JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー
"人財"育てチームで改革(1) JAみえきた組合長 生川秀治氏【未来視座 JAトップインタビュー】2025年1月31日
経営理念に「職員の成長と幸せ」を掲げ改革を進める三重県のJAみえきた。組合長の生川(なるかわ)秀治氏は「職員の成長こそがJAの価値」と言い切る。職員がいい仕事をすれば組合員も幸せになれるからだ。JA自己改革の思いを聞いた。インタビュアーは文芸アナリストの大金義昭氏。
組合員とともに 職員の成長こそ
JAみえきた組合長 生川秀治氏
大金 三重県信連理事長から単協組合長になられたいきさつは?
生川 JAみえきたは、2013年に四つのJAが合併して誕生しました。信用・共済事業がまだ順調だったことから「10年間は店舗再編などに手を着けない」という条件でした。2~3年後に政府の「農協改革」(2015年)やJAグループの「自己改革」(2016年~)が急浮上し、日本中のJAが一斉に組織・事業・経営の改革に走り出しますが、うちは立ち止まったままでした。「改革」が必要だと考えた前任の組合長から私に「生川さん、組合長になる気ないかね?」という話があったのです。
理事になるには選出地域に輪番制のような慣行があります。私の地元は理事を出す順番ではなかった。ところが、その時の常務理事が「うちの順番なんだけど譲るわ」と言ってくれたのです。組合長には理事による決選投票で選ばれました。「奇跡」が二つ重なった!(笑)
JA管内は名古屋から30分くらい。自然や気候に恵まれ、四日市コンビナートやキオクシア(旧東芝)の半導体工場、トヨタの関連工場などがあって、地域の皆さんは兼業先にも困らない。そんな恵まれた土地柄なので、JAは10年間何もしなくて良かった。県下で一番小さなJAさんからも「JAみえきたさんは遅れてますから」と冷やかされるほどでした。(笑)
大金 組合長就任(2022年)が67歳ですから、定年が迫ってませんか?
生川 ですから、一気呵成にスタートアップ(始動)し、「改革」を矢継ぎ早に断行してきました。そこでまた「奇跡」が!(笑)。定年延長について理事会で議論になり、「延ばすのは自分たちのためのようで、いかがか」という厳しい意見も出たのですが、結局、「理事会特別推薦枠」を新たにつくり「組合長だけもう1期理事に推そう!」と決まったのです。
大金 「改革」に賭ける皆さんの志が素晴らしい!
生川 本来「ない話」が重なったので、もう「天命」と思うしかありません!(笑)。私が退席した理事会での全会一致でしたから、うれしかった。
文芸アナリスト 大金義昭氏
大金 JA合併10周年を機に、「人財・経営・革新」の3本柱から成る「人的資本経営」を「改革」の基本戦略に据えました。
生川 組合長に就任してすぐに着手し、理事会承認を得るまでに1年半くらいかけて「経営理念」をまとめました。JAの仕事をするのは職員ですから、「人財」の柱に「私たちは職員の成長と幸せを大切にします」と記しました。
大金 「職員の成長と幸せ」を最初に掲げるJAは珍しい!
生川 まずは組合員でしょうね。「組合員とともに」ならいいけど、「組合員のために」だとブラックになりかねない。職員が幸せなら良い仕事をするし、職員が良い仕事したら組合員も幸せになる。ミッションには「職員の成長こそがJAの価値であり未来です」と謳(うた)い、キャリアアップの希望研修にもすべて応えられるよう取り組んでいます。
「経営」の行動規範には「より良いサービスや安全安心な商品を提供するとともに、明るく迅速に対応し、地域の皆さまからの信頼を築いていきます」という文言を掲げました。「より良い~」はフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)、顧客本位の業務運営です。「革新」の項目には、「課題に対して何も行動しない現状維持は後退である」と特筆しました。
大金 ドラッカーの名言「現状維持は未来づくりよりもリスクが大きい」ですね。
生川 組合長になった時に「営農経済事業改革を徹底的にやるぞ!」と宣言しました。営農指導と販売は「農協改革」や「自己改革」の要ですから。JAとしては全国2例目となる栽培管理支援システム「ザルビオ」を本格的に導入しています。「改革」の一環として販売手数料を上げたら、ボコボコにたたかれた。2%を3%に上げるくらいなんですが、それさえも組合員に聞いてもらえないような仕事しかしていないのかとがくぜんとしました。その後、たたかれた若い職員が必死になって販路を開拓したら、メロン農家から「手数料いつ上げんの? 上げていいよ」と言ってもらえました。(笑)
管内の桑名市に小さな直売所が二つあった。物流の「2024年問題」に悩んだ地元スーパーと手を組むことになり、二つの直売所を閉鎖してスーパー内に場所をもらい、組合員の農産物を出荷しました。いわゆる「イン・ショップ」です。最初はぶつぶつ言われましたが(笑)、結果は大成功です。精米の「今ずり」や「かぶせ茶」の宣伝に力を注ぎ、伸びしろはまだまだあります。
「経営理念」の「革新」には「変化することを恐れず、10年先のあるべき姿を見据えて、さらなる改革と成長に向け、挑戦し続けます」というミッションを盛り込んでいます。今の時代、10年先を見ないと間に合わない。
大金 「対話と意思反映」を重視した「風通しの良い職場」づくりは?
生川 世代別の意見交換会を重ねたり、支店などの現場にもできるだけ顔を出したりしています。
大金 職場の雰囲気は?
生川 みんな変わったと言いますけど、私は以前の職場を知らない。「よそ者」ですから!(笑)
大金 いわゆる「よそ者・ばか者・かわり者」ですか?(笑)
生川 そうです!(笑)。「今までは今まで、私は違います」と言わなければ、それが私の「天命」(笑)ですから! それと、何事も組合長に集中するような意思決定をできるだけ分散してPDCAサイクルを回し、自分の頭で考え、行動する「人財」を育てたい。
大金 「天命」を授かると、ご苦労も多い!(笑)
生川 肉牛農家が苦労してるじゃないですか。「だったら職員に配ってあげれば!」と言いました。正職員は660人いますが、嘱託や臨時の人たちも含め、1000人ほどに配りました。「改革」で大変だから、ボーナスも職員組合の要求より余分に出しました。いろんなことをお願いする以上、気も配らないと。(笑)
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