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組合員の協同の力こそ地域を拓く原動力 第26回JA全国大会決議の実践に向けて  インタビュー・馬場利彦JA全中参事2013年1月9日

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・協同の絆地域の課題克服のため再結集を
・思いを共有する地域営農ビジョン策定運動の意義
・農の価値観を伝える都市農業の新たな意義
・支店は将来像を描く拠点地域と向き合う機能を高める
・外とつながりあう協同6次産業化がめざすこと
・期待される人間力JAの人づくりも課題

 2013年は第26回JA全国大会決議実践に取り組む年となる。大会決議のテーマは「次代につなぐ協同?協同組合の力で農業と地域を豊かに」だ。課題は地域によって異なるが、組合員を主役として農を通じた豊かな地域社会をつくるためのJAの役割発揮が共通して求められている。
 この特集ではそうした実践を先進的に進めてきた地域・JAをレポートするが、ここでは改めて農業・農村、そしてJAを取り巻く環境と課題、めざすべき取り組みなどについてJA全中の馬場利彦参事に語ってもらった。

◆協同の絆 地域の課題克服のため再結集を

 今、農業、農村が直面している最大の課題は東日本大震災からの復興です。ただ、そのなかでわれわれが教訓としなければならないのは、あの東日本大震災が発生した際、組合員が助け合う、あるいは隣接したJA、県、さらに全国のJAが協同の力で支援をしたということであり、やはり困難な状況に対して力を合わせるという、まさに協同の絆を再確認したということです。
 第26回JA全国大会決議もそれを念頭に置いて、改めて「協同組合の力で農業と地域を豊かにする次代へつなぐ協同」を主題として打ち出したわけです。それも主役は組合員であり、その組合員自身が何を課題として捉えてどう解決策を考えるのかが大事で、それを支えていくのが協同組合であるということを議案の検討を通じて改めて明確にしたのです。
 今、直面している困難といえば、TPP(環太平洋連携協定)に象徴されるような市場原理主義が貫かれるなかでの所得格差や地域格差などの格差拡大であり、農村においては人口の減少や高齢化の進行による基盤の弱体化などです。一方、世界的には人口が増加して食料の供給不安が高まっている。こうした状況をそれぞれの組合員がどう協同の力で乗り越えていくのか、それが原点だろうと思います。
 同時に農業者・組合員の年齢構成を考えると、地域農業にとってもJA自体にとっても将来に向け、いかに次代につないでいくのかが求められています。すなわち、次代につなぐとは、組合員の思い、将来への不安や課題を克服するためにいかに「再結集」するかという問題でもあると考えています。


◆思いを共有する 地域営農ビジョン策定運動の意義

 だからこそ大会決議の中心的な柱に地域営農ビジョンの策定と実践を掲げたわけです。
 これはまさに農地を農地として守って次代へ農業をどうつなげていくのか――。このことを組合員自らが地域の実態に応じて5年後、10年後の将来像をどう描くかを考えていこうと提起しているものです。したがって、ビジョンを策定することはもちろん大事ですが、組合員それぞれが考えてもらい、それを共有化していくことが地域営農ビジョン策定運動のまさに柱ではないかと思います。
 「JAこうか」のレポートでは集落営農組織づくりを考えるきっかけは、地域の先輩格の人々が「100年後の集落を考える必要がある」と提起したことだと紹介されていますね。
 このように農業者自らがたとえば生産拡大するにはどうすればいいのか、所得向上を図るにはどうすればいいのか、そして地域を豊かにするにはどうすればいいのか、ということを考え、その思いを結集し、それをビジョンとして描いていくことがベースであることが示されていると思います。主役はあくまでも農業者であり組合員であり、JAはその思いをビジョンとして描いていくサポートをするということだと思います。
 目標は地域それぞれに違うと思いますが、共通するのは農を通じた豊かな地域づくりです。農業の中心的な担い手をどうつくるのか、さらにその周囲の多様な担い手の役割は何か、さらに農業生産を販売も含めてどう仕組んでいくのかを地域で考えてもらおうという問題意識を持つ必要があると思います。


◆農の価値観を伝える 都市農業の新たな意義

 この運動では地域の実態がそれぞれに違うわけですから、JAもすべてが同じ方向をめざす必要はありません。
 ただ、たとえばめざすべき姿として「強い農業」を強調する向きもあります。しかし、「強い農業」とは何か? われわれは自らが持続可能な農業や農村像を描いて自らが取り組み、それを消費者や地域住民が応援してくれる姿こそが「強い農業」だと考えています。つまり、さきに規模拡大ありきとか、輸出ありきといった問題ではないということです。
 「JA福岡市」のレポートはまさに都市農業地帯のJAの実践を伝えていますが、都市農業地帯はそれこそ農を通じた豊かな地域づくりという価値観を共有し農業を応援してくれる消費者といちばん近い地域だといえます。その点からすると都市農業の重要性とは単に都市的地域の問題にとどまらず、日本農業全体の応援団づくりという意味でも住民の理解促進が非常に大切になるということだと思います。
 したがって、今後は都市のなかにも農業がなければならないという制度を税制も含めて確立していくことにも合わせて取り組む必要があると考えています。


◆支店は将来像を描く拠点 地域と向き合う機能を高める

 「JAみなみ信州」のレポートは中山間地域の事業所を地域住民自身が運営している事例ですが、まさにJAは地域になくてはならない存在だということだと思います。しかも主役は地域の組合員であり、その主役が地域の姿を描いていくということが示されていると思います。
 さらにそこから支所、事業所のあり方を考えて直していく――。その意味でいえば地域から将来像を描いていくための拠点としての支所、事業所という位置づけであって、単に支所という建物を残すか、残さないかという問題ではないということだと思います。
 今回の大会決議では支店中心のJA運営を強調しています。ここで言っている支店とはJAみなみ信州のレポートにあるように単に建物のことを言っているのではなく、地域それぞれの実態のなかで問題を解決するための人や組織、あるいは話し合いの場であったりという意味での支店だということです。
 つまり、地域に根ざしたJAとしてその地域に共通する課題とどう向き合うのかということを強調したかったのが「支店を中心にしたJA運営」ということなのです。したがって支店を再編成して再配置するといった問題というよりも、地域と組合員に向き合う機能をJAはしっかり高めていこうということであり、それが「次代へつなぐ協同」ということでもあります。
 同時に地域営農ビジョンにしても基本は集落から考えていくことですが、そのエリアでは完結できないことは当然あります。その場合はエリアを超えてまとまっていくこともあっていいわけで、JAこうかのレポートでは水田農業の受託組織が集落を超えて活躍している姿が紹介されていますがまさにそうした協同も必要だと思います。このような取り組みをみると、地域実態をふまえて「地域の範囲」を考えビジョンを策定していく、ということだと思いますし、これと向き合う支店が機能を高めてサポートしていくということではないかと考えています。


◆外とつながりあう協同 6次産業化がめざすこと

 6次産業化への取り組みも大会決議に盛り込まれました。
 所得の減少は大きな課題で、いかに付加価値を高めていくかという課題があり、そのために6次産業化といった高付加価値化の取り組みを多様な担い手と一緒になって進めていくことも重要です。
 もちろん地元の農産物を加工して販売するといった農商工連携や地産地消の取り組みが基本ですが、より大規模に、あるいは広がりを持たせるために、となるなら地域の活性化を図ろうという同じ思いを持った企業などとともに連携しながら農業の付加価値を一層高める6次産業化の取り組みも必要になってきているという状況だと思います。
 それをJAグループとして支援するために検討しているのが「JA・6次化ファンド」(仮称)で、5年間で100億円のファンドを組成するというものです。
 この取り組みのベースにある考えを大会決議では「地域で補い合い、外とつながり合う協同」と位置づけています。地域で不足する部分は外の力を借りるということです。
 このファンド活用の主役は農業者というよりもJAや連合会を想定しています。ただ6次産業化と地域営農ビジョンの取り組みと関係で考えると、どう農業所得を高めるかの課題に対して農業による地域振興という同じ思いをもった人や企業との連携が重要だと思います。そのうえでさらにJAが中心となって「産業化」していこうという手段のひとつとしてファンドがある、ということになると思います。大事なことは地域で地域興しのために何ができるのか、です。その際に自分たちだけではなかなかうまくいかないときに多様な力を借りようということです。


◆期待される人間力 JAの人づくりも課題

 このような取り組みを進めるうえでは人づくりも課題になります。
 繰り返しますが、今回の大会決議で強調しているのは、主役は農業者、組合員であるということです。したがってそれをサポートするための企画提案、あるいは事務局機能を果たす人材が一層求められることになります。
 とくに支店中心のJA運営をめざすうえでは、JA福岡市のレポートにあるように「支店のプロデュース力、支店長を中心とする職員の企画力・人間力」という言葉に象徴されていると思います。
 これからJAにとって必要な人材とは、課題に向き合いながらも、自分たちから押しつけるのではなくてビジョンをどう描くかを組合員から引き出すという能力と、それを束ねて改めて企画提案していく、そんなプロデュース力を持つ人間だろうと思います。
 石田正昭先生は「組合員ならびに組合員組織を主役(俳優)とすれば、本店は総合企画機能をもったプロデューサーとしての役割を発揮し、支店は監督・演出機能をもったディレクターとしての役割を発揮することが求められている」と提言されています(石田正昭著『農協は地域に何ができるか』)。

(関連記事)

【現地ルポ・JA福岡市】都市でJAの存在をどう発揮するか (2013.01.09)

【現地ルポ・JAみなみ信州】「JAを活用」し地域を活性化 「支店」を地域住民の企業が受託運営 (2013.01.09)

【現地ルポ・JAこうか】担い手組織の多彩な役割で地域を支える (2013.01.09)

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