JAの活動:シリーズ
【農協時論】核なき世界 被団協の平和賞は思い広げる好機 村上光雄・農協協会会長2024年11月8日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様などに胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は、広島県在住で、農協協会会長の村上光雄氏に寄稿してもらった。
村上光雄(一社)農協協会会長
2024年のノーベル平和賞に日本被団協が決定した。被爆者の長年にわたる「ノーモア、ヒロシマ・ナガサキ」の切なる願いと、「ネバーギブアップ」の粘り強い運動がようやく認知されたわけであり誠にうれしいことである。そして核抑止力による危うい平和より「核なき世界」を訴える被爆者の声が世界平和にとって大切であることが認められたことであり、よろこばしいことである。
しかし率直に言って「おめでとうございます」と言う気持ちにはなれない。何故なら受賞決定が余りにも遅かったし、ましてや被爆者にとってノーベル平和賞は通過点でありゴールではないからである。
原爆投下から79年、運動組織ができてから68年、兵役で広島にいて被爆し、被爆者友の会をつくり会員の被爆者手帳受給のお世話をしたりしていた親父がなくなってからも27年が過ぎようとしており、被爆者はほんのわずかとなってきている。
どんな審査基準があるのか私には分からないが、受賞決定がもっと早ければどんなに多くの被爆者が喜び勇気づけられ、運動の発言力も強まり、世界に力強く発信し広まっていったように思えてならない。
被爆者の運動は、肉親を亡くし、自身のケロイドを曝(さら)しなお且つ放射能による苦しみと不安におびえながら「二度と私たちのような苦しみを繰り返してはならない」という切なる願いであり、思想イデオロギーに関係のない純粋無垢な人道的な草の根運動である。
それにしても昨年のG7サミットがせっかく広島で開催されながら核禁止について何ら前進がなかったことが悔やまれてならない。岸田前首相は世界で唯一の被爆国の首相であり爆心地広島1区選出の唯一の国会議員である。しかも広島・長崎への原爆投下は明らかに無差別攻撃であり原爆実験であり人道的に決して許されるべきことではなかった。なににも臆することなく原爆の惨状を訴え核禁止条約への参加についての理解を取り付けるべきであった。そうすれば被爆者は今回の受賞以上に喜び勇気づけられたはずである。
今からでも遅くない。我が国は核禁止条約に参加すべきであり、せめてドイツ並みにオブザーバー参加すべきである。しかし石破首相は核共有論を展開し、非核三原則すら見直しをしようとしている。各禁止運動に逆行し水を差すことであり絶対に許されず憤りをおぼえる。
今もウクライナ、中東において泥沼と化した戦争が続き子どもを含めた尊い命が奪われ続けており、プーチン大統領は核兵器使用さえほのめかしている。こうした地球的危機に対して国連も機能せず、誰も仲裁・停戦することができず、ましてや核抑止力で解決できるわけでもない。できるのは唯一平和を願う世界の声であり、核なき世界を願う被爆者そして世界の声を広げることしかないのではないか。
来年は原爆投下から80年という節目を迎える。被爆者はほとんどいなくなることと思われるが、次の世代にしっかりと引きつないでいかれることを願わずにおれない。そして助け合いにより平和な社会の実現を目指すわたくしたち協同組合として何ができるか何をしなければならないかが問われているように思える。
終わりに、親父が出版にかかわった被爆者体験記「炎の墓標」中から親父のつたない短歌を三首。
水飲めばすぐ死すと追立てし姿の背中は灼きただれており
茹蛸を投げたる如き子の死体橋より見下ろす女は動かず
原爆の惨状瞼に灼きつきて生きおる限り歌いつづけむ
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