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JAの活動:日本農業の未来を創る元気な生産者

【特集・日本農業の未来を創る元気な生産者】 第3回 現地レポート 新潟・曽我農園2013年1月15日

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・糖度を高め味でブランド化
・「金筋トマト」に予約が殺到
・生産者の個性活かす
・地域のコミュニティをつくる

 元気な農業者を紹介する現地レポートの2人目は、食べた人が幸せな気持ちになり、贈られた人が笑顔になり、買った人がわくわくする――、そんなトマトづくりに励む新潟県の曽我新一さんだ。(この特集は全5回で掲載します)

食べた人が幸せな気持ちになるトマトづくりへ

◆糖度を高め味でブランド化

曽我新一さん 「いまはまだ技術的にも未熟だけど、10年後にはアフリカへトマトを輸出したい」と、松本武さんの話を伝えたら曽我新一さんは将来の目標としてこう語った。セネガルなどの事情を知る曽我さんは、10年後にはアフリカ諸国の経済的事情が向上し、所得も増え、輸入野菜を購入できるようになるとみているからだ。
 曽我さんがハウストマトを生産する新潟市の新崎地区は曽我さんの祖父の時代からハウストマトの栽培が盛んで「生産組合ができて50年」になる。
 50年にわたってトマトをつくってきた祖父や父親から教えられたことは、「おいしいの向こう側へ」ということだ。それは食べた人が幸せな気持ちになり、贈られた人が笑顔になり、買った人がわくわくする、そういうトマトをつくることだと曽我さんは考えた。
 そしてこの地域で盛んに栽培されている「大玉トマト」ではなく、「中玉トマト」をつくることにする。それは経験の少ない曽我さんには「大玉は収穫量は多いが技術的に栽培が難しい」からということもあるが、中玉トマトで「量は出さないが、糖度を高くしてフルーツ感覚で食べられ単価を高くできる」トマトづくりをすることで「味でブランド化」することをめざすからだ。

(写真)
曽我新一さん

◆「金筋トマト」に予約が殺到

「金筋トマト」 そのために選んだ品種の一つが「金筋トマト」だ。トマトの尻の部分からでる放射状のスターマークが「金筋」の由来だという。糖度8?10度を目標につくっているが、圧倒的な甘みと酸味そして旨みが凝縮されたトマトとして、1個300円から400円するにもかかわらず贈答用などとして毎年予約して購入するリピーターがたくさんいる。
 金筋トマトの収穫期は3月から5月だが、2月から5月そして9月から10月に収穫するのが「塩フルティカ」というトマトだ。このトマトは、土壌の塩類濃度を高め吸水を制限することでつくりだす高糖度トマトだ。新潟は冬期の日照量が少ないので生育スピードが非常に遅いが、その分、玉が樹についている期間が長くなり、2月から回復してくる日照量と相まって大変に旨みのあるトマトになるという。酸味が少ない食べやすい品種を選んでいることで、金筋トマトと並ぶ曽我農園を代表するトマトとなっている。
 このほか、ミニトマトや加工用トマトなどを合計50aのハウスで生産している。トマトのほかにはハウス20aでアスパラガスを生産するほか、露地栽培で茶豆(枝豆)やブロッコリーもつくっている。

(写真)
「金筋トマト」

◆生産者の個性活かす

 こうした農産物は地元JA(JA新潟市)の直売所や民間企業が経営する産直市場、地元食品スーパーで主として販売しているが、最近は自社のホームページでのネット販売も行っている。
 金筋トマトについては、リピーターも多いことから直売所などに3月ころから予約注文が入る。それも新潟県内だけではなく、県外からわざわざ予約のためにやってくる人もいるというからすごい。
 直売所などを中心に販売するのは、中玉のフルーツトマトなので、他の生産者のように量が収穫できないことと、「価格を自分で決めることができる」からだ。
「金筋トマト」のハウス 個人での販売にこだわるもう一つの理由は、10年後にここでトマトを生産する後継者が4人しかおらず「産地ブランド化」することは難しい。それなら「生産者のパーソナリティで売る」方がという考えだ。
 曽我農園を代表する金筋トマトは、昨年5月に開催された日本野菜ソムリエ協会の第10回「野菜ソムリエサミット」で「食品評価部門」および「購入評価部門」で大賞に選ばれた。今回はトマトがテーマということで、全国から優秀な生産者の人たちのトマトが出品されたなかでの大賞だから「喜びもひとしお」だったと曽我さん。ネット上でも金筋トマトの話題が盛んに書き込まれており、今年はいままで以上の予約が殺到する予感がする。

(写真)
「金筋トマト」のハウス

◆地域のコミュニティをつくる

 農業経営を引き継いだとき「単価が低くて経営が悪かった」。そしていじめのトラウマもあって農業があまり好きではなかったが、引き受けた以上「好きになる努力をしてきた」し、いまでは「自分で計画し、結果を出す」ことができやりがいを感じているという。
 そしてこの地域には福祉関係の施設が多いので、ハンディのある人たちを雇用したり、ハウス体験農業農園(有料で)を設けるなど「農業が地域のコミュニティをつくる」ができればと考えている。この地域が新潟市のベッドタウンとなって地域コミュニティがなくなってきているので、その受け皿にできないかということだ。そのことに行政にも注目してもらい、地域農業の振興と地域活性化をはかりたいというのが曽我さんの願いだ。

(※第1回 ・ 第2回 はこちら)

 

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