JAの活動:今さら聞けない営農情報
農薬の正しい使い方(12)【今さら聞けない営農情報】第278回2024年12月14日
「いまさら」では農薬を正しく、安全に、しかも高い効果を得るため、農薬の正しい使い方の基礎知識をご紹介しています。まずは、農薬を正しく使うための第一歩である農薬の製剤に関する基礎知識をご紹介しています。
農薬を正しく使用するためには、これら剤型の性格をきちんと把握しておく必要があります。なぜなら、剤型によって作物への付着具合が異なり、有効成分の作物への付着具合が農薬の効果に大きく影響するからです。現在、その剤型ごとにその特徴と正しい使用方法、使用上の注意事項を紹介しています。
前回から製剤をそのまま散布する製剤をご紹介しており、今回はその7つめのくん煙剤です。
7.くん煙剤(略記号:くん煙・スモーク・ジェット )
農薬の有効成分を何らかの方法で加熱すると煙霧となるものがあります。その煙霧となった有効成分を、施設内の空中に拡散・浮遊、充満させることによって、有効成分を作物の葉裏や葉表、茎、果実など隅々にまで届かせることができる製剤です。有効成分が煙になって漂いますので、散布ムラなどがなく優れた拡散性、付着性を示すのですが、有効成分が熱に対して安定していることが絶対条件となります。
しかしながら、農薬の有効成分は熱に弱いものの方が多く、この製剤に使用できる有効成分は残念ながら限られています。
くん煙剤の使用方法には色々とあって、開封すると煙霧が噴出する衛生害虫用の家庭用製品と同じようなものや、お皿状の容器に製剤を乗せてお皿の下をアルコールランプ等で熱することによって煙霧を発生させるもの、専用の電熱式容器で煙霧を発生させるものなどいくつかあります。煙霧を発生させる方法に違いはありますが、有効成分を含んだ煙霧を発生させてそれを充満させることがくん煙剤の特徴ですので、本製剤は施設での使用に限られます。この製剤の最大のメリットは、ハウス内に複数個所に設置して煙霧を発生させるだけの簡便な方法で防除ができ、農薬散布の時間や散布労力を大幅に軽減できることにあります。このため、施設いちご栽培などで根強い人気があります。
ただ、硫黄系のくん煙などは、煙霧が酸性となり施設の金属部分を腐植させる場合がありますので、注意が必要です。
(つづく)
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