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JAの活動:JAグループ人づくり運動

【特集・JAグループ人づくり運動】活力ある職場づくりへ JA全中常務・伊藤澄一氏インタビュー2014年4月4日

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・支店長中心に地域が一体で
・情熱こそ第一、才能超える力
・各JAの個性を「基本方針」に
・高い問題意識マスター論文
・JAを中心に新たな繋がり

 協同組合組織であるJAは人の組織であり、人が財産といっても過言ではない。JAグループは、「活力ある職場づくり」や「戦略的中核人材育成」など「人づくり」に取り組んでいる。この十数年、JAは広域合併や支店の統廃合を進め、職員同士や組合員・地域の人とのコミュニケーション不足が嵩じた。この反省と、東日本大震災、TPP(環太平洋連携機構)への参加問題、異常気象、超高齢社会化、さらには規制改革会議などによるJA批判など、農業・農村の大きな環境変化に対し、JAの存在を高めることのできる人材の育成が喫緊の課題になっている。JA全中の伊藤澄一常務に、JAグループの人づくり運動の現状と課題について聞いた。

仕事を通じて人を育てる

◆支店長中心に地域が一体で

伊藤澄一氏(JA全中常務) 「JAグループ人づくり運動」は、JAの人材育成に着目した取り組みで、特に地域を預かる支店単位で、支店長を中心に地域選出の理事、多様な組合員組織、青年・女性部などとの一体感のもとで、あらためて支店の元気を取り戻し、職員のモチベーションを創造していこうというものです。もちろんこれはJAだけでできるものではなく、自治体や学校、病院、消防など地域の多様な組織・機関と、JAが取り組んでいる「くらしの活動」などを通じて、人的交流や連携によって実現するものです。

(写真)
伊藤澄一氏(JA全中常務)

 

◆情熱こそ第一、才能超える力

 20年近く前のことですが、静岡県のあるミカンJAの経営トップから、「ミカンの価格は天候と相場に左右されるが、信用・共済は目標を立てて取り組めば確かな収益が見込める。これがJAの経営だ。組合員・利用者の利益を考えて営農指導や渉外活動をすることだ。営農担当や渉外担当にはデータを示し、このことをはっきり説明しなければならない。JAと組合員・利用者を行き交う情報や信用・共済のお金は血液のようなもの。担当者は栄養である酸素を運ぶヘモグロビンのような役割を持っている。大切な情報と『思い』を運ぶ国際線のパイロットのようなもの。自分が飛んで行って組合員の話を聞く、そして課題の解決について一緒に考える。そのような情熱が大切なのだ。情熱は才能を乗り超える」と言われ、JAの経営者にとって、情熱を持つことの大切さを学びました。
 JAの職員はガラス張りのなかにいるようなものだと思っています。職員は地域社会の構成員として多様な顔を持っており、そのなかでJAは自らが成長する社会教育の場であり、地域の人材である職員を預かり、それを育てて地域に返す学校のような教育組織だと思っています。実際に優れた役職員は地域・組合員によって育てられています。JA職員は、JAにとっても地域にとっても共通の財産なのです。

 

◆各JAの個性を「基本方針」に

JA人づくり運動の加速化へ(昨年のJA人材育成プロフェッショナル研修より) JAグループは24年の第26回JA全国大会で「「『次代へつなぐ協同』を担うJA人づくり全国運動方針」、略称「JAグループ人づくりビジョン」を決議し、同年12月に具体的な取り組み方針を策定しました。この「ビジョン」は、各JAがそれぞれ持っている教育・研修部門の「教育研修指針」と、経営・人事部門の「人事労務指針」を一体化して、「人材育成基本方針」とするものです。
 これまで経営・人事部門は業績・評価を、教育・研修部門は能力アップを第一義としてきましたが、この2つを一体化することで、「仕事を通じて職員が成長する経営」を目指そうというものです。第26回JA全国大会で支店の活動強化を打ち出していますが、特にこれから支店長の役割が大きくなります。また女性の能力を生かすことも大事です。
 組合長などのトップは自慢の農産物づくりや地域の伝統、人物などについて、その思いや理念を語り、方針づくりをリードする。そして管理職・支店長など職員のミドル層に働きかけて方針の実現を促す。ミドル層は方針に基づいて職場での仕事を通じて職員の成長に付き合うという、それぞれの役割を担います。風土や農産物に違いがあるように、人材育成基本方針は各JAのそれぞれ個性あるものであって欲しいと考えています。
 JA全中では、「JAグループ人づくりビジョン」の説明会・研修会を3回開催し、これまでで43県195JA、約400人が参加しました。全JA参加をめざして26年度も取り組む考えです。現在、ほとんどの県域で県ビジョンの策定に取り組むこととしており、JAには人材育成基本方針の策定を勧めていますが、今後策定する予定と合せると、80%のJAが方針を策定する見込みです。
 人づくり運動の成否は県域での人づくりビジョン策定とJAにおけるこの人材育成基本方針の策定にかかっているといっても過言ではありません。JA大会決議の実践2年目である26年度は、同じく大会で決めた「地域を元気にするJAくらしの活動の展開」とともに、JA人づくり運動の加速化に取り組みます。

(写真)
JA人づくり運動の加速化へ(昨年のJA人材育成プロフェッショナル研修より)

 

◆高い問題意識 マスター論文

 一方、JA全中はこれまで、戦略型中核人材育成の一環として期間1年の「JA経営マスターコース」を15年続けています。25年度は女性3人を含む35人が、それぞれのJAへと巣立って行きました。入組10年前後で一定の実務経験を踏まえたマスター生の修了論文は、実に優れたものでした。26年度も女性3人が加わり35人のマスター生でスタートします。
 JAの総合事業の強味発揮、女性職員の登用策、小さな報償・イベントの提案、JAの社会貢献具体策、渉外体制の改善、支店拠点化のための強化策、オラが農協再生論、多様なCS(組合員・利用者満足)・ES(役職員満足)の提案、新TAC(たっく)提言など、修了論文のテーマ―を見ても、問題意識の高さが分かります。

 

◆JAを中心に新たな繋がり

 マスター生の論文は、全体に協同組合らしい職場の横のつながりを大切にして、仕事を通じていかに組合員や地域住民に満足、感動してもらうかということで共通していると感じました。こうしたJAの活動を通じて、新たに生まれる地域のつながりを「JAコミュニティ論」として展開した論文がありましが、まさにその通りだと思います。
 なお、JA全中では、3月に「教育審議会」を開きました。東京の町田市にあるJA全国教育センターの移転に伴い、JA全中の萬歳会長から、村上光雄委員長(JA全中副会長)にJAグループの教育事業と施設整備のあり方についての諮問がありました。7月の答申を目指し、新しい教育センターが引き続き「JAグループ人づくり運動」の拠点になるよう審議を進めていきたいと考えています。

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