JAの活動:第58回JA全国女性大会特集
【座談会】活力あるJAを支える女性職員・女性組織 山田泰行氏・百瀬康子氏・渡辺広子氏・伊藤澄一氏2013年1月22日
・JAにもっと女性活躍の場を
・「任せること」が女性参画の第一歩
・JAの成長可能性は女性の力に
JAグループは第26回JA全国大会決議に「女性パワーの積極的な位置づけ」を盛り込み、より一層の女性参画推進を今後の課題とした。
これまで言われ続けてきたこの課題を前進させるためにはどうすればよいのか――。座談会には女性参画3目標を達成しているJA紀の里の山田泰行組合長、女性管理職の先駆けとして経験を積んでこられたJA松本ハイランド入山辺支所の百瀬康子支所長、JAの生活指導員ひとすじで定年退職後も地域で食や農の大切さを伝える活動を続けている渡辺広子さんに集まっていただき、それぞれの立場からの意見を交わしていただいた。そこでは女性と男性お互いがそれぞれの得意分野を認め合い、その力が発揮できる仕組みづくりの重要性が強調され、今後の職場環境や職員育成にもつながる課題もみえてきた。
JAにもっと女性活躍の場を
◆変わる時代のなかで
伊藤 日本は先進国の中でも女性管理職の数がもっとも少なくJAグループも2000人の女性管理職が活躍していますが、全体の6%と進んでいる状況ではありません。第26回JA全国大会決議の中ではJA経営への女性参画3目標や女性管理職の登用が明記されるなど、女性の果たす役割に今まで以上の期待が高まっています。そこで、活力あるJAをつくっていくために女性のパワーをどう取りこんでいけばいいのか本日は議論していきたいと思います。
最初に自己紹介を含めてこれまでの活動についてお話しいただきたいと思います。まずは渡辺さんからお願いします。
渡辺 私は昭和39年に県の生活改良普及員の資格をとり、生活指導員としてJAに入りました。51歳で定年を迎えるまで31年間、ずっと生活指導員をしてきました。本当は以前から農業をやりたいという夢があったのですが、そのためにはいずれ農家や農業のことを知らなくてはいけないと思い、「こういう農業がしたい、こういう農家の奥さんになりたい」という自分のめざす農家像を持ちながらJAの職員になりました。
私が職員になったのは全中が「生活指導員」を全国に配置することを決めた3年後でしたので、まだマニュアルも何もなかった時代ですが、逆にやりたいことが何でもできる時期でもあり、主に婦人部の事務局をやっていました。その4?5年後は高度経済成長のときで農家にもお金がいっぱい入った時代です。その後、昭和45年からは減反政策などとも相まって、農家の暮らしが一変した時代も経験しました。
カネやモノといった目に見えるものと引き換えに、家族や農を大切に思う心や協同の心など目に見えない大切なものがどんどん失われていく…。それをみていて、なんでも現金でなければダメなのか? 失ったものを取り戻さなくては、と自給運動をはじめました。自給運動というのは年間の自給目標額を決め、その金額分の食を自分たちの田畑で作った農産物でまかなおうというもので、大事な“心”を犠牲にして、お金で買っている食べ物の食品添加物や輸入農産物などの安全性を学習することで、いかに農家がつくったものに価値があるかを自分の体で知ってもらうことが目的でした。まず、農業に携わる女性に食や農のすばらしさを知ってもらいたい、それが願いでした。
◆職員時代の運動を基本に
伊藤 渡辺さんはまさに次世代に食や命、くらしのリレーを行っておられますね。自給運動は地域でどのような広がりをみせたのですか。
渡辺 この自給運動から地域に伝わるくらしや生産の技を伝える場をつくろうと女性部と女性部OBが中心となり、農協の会議室に「百栽館(ひゃくさいかん)」をつくって農家の高齢者が知恵や技を出し合い、学び合える場所にしたのです。
百栽館の活動のなかで一人暮らしのお年寄りに地域の伝統食を食べてもらおうと「百菜(ひゃくさい)弁当」の配食サービスもはじめました。昭和62年、まだ介護保険制度もなかった時代です。地域に自給運動を広めるため、弁当の調理には農家以外の奥さんたちにも集まって手伝ってもらいました。その後、百栽館でできた作品や農産物を販売する直売所「百彩館(ひゃくさいかん)」もできました。
この職員時代の運動が、現在まで私の活動の基本となっています。平成7年に定年した後も、これまでの自給運動を地域で発信していきたいと思い、夫とともに10年間、米粉の研究・レシピづくり、ソバ・エゴマの栽培などを行い、平成17年に食育工房「農土香(のどか)」という農村レストランをはじめました。「農土香」で重視している食育活動の柱は母親です。家族が健康で幸せに生きるためにはお母さんがしっかりと大地に足をつけて食卓づくりをやっていかなければいけない。そこで食の基本を知ってもらうために、地元の旬の食材とそれを食卓に出す意味を一枚の表にまとめた「お母さんの免許証」をつくりました。
命と農業は永遠に継続していくものです。「それを継承していくのは女性たちの役割。娘や孫が嫁に行くときにはたんすに入れて持っていかせなさい」と伝えています。
(写真)
料理教室で指導する渡辺さん
◆女性出荷者がFMの礎に
百瀬 私が農協に入ったのは昭和50年です。高校を卒業し、長野県の普及員養成所に2年通って生活改良普及員とJAの生活指導員の資格を取得しました。その後、旧松本平農協に入り、そこの生活指導員として女性部の事務局、地域の女性を対象とした若妻大学の企画やそのOB会の組織化や健康管理活動に携わってきました。
JAに勤めて38年になりますが、生活指導を27年、支所で農業資材担当を4年、生活課長を2年、本所総合企画課のイノベーションセンター長として2年やりました。3年前から支所長として現在は2支所目になります。管理職経験は9年目です。私は49歳のときに管理職になったので、その頃の当JAとしては女性では早いほうでした。
山田 私どものJAは平成4年に広域合併JAとして誕生しました。女性組織はその半年後に「かがやき部会」という名前で5つの旧JAの農協婦人部が結集してできました。最初は旧JAの婦人部活動の延長という感じでした。
というのも当JAは果樹を中心に年間を通してさまざまな作物が採れる地域なので農家女性の繁忙期が地域・品目ごとに違うという特殊な状況にあり、地域性を考慮しなければいけないというのが当初の課題にありました。そのため、最初は本所、支所、支部活動のうち、参加しやすい活動に参加してもらうというかたちをとりながら組織づくりを進めてきたという経過があります。
私がそのなかでも一番女性の力の大きさを感じたのは平成12年にファーマーズマーケット(FM)「めっけもん広場」ができたときです。オープンすると、その半分以上の出荷者は女性でした。今でも出荷の中心を担っていただいています。開設から10年後には年間売上げが28億円にのぼり、まさにその基礎を築いたのが女性だといえます。
そうして女性が元気になると、女性理事を登用してほしいとの要望があがりました。今から10年前のことになりますが、そういった声に対して「地区の推薦が基本、女性枠は認めない」という返事に女性たちが奮い立ち、自主的に組合員拡大運動をはじめたんです。「女性正組合員率30%、女性総代25%、女性理事1名」という目標を支所ごとに掲げ、平成17年に全支所に1名以上の女性理事が誕生しました。
女性理事が誕生して3期目になりますが、現在も女性枠としてではなく地区からの選出で6人います。地区から最低1人は女性を出すということが今では完全に定着していますね。
「任せること」が女性参画の第一歩
◆2足のわらじを履いて
伊藤 渡辺さんと百瀬さんは家族を支える主婦として、また1人の仕事人としてご苦労があったと思いますが、そのあたりはどうですか。
渡辺 私には子どもが3人おり、主人も農協職員でした。共働きで3人の子育てをしなければならず、しかもその当時は3歳未満の子どもが預けられる保育園もありませんでしたので、一人暮らしをしていた近所のおばさんを家に呼んで子どもたちを見てもらいながら仕事に行く、という生活でした。
当時は昼も夜も休日も関係ありませんでしたから、日曜日も出勤していく私に子どもから「お母さん、今日も出て行くの?」といわれ、若妻の会でその話をすると他のお母さんたちもみんな共感してくれました。そこで子どもを連れてこれる場をつくろうと昭和46年にはじめて「農協親子教室」を開きました。すると「お母さんたちだけ出ていって」と今度はお父さんたちからの不満です。そうして開いたのが「農協おしどり教室」。このように女性部との雑談や子どもたちとの会話から見えてきた働く女性としての悩みや課題がいろいろなJAの活動へとつながっていったように思います。
百瀬 私にも子どもが3人います。25歳で結婚し4年間で3人出産しました。当時は育休というものがなかったので、出産後8週目で職場に出ていきましたね。私の家には当時80歳の曾祖母がいましたので、子どもたちを預けて働きに出ることができました。
しかし一番下の子どもが幼稚園に上がったとたん、介護が必要になってしまい、3年半、介護をしながら働きました。本当はそのとき、子育てを手助けしてくれた恩返しをしたいと仕事を辞めようと思いましたが、その間は生活指導員をはずしてもらうことができたので仕事を続けることができました。
出産してから10年間は記憶がないくらい毎日必死でした。でも女性部の方たちにはだいぶ支えてもらいました。子をもつ母親という同じ立場で子育ての悩みや苦労を共感しあえることで接点も増えるんですね。みんなに支えてもらって今があると思っています。
◆企画の場にもっと出番を
伊藤 百瀬さんは決して女性にとって恵まれた時代といえない中で女性管理職のさきがけとしての道を歩んでこられましたが、ご自身を振り返ってみて、どういったサポートが女性の成長につながると思いますか。
百瀬 私の農協人生の中で一番大きい経験となっているのが平成18年に本所の総合企画課でJAの長期構想を策定する「イノベーションセンター」のセンター長に任命されたことです。現在、取り組みの最終年度になっている6年間の第3期長期構想の策定と経済事業改革の事務局を任されました。
今、支所長をやっていて一番役立っているのはそこでJAの経営的な部分に携われたことです。女性がそういう企画の場に立てる機会はJAには少ないというのが現状ですが、多くの一般企業では消費のほとんどを担っているのは女性だということで、何十年も前から当たり前に企画のメンバーとして女性が参画しています。そういう機会を何とかしてJAにももっと増やすことができればと思います。任せるということは責任を持たせることでもあるので、自分が出した結果を周りから評価されたり、自分自身でも納得することによって「また次もがんばろう」という気持ちにつながっていきます。
全国のJAの女性管理職は生活指導員上がりやLA上がりの人が圧倒的に多いです。女性組織の事務局として企画をしたり、LAとしてきちんと数字を残し実績を積んできたというこれまでの経験が生きるのだと思います。ですから、職員としてきちんと自分の意見が発言できる場をJAがつくっていくことが大事だと思います。
伊藤 渡辺さんは51歳とお若い定年退職でした。JA職員として生活指導員をされ、その後、「農土香」の運営など女性パワーの発揮を実践されてきました。JAでの女性の出番についての考えをお聞かせください。
渡辺 女性でなければ見えないことや女性だからできること、逆に男性だから見えることや男性だからできることがある。お互いにその出番をつくっていかないといけないと思いますね。
世の中は男半分、女半分。しかし日本社会をみてもJAのなかをみても生活に関する議案は圧倒的に男性多数でつくられています。JAの場合もほとんどの議案は県でまとめられ、それが単協へと下りていきますよね。生産面での計画は上からの発信でもある程度はいいと思いますが、生活面のこととなれば、やはり女性ならではの感性や視点を取り入れることがもっと必要だと思います。下から積み上がっていく計画であればもっと地域も元気になるはずです。
それから、まだJAのトップ層に「この面では女性に任せた方がいい」と素直に決断できる人が少ないのではないでしょうか。先ほどの百瀬さんのお話を聞いて、「女性にも長期構想に加わってもらおう」と女性の感性を認めてくれるトップがいることはすばらしいと思います。
目標を持った仕組みづくりが要
◆働き方の選択肢を広く
伊藤 現役女性支所長として百瀬さんはJA経営への女性参画をどう進めていけばよいと思われますか。
百瀬 JA内で女性参画が進まない理由は2つあると思います。まずひとつは組織内の問題です。なかなか女性にいろいろな経験をさせていないので女性が育たない、ということです。その一番大きな問題は思いきった指名をトップの経営人ができていないことだと思います。女性の方からあれこれ要望しても最後はやはり組合長の決断で決まります。それがないと先には進まないのでやはりトップの力量が大きく影響しているのかなと思います。
もうひとつは女性側の問題です。さきほど、女性管理職にLA経験者が多いといいましたが、当JAには現在、女性のLAは全体の1割弱程度しかいません。家庭との両立が時間的に難しいといってやめてしまう人や、責任が負担になると役職がつくのを嫌がる人もいます。
しかし、仕事は生活のほとんどの部分を占めるものです。私は仕事というのは「こういう風に生きたい」という自分の人生の生き様だと思うんです。子どもが小さいときはあまり負担にならないよう家から近い職場で働き、子どもがある程度手から離れたら自分の力を発揮してみる、というように、自分の生き方を長い目で捉えて働き方を考えていくことが大切だと思います。
逆に女性だけでなく、男性でも家庭に比重をおきたいと思う人や、JAの仕事だけでなく農業もやりたいという人だっています。男性、女性に関わらず、個々の仕事に対する価値観を認め、自分で働き方を選択できるシステムがJAのなかでも形としてできていけば、もっと女性の管理職も増えるのではないでしょうか。
昔に比べてJAの職員数が少なくなっている中で、職員の力をどのように発揮させていくかはこれからのJAにとって大きな課題だと思います。年功序列、男性主体、という形でなく、性別や年齢を超えてそれぞれがもっている能力を最大限に活かせる仕組みができればJAにもっと活力が出てくるのではないかと思います。
伊藤 具体的に仕組みをつくっていくというのは非常に大事な話です。女性は結婚し子どもを産む機会があります。子育てという大きな仕事を職場がシステムとしてサポートしていく。そして、一段落した女性が職場の中のマネージャーとして戦力化されていくことが大切です。
◆地域のムードメーカー
伊藤 昨年、早朝の「めっけもん広場」を見せてもらいました。女性の皆さんの活き活きした朝礼を頼もしく感じました。山田組合長は女性の活躍の場づくりについてどのようにお考えですか。
山田 女性参画の視点には2つあると思います。まずはJAの組織活動への女性参画です。これまでJAは生産部会を中心とした営農組織や年金友の会の利用者組織など、男性中心の組織活動が主だったと思います。
しかし基幹農業者の高齢化や農村社会から混住化社会への転換など、JAを取り巻く環境は変わりつつあります。そうなったときにやはりJAに求められるのは地域の活性化やコミュニティーの再構築といったことで、それには女性会(女性部のこと)や青年部といった層別組織の活動が重要になってくると思います。
実はうちの女性会員の半分以上は非組合員です。ところがそれが元気の源となっています。女性会の方たちは昨年、和歌山県の風物詩である夏まつり「紀州おどりぶんだら節」に「合併20周年JA紀の里」という垂れ幕を下げて出場し、地元メディアに映ってPRしてくれました。こういった女性たちの自主的な活動は大変ありがたいですし、とくに発信力は女性組織に頼るべきところが非常に多いです。元気な女性組織をもつJAは事業も伸びると思います。
そして、もう一つはJA内部での女性参画です。われわれのJAも全職員のうち、女性職員が40%、女性管理職が9.5%とまだまだ少ないですが、県下では高い水準ということで、いかに女性参画が進んでいない現状かということです。やはりこれにはトップ層の意識の持ち方と女性自身の意識の改革、そしてJAが明確な目標を持ち、女性の力を発揮する場をつくっていくことが要になると思います。女性管理職の登用を進めたい気持ちはどこのJAにもあると思いますので、その場づくりさえできればどんどん女性の登用は進んでいくのではないでしょうか。
(写真)
上:合併20周年記念式典「紀の川まるごと」(2012年9月2日)でかがやき部会が中心となり郷土食・伝承料理・おふくろの味にこだわった手料理で出席者をもてなした(JA紀の里)
下:和歌山県の夏の風物詩「紀州おどりぶんだら節」に参加(JA紀の里)
JAの成長可能性は女性の力に
◆「女性だからこそ」の力
伊藤 女性のJA経営参画3目標(正組合員25%以上、総代10%以上、理事等2名以上)を達成しているJAが全国で39あります。JA松本ハイランドとJA紀の里も達成しています。これまでの経験のなかで、女性の力や女性の持ち味を強く感じたのはどんな場面ですか。
山田 東日本大震災後の女性会の活躍は大きなものでした。当JAは「めっけもん広場」を開設するにあたってJAいわて花巻のファーマーズマーケット「母ちゃんハウスだぁすこ」に研修に行かせてもらい、それがきっかけで姉妹提携を結びました。今では女性組織同士の交流がもっとも深く、しょっちゅう行き来をしている仲です。
大震災発生後も「何かできることはないか」と、女性会のメンバーの対応はすばやいものでした。お互いの会長同士が連絡を取り合い、現地で生活用品が不足しているということだったので女性会が中心となって物資の収集に動きました。
必要物資の大半はカイロやおむつ、トイレットペーパーなどで、毎日生活に密着している女性の皆さんだからこそ気づく部分だと思いますし、女性同士だからできるやりとりだったでしょう。普段の交流が非常事態に活かされた例としても感心しました。こういった支援がわれわれ男性同士でもできただろうか――とその後、JAいわて花巻の高橋組合長と話しをしていて反省させられました。
百瀬 現在、私のJAには5人の女性理事がいますが、10年前の機構改革で女性組織の事務局職員を減らすという案が出されたときには女性理事がきちんと意見しJAの提案を覆しました。「私たちががんばらなければいけない」と、本当にJAや地域や組合員のことを思う意識を素直に持っています。それは生活者としてずっと地域にいたからなんだと思います。男性理事の中には定年後に地域に帰ってきたという人も多く、実際に地域のことをよく知らない理事も結構いますが、女性理事はお嫁にきてからずっと地域にいて地域のことをよく知っています。そういう情報を持っている人が理事になることはとても大事だと思います。
それから、4年前には女性の声をJAに反映させていこうと女性理事を中心に女性部や助けあい組織など女性組織を結集して「女性参画センター」を立ち上げました。参画センターには女性職員の代表にも加わってもらいました。そこからは農産物の販促を担う「美味しさとどけ隊」が誕生し、県内外へのJA産農産物のPRに貢献していますし、「よい食パク博」は毎年恒例の人気イベントとしてJAや農業を地域住民にアピールするきっかけとなっています。これらはまさに女性ならではの視点が活きた成果だと思います。
(写真)
上:JAいわて花巻への支援物資の荷詰め作業をするかがやき部会員(JA紀の里)
中:女性部を講師に職員対象料理講習会。入山辺支所女性職員と職員家族は全員女性部に加入している(JA松本ハイランド)
下:「美味しさとどけ隊」。女性組織と職員でペアを組み販売促進(JA松本ハイランド)
◆食卓からできる農政活動
伊藤 最後になりますが、現在のお立場を足元におきながら、これからのご自身の展望や夢についてお話いただきたいと思います。
山田 私としてはやはり農業振興です。一年を通していろいろな農作物ができる周年供給産地を守ることが第一です。そのためにはFMをもう一カ所つくりたいと考えています。それを成功させてくれたのは女性出荷者のみなさんですから、女性の力をこれからも借りなければいけません。女性の力と営農・生産の力を合わせて力強い産地づくりをめざしたいと思います。
それから幅広い年代の方に組織活動を徹底し地域の組合員化を進めることです。これにも女性の力が一番必要であると感じているので、それを引き出せる環境づくりを考えながらJAの活性化を進めていきたいと思います。
百瀬 支所長の立場として「共感のできる職員づくり」をすすめることです。たとえば組合員の家族に祝い事があったときには「おめでとうございます」と声をかけたり、「この間ケガをされたんですって?」など、気遣いの言葉もパッと言えるような職員を育てていくことです。それが本来のJAの姿だと思います。
金融・共済の職員は3?4年で交代するわけですが、人が変わってもサービスが変わらない支所づくりを大事にしたいと思います。支所というのはJAの建物ではなく組合員さんの財産です。組合員が当たり前に使い、当たり前に来ていただけるような支所になればと思います。
渡辺 私は「農土香」で米粉の普及にも力を入れて取り組んできました。それは3食のうち2食が輸入小麦という現状から米を主食の座に取り戻したいからです。
米の消費量や国産の農畜産物の消費が伸び悩んでいますが、それは主食が変わり、輸入小麦におかずまでもがくっついてしまっているからです。米粉にはご飯と一緒に食べていたみそやしょうゆといった調味料や根菜類など、日本本来の農産物も合います。主食を米に戻せば日本の農業はもっと元気になっていく。そういう役割を自らが担っているんだということをまず農村女性たちに自覚してもらいたい。そして農家が汗して作った農産物がいかに安心・安全でおいしいかということを農家以外の人にも呼びかけていくことがTPP阻止の大きな運動につながっていくと思います。これは農村女性ができる農政活動です。
大事な家族の命の基地である食卓を自給自立させること、それが農村女性の自立と社会的地位の向上にもつながっていくんだということを、これからも「農土香」を拠点に伝えていきたいと思います。
伊藤 本日は長時間にわたりJA経営への女性参画について、お三方の体験と立場を踏まえて具体的な提案も含んだ貴重なお話を伺いました。女性のJA経営参画が不十分という現状では、逆にこの分野こそ、経営の成長可能性を残していると思います。
日本全体の問題なのですが、これを突破していくのは、JAグループになるのではないかと思います。JAの総合事業のひとつひとつが、実は女性たちが支えています。医療・介護・福祉の分野、食農教育やファーマーズマーケット運営、営農分野でも主に女性が担い手となっています。この分野ではマネージャーも育っています。30%が女性管理職というJAもあります。
実は女性の活躍の場をほぼすべて具現化しているのが、JAの職場でもあると思いました。お三方からそのような見方を学びました。
第26回JA全国大会では、唯一の数値目標が女性のJA経営参画3目標です。女性の仕事の役割についても同時に考えていきたい。すでに流れは見えてきた、それが感じられた本日の座談会でした。ありがとうございました。
(写真)
上:、「よい食パク博」での親子でおむすびバイキング(JA松本ハイランド)
下:JA秋田しんせい女性大学の講座で講師を務める渡辺さん
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