JAの活動:第59回JA全国女性大会
【座談会】キラリと輝くフレッシュミズの活動 心の通う仲間を全国に2014年1月24日
・客と対話する農業を
・最初はメンバー集め
・料理教室や農業体験
・フェイスブック使って
・フレミズ大学で仲間
・女性部とワンセット
・地域の活動も視野に
・手作りの食こそ大切
JA女性組織の中でも、若い世代が集まるフレッシュミズ(フレミズ)。今、全国でこの農業・農村の次代を担う組織の活性化に向けた取り組みが進んでいる。JA全国女性組織協議会で理事を務める香川県農協女性部フレッシュミズ部会の小川千枝子部会長、茨城県JAフレッシュミズの会の日向寺恵美会長と、長野県のJA上伊那でフレミズ組織の立ち上げに向け奮闘している瀬戸真由美さんの3人に、フレミズ組織の必要性や活動内容について、意見交換してもらった。
「食と農」の大切さ
次代に伝える
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座談会に出席した3人のフレッシュミズ(左から)瀬戸真由美さん、小川千枝子さん、日向寺恵美さん
◆客と対話する農業を
瀬戸 私は長野県の辰野町で、受託を合わせて23haの稲作一本の専業農家です。もともと建築士として県内の建設会社に勤めていましたが、結婚後、やはり建設業で働いていた夫が、「実家で農業をやりたい」と言いだしたのをきっかけに、「それなら育児中に考えていた“お客さんと会話しながらできる農業”をやってみたい」と考え、就農しました。
2年前、県内の学校給食に米粉を使ってもらおうと、我が家に製粉機を導入しました。できた米粉はシチューやパウンドケーキ、グラタン、揚げ物などに使ってもらっています。
小川 私は、非農家から嫁ぎました。結婚する時に義母から「千枝子さん、一緒に田んぼしてくれる?」と言われ、なにも分からないまま「はい」と答えたのが就農のきっかけです。新婚旅行から帰ったら、田んぼ用に、義母が私の自転車を買ってくれていました。なんか、家族になった気がしてうれしかったですね。
日向寺 米とピーマン、メロンの兼業農家です。女性部員だった義母に連れられて、行事を手伝っていたら自然と私も女性部に参加していました。
瀬戸 私も地元のJA上伊那でフレミズの活動をしていきたいと考えています。ですが、わが家には250枚の田んぼがあって、毎年6000枚(箱)近い苗を自分で作っているんです。組織を立ち上げようにも、米の専業農家で、時間的にやれるのかなあという不安もあります。
(写真)
瀬戸真由美さん(JA上伊那・長野)
◆最初はメンバー集め
日向寺 私がフレミズに入ったころは、実はフレミズ部員が私1人だったんです。活動といっても、県の女性組織が開催していた「フレッシュミズの集い」に参加するだけ。おととし、当時の事務局さんから「これからはフレミズをどんどん盛り上げていきましょう」と言われ、フレミズに関する規約や要綱を整備してもらったのをきっかけに、メンバーを集めることから始めました。
最初は、地産地消の料理教室を開こうと、メニュー作りから材料集め、参加者の募集なども1人でやりました。昨年から、「もっと盛り上げよう」と、キャラクター弁当作りの得意な友達に講師をお願いしました。これをきっかけにメンバーが増えたんです。
小川 私も役員になったばかりの時は、「できるかなあ」って不安でした。だけどそんな時、いつも女性部さんや事務局さんが「大丈夫!大丈夫!やってみよう」って背中を押してくれたんです。それがすごく励みになったし、心強かった。だから、ここまで来られたんだと思います。今の瀬戸さんみたいに悩んだり手探りだったりした方が、ぜったい成長につながるし、後での手ごたえが大きいですよ。周りの方々が必ず応援してくれるから、まずは瀬戸さん、一歩を踏み出そうよ!
◆料理教室や農業体験
瀬戸 ふだん、お二人はフレミズでどんな活動をされているんですか?。おもしろい活動があったら、ぜひ教えてください。
小川 香川県は“うどん”のイメージが強いですが、農産物もたくさんあります。四季それぞれの自慢の旬の野菜や果物をアピールしようと、昨年から「親子で収穫体験&料理教室」をはじめました。まず夏休みには桃で「桃カレー」。冬休みには金時人参、金時芋、金時みかんの“讃岐三金時”を使って、キャロットライスとスイートポテト、みかん大福を作りました。
次回は来月、うちの畑でブロッコリーを収穫体験して、ブロッコリーコロッケやパスタ、スープを作る予定です。それぞれの農産物の生産過程を紙芝居にして子どもたちに伝えることで、「子どもと一緒に“食べものが食卓にのぼるまで”を学ぶことで、農家のみなさんの苦労を知ることができました」「子どもの夏休みの宿題にも使える」と、参加した親子にも好評でした。
日向寺 私のところでは、地元の小学校に食育の出前授業をしています。昨年6月に3年生59人とサツマイモの苗2800本を定植。除草作業や試し掘りを経て、10月に収穫。11月に焼き芋をして食べただけでなく、12月には一緒に袋詰めをして、協同病院の前で販売もしたんです。お母さんたちからも「いい社会勉強になった」と評判でしたよ。
また、女性部と一緒に取り組んでいるのが、加工品の開発です。地場産のピーマンを活用し、「ピーマンうどん」を作ろうと、みんなで話し合いながら試行錯誤しています。
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小川千枝子さん(香川県農協女性部フレッシュミズ部会部会長)
◆フェイスブック使って
瀬戸 女性組織やフレミズで活動していてよかったことってありますか?
小川 フレミズに入っていてよかったのは、料理教室やふだんの勉強ももちろんですが、なによりも全国に同世代の仲間ができることですね。フェイスブックなどを通じて、全国のフレミズの仲間たちと、日ごろから子育てや組織づくりの悩みを共有したり、おもしろい活動をしたら報告したりしています。そのつながりで、お互いの気持ちが通じ合い、励みになり、時には生きる糧(かて)のように感じることさえあります。
日々の活動では、料理やハンドメイドなど、メンバーみんなで好きなことを企画し、実行しています。「やらされている」のではなく、本当に自分たちがやりたいと思っていることができる。だから楽しいんです。こうした自由な活動ができるのは、やっぱりJA女性部の中のフレミズだからこそだと、いつも感謝しています。
日向寺 フレッシュミズ全国集会や関東甲信越ブロックのフレミズ交流集会、茨城県のフレミズの集いに参加して、そこで出会った県内外の人と交流していることですね。実は最近も小川さんに茨城に来ていただいて、埼玉のフレミズさんや、同じ県内のJA水戸のフレミズさんと一緒に交流会を開きました。
地元だけでなく、全国各地のみなさんとつながりを持てるのはやっぱりJA女性部のフレミズならではですね。情報を教わったり刺激を受けることで、地元の活動にも活気が出ます。女性部やフレミズを知らずにいるのは、もったいないですね。
◆フレミズ大学で仲間
瀬戸 JA上伊那には、まだフレミズ組織がないんですけど、JAがフレッシュミズ大学をやっています。1期12か月で、毎月1回、ボクシングや太極拳、浴衣の着付けなどの講座や、JAのカントリーエレベーターなどを訪ねる「大人の社会見学」などを行っています。講座の企画を決める時、わたしたち受講生も希望は言いますが、会場や講師の手配などは、JAの職員がやってくれています。
実はうちの町内には、同世代の女性農家が2人しかいないんです。それで私も、同世代の仲間がほしくて、JAのフレミズ大学に入りました。そしたらJA管内でやっと、5人の仲間ができました。なかなか同世代の仲間を見つけるって難しいですよね。
小川 香川県は県単一のJAで、本店はもちろんですが、地域ごとにある女性部支部の事務局がフレミズ活動を支援してくれています。全部で28ある地域のうち、フレミズがあるのは8地域。組織のないところに一人でも仲間を増やしたいと思い、3年ほど前にフレミズ未設置の地域も含め、「すまいりぃ」という地域の枠を超えた広域のフレミズグループを立ち上げました。チラシを作って、幼稚園のママ友などにも呼び掛けたら、フレミズがない地域からも、新たにメンバーが参加してくれたんですよ。
日向寺 昨年8月には、茨城県JAフレッシュミズの集いで、「親子夏カレー作り」を行いました。会員以外の若い女性にも参加を呼び掛けたこともあって、すごく盛り上がりました。参加者のアンケートには「今度は子ども無しでゆっくり話したい」なんていう声も。地元に限らず、県全体を視野に入れたことで、より広く仲間の輪が広がったと思います。今年2月にも、同じ集いを開く予定です。
◆女性部とワンセット
瀬戸 フレミズをやっていて、女性部のみなさんとはどんな関係を築いていますか?
日向寺 うちはフレミズと女性部、両方でワンセットです。普段から、地域の伝承料理を教わる時は、女性部のお母さん方に講師をお願いしています。反対に、フレミズの活動で“キャラ弁”作りをしたときは、女性部のみなさんも、「孫に食べさせたいから教えて!」といって参加してくれました。ふだんから料理教室に必要な食材を手配してもらったり、料理の感想を言い合って次の活動に生かしたりしています。女性部あってのフレミズですね。
小川 昨年、JA全国女性協の都道府県女性組織会長・事務局会議や、中四国のブロック交流集会でも、「フレミズをどうやって盛り上げるか」がメインテーマでした。全国の会長さんたちからの期待を感じ、すごくうれしくて、思わず「うるっ」ときましたよ。お母さんたちの真心とエールに励まされるから、「頑張ろう」って思えるんですよ。
(写真)
日向寺恵美(茨城県JAフレッシュミズの会会長)
◆地域の活動も視野に
瀬戸 女性部以外、たとえば地域とはどうやって関わっているんですか?
小川 これはまだ計画中の話なんですけど、今後、JAの支店に来た人を対象に、窓口の待ち時間を利用してハンドマッサージをしたり、支店や地域に喜んでもらえるような活動をやってみたいなあと考えています。
最近、私が活動している姿を見て、高校1年の娘が、「ええな、私もフレミズに入りたいな」と言ってくれました。こうした高校生を対象に「ガールズ・キッチン」のようなものをつくりたいと思っています。もう一つ、小学校のころ、夏休みの「ちゃぐりんフェスタ」で毎年使っていた女性部のキッチンに再び集まることで、次の世代のフレミズづくりにつながったらいいなと思うんです。
日向寺 フレミズで料理教室を開くと、50?60代の男性から、「参加したい」と声をかけられることがあるんです。そんな時こそ、フレミズの出番。いま、男の料理教室の実現に向けて、動いているんですよ。
◆手作りの食こそ大切
瀬戸 フレミズを通じて、今後、取り組みたいことってありますか?
小川 子育てまっただ中の私たちフレミズにとって、やっぱり一番大切なのが「食」。農家で育つ子どもは幸せだって思うんです。農家の子どもたちは、採りたての野菜や、自分の家で育てた新米を食べ、親のお手伝いを通じて農作業を経験できます。
食の基本はお母さんの手づくり。これを食べることで、心が育ちます。そのありがたさを子どもに伝え、受け継いでもらいたいんです。そのためにも、私たちフレミズが一番重要な世代だと思うんですね。
日向寺 そうですね。食の安全・安心を、農家であり母親でもある私たちが伝えなきゃいけない。まずは私たちお母さんが行動することが大切だと思います。
瀬戸 すごいですね。お2人の話を聞いて、改めてフレミズっていいなあと思いました。私がJAのフレミズ大学に通ってもう7年目。そろそろ仲間と一緒に組織を立ち上げたいですね。
小川 瀬戸さんと同じ思いの人が、全国にはたくさんいると思うんです。そういう人とどんどんつながって、今以上にフレッシュミズの輪をひろげていきたいですね。一緒にがんばりましょう。
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