JAの活動:創ろう食と農 地域とくらしを
【特集にあたって】農協が地域を創生する2014年10月22日
いま農村社会は高齢化・過疎化が急速に進行し、地域とくらしが危機にさらされ、人の命を支える食と農が脅かされている。
そうした中で、「戦後レジームからの脱却」をスローガンに掲げる安倍政権による農業、医療、労働、教育に対する岩盤規制を砕くドリルが轟音をあげている。
農業に対しては、「農業改革」と称して、農地の番人である農業委員会を改革して農地の流動化を促進、農業生産法人の「改革」の名の下に株式会社の農地取得の道を開こうとしている。
そのうえで、食と農、地域とくらしを守り育ててきた農業協同組合には、JA全中の解体、JA全農の株式会社化などを柱とする「JA改革」を突き付け、とりあえず単協と全国連を分断して系統組織を解体、最終的には企業の農業進出にとって阻害要因となるであろう総合農協そのものを潰すことを目論んでいるといえる。
さらに、ここにきて急に増田元総務相らによる「地方消滅論」が打ち出され、それを受けるように「地方創生」が声高に語られ、「農業の成長産業化」がいっそう叫ばれている。
◇ ◇
この「地方創生」は「特定の観光資源に焦点を当ててテーマパーク化」し、「地に足のついた広がりを持った小宇宙としての地域づくりからどんどん地域共同体を遠ざけていく」(浜矩子教授)ものだと推測することができ、地域そのものが危機的な状況に追いやられるという危惧を拭い去ることはできない。
集団自衛権を巡る「憲法解釈」などを含めて安倍政権のあり方は、戦後日本社会が築いてきた「さまざまな人々がそれぞれの生きる世界を創出していく社会ではなく、国の下に一元管理された『強い日本』」をめざす「大本営指導型の経済社会の構築が推進されている」(内山節氏)といえる。
「戦後レジームからの脱却」とは、昭和20年以前の社会、惨憺たる結末をむかえたあの時代へのリバイバルを目指しているとの疑いを深くする。
◇ ◇
果たしてこのような方向で、農村はもちろん都市も含めて私たち国民が安心して住み続けられる社会が創れるのだろうか。私たちの命を支える食と農を維持していくことはできるのだろうか。いまこそ「この国のかたち」をみんなで改めて考える必要があるのではないか。
本紙は考え、「食と農・地域とくらしを守るために」をテーマに特集することにした。
◇ ◇
この特集にあたって本紙は、真の意味での地域の創生つまり食と農、地域とくらしを守るためには、地域に根をおろし、農業を核とした地域経済はもとより地域にくらす人たちのライフライン・生活インフラを支えている農協の役割こそ必要不可欠だということを改めて確認していく。
「百姓たちが時代を創る」のテーマでは、山形在住の農民・菅野芳秀氏に聞いた。
「改めて考える この国のかたち」については、田代洋一教授、哲学者・内山節氏、政治評論家・森田実氏、浜矩子教授に寄稿いただくと同時に、三好幹二愛媛県西予市長に村田武愛媛大学教授が、歌手の加藤登紀子氏に梶井功東京農工大名誉教授がインタビューした。また、生協パルシステムの山本伸司理事長・濱田武士東京海洋大准教授・鈴木利徳氏に協同組合のあり方を中心に鼎談していただいた。
◇ ◇
さらに「地域創生の主役は農業協同組合」をテーマに、内橋克人氏にご寄稿いただくとともに、石田正昭三重大学招へい教授にも寄稿していただく。
農協の役割については、JA全中の冨士重夫専務に聞く。そして「農業協同組合が地域を創る」をテーマに、全国の6農協を現地取材し、さまざまな視点から、これまで、そしていま、地域で農協がどのような役割を果たしているのかを明らかにするとともに、今村奈良臣東大名誉教授に解説していただく。
◇ ◇
この特集を制作するなかで農協は「農業者のための共益性とみんなのための公共性の両方をバランスよく追求」することが「『この国のかたち』のなかにしかるべき位置を占める道である」(田代洋一教授)こと、他の協同組合とも連携し「協同の力で心豊かに 自然と共生する社会を」を創っていく大きな使命を担っていることを確信した。
◇
今特集の目次は以下の通り
(※随時掲載。掲載されたら、目次から記事にリンクします)。
【特集 食と農、地域と暮らしを守るために】
○改めて考える この国のかたち
・百姓たちが時代を創る 山形置賜自給圏の挑戦(2014.10.22)
・百姓たちが時代を創る 茨城のJA青年部から―仲間とスクラムで地域農業守る(2014.11.14)
・【寄稿】農協がコミュニティの再構築を 田代洋一・大妻女子大学教授(2014.10.23)
・【寄稿】調和・協調による協同組合が支える農業を 森田実・評論家、東日本国際大学客員教授(2014.10.30)
・【寄稿】求められている協同組合精神の社会化 哲学者・内山節(2014.10.29)
・【インタビュー】歌手・加藤登紀子さん 「生きるとは土を耕すこと」(2014.10.27)
・【インタビュー】地方創生で地域は疲弊、「富」は中央が吸い取り 浜矩子・同志社大学大学院教授(2014.10.24)
・【鼎談】協同の力で心豊かに、自然と共生する社会を 山本伸司氏・濱田武士氏・鈴木利徳氏(2014.10.28)
・【対談】多様性を生かし農s業振興 三好幹二・愛媛県西予市長、村田武・愛媛大学特任教授(2014.10.31)
○地域創生の主役は農業協同組合
・【寄稿】「F・E・C」自給圏自立を 内橋克人・経済評論家(2014.11.07)
・【寄稿】 中央会解体はJA潰し JAは何を主張すべきか 石田正昭・三重大学招へい教授(2014.11.07)
・【インタビュー】地域の創生と農業協同組合の役割 冨士重夫・JA全中専務(2014.11.04)
・【JA現地ルポ】人づくり 生きがいづくり JAはだの(神奈川県)(2014.11.06)
・【JA現地ルポ】ネットワークづくりで6次産業化 JAあしきた(熊本県)(2014.11.05)
・【JA現地ルポ】集落営農で守る米づくり JAグリーン近江(滋賀県)(2014.11.12)
・【JA現地ルポ】地域を支えた作る力、売る力 JA富里市(千葉県)(2014.11.07)
・【JA現地ルポ】医療・介護も協同の力で JA信州うえだ(長野県)(2014.11.10)
・【寄稿】農業協同組合が地域を造る 今村奈良臣・東大名誉教授 (2014.11.13)
・【JA現地ルポ】河川源流を守る JA愛知東(愛知県)(2014.11.11)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(138)-改正食料・農業・農村基本法(24)-2025年4月19日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(55)【防除学習帖】第294回2025年4月19日
-
農薬の正しい使い方(28)【今さら聞けない営農情報】第294回2025年4月19日
-
若者たちのスタートアップ農園 "The Circle(ザ・サークル)"【イタリア通信】2025年4月19日
-
【特殊報】コムギ縞萎縮病 県内で数十年ぶりに確認 愛知県2025年4月18日
-
3月の米相対取引価格2万5876円 備蓄米放出で前月比609円下がる 小売価格への反映どこまで2025年4月18日
-
地方卸にも備蓄米届くよう 備蓄米販売ルール改定 農水省2025年4月18日
-
主食用МA米の拡大国産米に影響 閣議了解と整合せず 江藤農相2025年4月18日
-
米産業のイノベーション競う 石川の「ひゃくまん穀」、秋田の「サキホコレ」もPR お米未来展2025年4月18日
-
「5%の賃上げ」広がりどこまで 2025年春闘〝後半戦〟へ 農産物価格にも影響か2025年4月18日
-
(431)不安定化の波及効果【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月18日
-
JA全農えひめ 直販ショップで「えひめ100みかんいよかん混合」などの飲料や柑橘、「アスパラ」など販売2025年4月18日
-
商品の力で産地応援 「ニッポンエール」詰合せ JA全農2025年4月18日
-
JA共済アプリの新機能「かぞく共有」の提供を開始 もしもにそなえて家族に契約情報を共有できる JA共済連2025年4月18日
-
地元産小粒大豆を原料に 直営工場で風味豊かな「やさと納豆」生産 JAやさと2025年4月18日
-
冬に咲く可憐な「啓翁桜」 日本一の産地から JAやまがた2025年4月18日
-
農林中金が使⽤するメールシステムに不正アクセス 第三者によるサイバー攻撃2025年4月18日
-
農水省「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト事業」23日まで申請受付 船井総研2025年4月18日
-
日本初のバイオ炭カンファレンス「GLOBAL BIOCHAR EXCHANGE 2025」に協賛 兼松2025年4月18日
-
森林価値の最大化に貢献 ISFCに加盟 日本製紙2025年4月18日