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JAの活動:農協時論

【農協時論】生乳需給の行方――「酪農基本方針」どう描くのか! 蔵王酪農センター理事長・冨士重夫氏2024年9月26日

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「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は元JA全中専務で、現在、宮城県の蔵王酪農センター理事長の冨士重夫氏に寄稿してもらった。

蔵王酪農センター理事長 冨士重夫氏

蔵王酪農センター理事長 冨士重夫氏

(1)酪農の「基本方針」が来年に決まる

来年に向けて政府の「酪農生産近代化の基本方針」が策定され、これを受けて都道府県が生乳の地域別の需要見通しや生産数量の目標を盛り込んだ計画を策定し、今後5年間、これに基づいた政策や行政が展開される。

飲用、バター・脱粉、生クリーム、チーズなどの仕向け数量、生乳生産基盤対策など、10年後、2035年の目標値などが定められる、食料安全保障上、極めて重要な決定事項である。

危機に直面している都道府県酪農の生産基盤を、どう担保するのか、食料安全保障の要の柱である生乳生産数量を現在設定している780万tをどうするのか。自給率を向上して行くための生乳の仕向先は、どの分野なのか、バターやナチュラルチーズの増産や販売は、どのように強化して行くのか、その戦略的な道筋をどう描くのかが問われることになる。

(2)脱粉過剰の中で輸入バターの拡大

飲用需要は人口減少、高齢化などにより、現在すでに400万tを切る水準にまで落ち、今後もさらに減少して行く。今後、最も重要な事は、輸入物に占められている乳製品需要を、どのように国産化して行くかである。

生乳は短時間で腐敗する特性があることから、日々の飲用の需給調整としてバターや脱粉に処理して貯蔵する側面も含め、年間でバター約6万t・脱粉12万t程度を国内生産しており、その仕向け生乳量は約150万tである。

バターはコロナ禍による在宅需要、本物志向、円安によるマーガリンの値上げなどにより、最近は需要が堅調となって来ている。

一方、脱粉はパンや菓子、ヨーグルトなど使用される需要が頭打ち状況で、在庫が相当な水準となっている。

こうした状況の中で本年6月に政府は、年末のバター需要に応ずるため、従来のバター輸入枠を8000tから1万tにしていたうえに、さらに4000t追加し、1万4000tに決定した。

生乳25㌔でバター1㌔、脱粉2㌔ができる。国産バターを増産すれば脱粉を増産することにつながり、さらなる脱粉の在庫累増を避けるために、政府はバター単品だけを輸入に頼るという、場当たり的措置を取った。

(3)「脱脂乳」からチーズを作る

生乳からバターを作ったら自動的にできるのは脱粉ではなく「脱脂乳」である。この「脱脂乳」の水分を取って粉状にしたものが脱粉である。

実はこの「脱脂乳」からチーズをつくることができる。フレッシュ系ではカッテージチーズやクワルクであり、ハード系では熟成期間が長く、濃いうま味があるパルミジャーノなどである。カッテージなどは賞味期限が短かく、需要量も少ないので大量に生産しても消化できない。パルミジャーノなどは熟成期間が3~5年と長く、施設の確保や投下資本の回収や需要の担保が不確実であるなど、多くの課題があり、これまで輸入物に依存し、国内での生産をあきらめて、ほとんど取り組んで来なかった。

(4)明るい展望を開く未来を描く

1980年当時、生乳過剰でバター・脱粉の在庫が累増し生乳の廃棄処理も生じた。こうした事態の中で国産ナチュラルチーズにチャレンジして将来の生乳需要の安定、チーズ自給率の向上に向けた取り組みが提案された。

これに対し、日本人の口にはナチュラルチーズは合わない、プロセスチーズが最善であるとする反対意見が乳業界の大宗を占める中で、北海道農協乳業(現、よつ葉乳業)、蔵王酪農センター、四国乳業の3カ所が手を挙げて、国産ナチュラルチーズ専門工場が政府支援で設置され、我が国の国産ナチュラルチーズのフロンティアが始まった。

現在全国に、350以上のチーズ工房が建ち、40年間で延べ2000人以上が蔵王酪農センターでのチーズ製造研修を修了し巣立って行った。

チーズの消費量は2019年では、ナチュラルチーズ20万t、プロセスチーズ15万t、合計35万tまで拡大し消費者からも注目され、今後も需要増大が期待できるものとなっている。

しかし、その国内生産量は1980年当時から4倍に拡大したものの、ナチュラルチーズ2万5000t、関割制度によるプロセスチーズ原料用2万t、合計4万5000tで、仕向け生乳量約50万t程度、自給率約15%というのが現在の状況である。

乳牛から得た生乳という資源を無駄にすることなく、サステナブルに多様なチーズを生産し消費するという、豊かな食生活を切り開く道を目指す具体的な知恵が求められている。スーパーの国産ナチュラルチーズの棚には、プロセスチーズとカマンベール、モッツァレラチーズしか売っていない状況を打破し、消費者の多様なチーズ需要に対応した第2のチーズフロンティアを目指すべきである。

飲用100%自給に加え、バター自給100%を掲げるべきである。輸入バターに依存している1万5000t分、生乳換算で約40万tを国産で担保し、脱粉の累増を回避するため、この部分の「脱脂乳」を約2万t程度の多様なナチュラルチーズを生産する絵姿を描く。

輸入チーズの関税ゼロによって国産ナチュラルチーズを抱き合わせる関割制度が崩壊する。プロセスチーズ原料向けの約2万tのハード系国産ナチュラルチーズの需要を確保するための販売開拓など、政府支援策も含む国産ナチュラルチーズ振興の具体策を描き、自給率向上を掲げた全体像を提示するなど、未来を照らす食料安全保障システムを創造することが、今を生きる酪農、乳業、JA関係者、官僚、政治家の責務であると思う。

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