一歩」を実践する宮永さんは、若い頃に100㍍競走で抜群の記録を持つアスリートなのだ。宮永さんの自然体が醸し出す魅力の中には、「ウサギとカメ」が仲良く同居しているように思える。共に連れ立って「むこうの 小山のふもと」を目ざす人びとの「共助」に全力を注いでいる宮永さん。そういえば、二宮尊徳も偉丈夫だった。 (大金)

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