JAの活動:日本農業の未来を創るために―JAグループの挑戦―
【現地ルポ・JAおきなわ(沖縄県)】新たな特産物を発掘 地域の消費の創出も2013年11月12日
・地域の思い店名に表現
・毎日が学習生産の刺激
・基盤整備し本土市場へ
JAおきなわは奈良県、香川県に次ぎ、平成14年、1県1JAとして誕生した。多くの債務超過のJAを抱えた合併で、組合員の出資金を減資したり、役職員は報酬や基本給の3割を出資したりするなど、組合員、役職員ともに大変な苦労を重ねてきた。苦節の10年。いまは経営を確立し、体制を整え、次の10年に向けて飛躍しようとしている。特に飛躍的に伸びているのが、組合員のJAに対する意思を結集し、地域農業の推進力になっているファーマーズマーケットである。沖縄県の離島でもっとも農業の盛んな宮古島にその取り組みを見る。
(写真)
ファーマーズマーケット「あたらす市場」
【JAおきなわの概況】(平成24年度末)
○組合員数=12万5102人(うち正組合員5万2006人)
○販売品取扱高=477億8300万円
○購買品取扱高=472億7200万円
○貯金残高=7589億4600万円
○長期共済保有高=1兆3979億4800万円
○職員=2852人
◆地域の思い店名に表現
JAおきなわは、現在9つのファーマーズマーケットを持つが、宮古島の「JAファーマーズマーケットみやこあたらす市場」はその2号店だ。「あたらす」とは「愛おしい」「大切な」という意味で、地域の人のファーマーズマーケットに対する思いが伺える。
平成17年にオープンし、売場面積492平方mで加工室、冷蔵庫を持つ。登録されている出荷者は約694人(うち加工業者が74人)。年間来客数は24年度で約21万7000人。年間の売上高は約3億8000万円。
島民5万5000人ほど消費人口で、この数字は大きい。スタート時の18年度1億900万円だったものが、途中、改築で拡大したこともあるが、年々4000?5000万円伸びた。島内には民間のスーパーもある。
(写真)
上:「生産者は日々が学習です」という砂川寛裕さん
下:バックヤードで値段を入力する出荷者
◆毎日が学習生産の刺激
出荷者組織「あたらす市場出荷協議会」の前会長である砂川寛裕さん(58)は「家庭での野菜の消費が増えているのではないか」とみる。つまりファーマーズマーケットが野菜の需要を掘り起こし、新鮮でおいしい地元産の野菜を食べようという人が増えたということだ。「いつ何が売れるか、生産者は学習する。それが刺激になって、新しい品目や栽培方法に挑戦するようになった」という。。
もう一つの掘り起しがある。これまで知られていなかった地元野菜の発掘である。庭先などで自生し、限られた地域で食されていた野菜が日の目を見ることになった。砂川さんは、その例として葉もののハンダマ、スイゼンジナ、ミヤコゼンマイなどを挙げる。
もともとこうした野菜は、余ったものを隣近所と交換していたものだが、これが「あたらす市場」に持っていくと商品になる。津波古昌誠店長は「これが高齢者の生きがいになり、地域に元気が出てきた」という。
女性起業グループ代表で、20種類を超える加工品を年間700万円売るトップクラスの津嘉山千代さん(70)は、「ファーマーズマーケットは、私たちの作る加工品の晴れ舞台です」という。
(写真)
「加工品の晴れ舞台」という売上げトップクラスの津嘉山千代さん
◆基盤整備し本土市場へ
このように、JAおきなわのファーマーズマーケットは、地域の農業や地域の人に元気を与えている。一方で、宮古島では、本島や本土市場を狙った産地づくりのための条件がそろいつつある。
今年の夏、宮古島は干ばつに襲われた。その時威力を発揮したのは地下ダム(海へ逃げる地下水を止水壁でせき止め水位を上げる)だった。JAと宮古市など関係機関は対策会議を開き直ちにサトウキビに10tトラック1万400台分の水を散布し、サトウキビ農家に喜ばれた。同地区販売高でサトウキビは48%を占める。
また、いま沖縄の農業振興で期待されているのが地下ダムの他、24年度から始まった沖縄振興特別交付金だ。これで鹿児島までの輸送費負担がなくなる。宮古地区の施設園芸はJA販売高で6%に過ぎないが、マンゴーの例もある。ファーマーズマーケットを通じて拡大した野菜が、本土市場へ向かう大きな可能性を秘めている。
(写真)
職場体験で手伝いに来た高校生とバックヤードで
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