JAの活動:未来視座 JAトップインタビュー
「茨城らしさ」新ステージへ(1)JA茨城県中央会会長 八木岡努氏【未来視座 JAトップインタビュー】2025年4月16日
「首都圏の台所」とも言われ、農畜産物生産が盛んな茨城県。JA茨城県中央会会長であり、JA全農副会長を務める八木岡努氏は「茨城らしさ」にこだわる。食料・農業・農村の活性化には"らしさ"を磨くことが必要――と説く。農に対する思いを聞いた。聞き手は文芸アナリストの大金義昭氏。
"身近な農"発信 消費者巻き込み
JA茨城県中央会会長(JA全農副会長)八木岡努氏
大金 先ずは、昨年秋の第30回茨城県JA大会について。
八木岡 何よりも「茨城らしさ」にこだわりました。「茨城らしさ」とは何か。組合員の生産意欲が高く、首都圏の台所を支え、バラエティーに富んだ農畜産物の生産で北海道や鹿児島県に次ぐ全国第3位の農業生産額を誇っていますが、残念ながら系統利用率が3割と低い。そんな現状を突破し、さらに新しい段階の「茨城らしさ」へステップ・アップするために「今のJAは完成された一番いい姿なのか?」とみんなで自問自答するところから討議を始めました。その結果、「持続可能で高付加価値な茨城農業の実現」に引き続き挑戦しようと確認しました。
大金 具体的には?
八木岡 「正組合員数の維持」を筆頭に掲げ、年間2000人の減少に歯止めをかけること。温室効果ガスの削減など「環境に配慮した農業」を展開し、ネオニコチノイド系農薬などの減農薬、減化学肥料や有機栽培による「高付加価値化(ブランド化)」にチャレンジして「担い手の確保・育成」を図ること。さらには学校教育現場や民間企業、プロスポーツ・チームなどと連携して「食農教育」をいっそう強化し、「消費者とのつながり(JAファンづくり)」を広げていきます。
ふり返れば、昭和の時代は「なくてはならないJA」だった。みんなの思いをストレートに国に届け、その先に農政があった。ところが現場とJAと農政との距離が次第に開いてきてしまったように感じられる。どうしたらいいか。そんなこともみんなで一緒に考えたかった。「令和の米騒動」で社会は揺れていますが、こんな時にこそ生産者の立場から消費者の皆さんに「ピンチに立つ農業」の現状を正確に伝え、問題や課題を共有していただく解説やメッセージを発信するチャンスです!
大金 全国のJA大会については、これまで常に「決議すれども実行せず」という評価がついて回ってきた。
決議実行へ特別チーム
八木岡 そうした批判に応えて具体策を実行するために、茨城県ではこの4月1日から中央会の専務理事直轄の「特別チーム」を立ち上げました。
大金 ほう!
八木岡 JAの組合員サービスには確定申告のための記帳代行があり、年々利用者が増えています。記帳を代行していると、農家経営の「次」の方向や展開が想定できる。親族承継か、第三者承継か、廃業して規模拡大する担い手に農地を貸すか。痒いところに手の届くような相続相談ができます。
消費者向けの取り組みもあります。小学5年生を対象に「食育」の出前講座を一昨年は1200人、去年は2000人ちょっと実施しました。これを5000人、さらには1万人に拡大していくために中央会だけでなく、JAや地域でも取り組んでいく。
学校給食の無償化が広がっていますが、「食材」の〝地元率〟も引き上げたい。業者が納めれば単なる「食材」ですが、私たちが納めれば「教材」になる。子どもが変われば親も変わり、家庭の食卓も変わっていきます。
そんなきめ細かな取り組みを丹念に実行し、「積小為大」を県域で実践して多様な「担い手の確保・育成」や「関係人口の拡大」を実現したい。
茨城県では幸いに、日本農業賞大賞を受賞したJAやさとの有機栽培部会や耕作放棄地を活用したJA常陸の奥久慈枝物部会の活動などがあり、さらにJA常陸の秋山豊組合長が「第1回みどりGXアワード」のグランプリを受賞するなど、「持続可能で高付加価値な茨城農業」の可能性を切り開く先行事例が生まれています。
大金 系統利用率については?
八木岡 現状の3割を、何とか4割に引き上げていきたい! 出口対策として、学校給食の「食材」が「有機」とはいわないまでも「地元産」となった時に、JAが取りまとめや配送を引き受ける。学校給食で「地元産」の利用率が県平均で65・9%になりました(2023年11月)。無償化の広がりは〝地元率〟を高め、「地産地消」や「国消国産」を広げていくビッグ・チャンスです。
大金 「組織基盤の強化」では?
八木岡 JA水戸の組合長時代に「一戸複数組合員」に取り組んでいます。わが家も夫婦と息子の3人が組合員です。「男女共同参画」を念頭に青年・女性との連携を強化し、県内に64ある直売所の展開なども工夫して正組合員の減少に歯止めをかけたい。
「経営基盤」を支える職員の「人材確保・育成」も重要です。事業と運動とが表裏一体のJAの仕事は、例えば「そろそろ春メロンの初集荷だ!」とか「種もみの準備時期だ!」とかが分かり、組合員の声を聞いて現場の課題が皮膚感覚で理解できるような人材によって支えられる。そうした人材を育てていきたい。
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