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JAの活動:変革の時代 地方創生の主役は農業協同組合

健康第一の農村づくりへ 高山拓郎・JA松本ハイランド(長野県)専務2015年1月16日

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・高齢化に危機感
・モデル組合で支援
・女性の参画前面に
・家族に事業は一つ

 長野県のJA松本ハイランドは、早くから高齢社会を見通し、施設介護の体制を整備・充実してきた。これが同JAの地域におけるプレゼンスを高め、幅広い地域活動につながっている。特に農家組合、女性参画センターの活動は、地域経済、生活の支えとして重要な役目を果たしている。同JAの高山拓郎専務に聞いた。

高齢化見越して施設介護

 

――地域におけるJAの役割は、この10年、20年、どのような変化がありましたか。

高山拓郎専務 高山 大きく変わりましたね。生産調整とか米とか、新農基法の前までは農家の層もまだ厚かったので、農協は農業のことをしっかりやっていれば、他の事業も自然とできました。しかし、そのころから急激に高齢化が進み、危機感を感じるようになりました。その危機感からJA女性部の助け合い組織が生まれ、高齢者介護などの取り組みが出てきました。このように地域社会が大きく変わり、JAは高齢化社会に対していかにすべきか。悩みながら今に至っています。

(写真)
高山拓郎専務

 

◆高齢化に危機感

子どもたちに縄ないを教える農家組合 JAは今日、農業だけでなく、地域を巻き込んだ地域協同組合的な役割が一層求められているように思います。この点でJA松本ハイランドの立ち位置は明確です。平成4年に今のJAが誕生したのですが、農村が大きく変化し始めたころとタイミングが合っています。それまでの行け行けどんどんではなく、もう一度足元をしっかり見つめ、経済的に弱い者同士が助け合って、よりよい明日をつくるため、なんとかしなければと思っていたころだったのです。
 JAでは、早くから施設介護の重要さを認識していました。平成7年に厚生連と連携し最初の特別養護老人ホームを設立し、同13年にはJA独自の社会福祉法人・JA松本ハイランドを立ち上げ、デイサービスや訪問・看護・居宅介護などを備えた特養、続いてユニット型の地域密着型施設の建設などを進めてきました。
 背景には長い間、松本市や医師会など関係団体と健康管理推進会議を組織し、健康に暮らせる地域社会づくりに努めてきた歴史があります。松本地区健康管理推進会議による「健康を守る大会」は43回を数えています。これは協同組合としての重要な使命であり、積極的に取り組んで成果を上げてきたという自負があります。

(写真)
子どもたちに縄ないを教える農家組合

 

◆モデル組合で支援

――農家組合の活動に力を入れていますが、どのように位置付けていますか。

 高山 JAの基礎組織は農家組合です。協同組合は組合員が顔を会わせ、心を通じ合わせ、何でも語り合えることが大事です。従ってその仕組みをきちんとつくって担保しておくことが重要です。それが農家組合であり、その中から、自分の経営や集落営農、地域農業をどうするかなどの話が出てくるのです。
 農家組合の活動には、10年ほど前からモデル農家組合を選んで支援しています。どのような活動をするかは自由ですが、JAの施設ツアーやそばの栽培・そば打ちなど、地域に呼び掛け、特に若い人にJAを意識してもらうことが大切だと思っています。3年をくくりとして、申請は何回でもできます。一巡したらまた繰り返しです。JAは、生産部会などの組織が縦軸で、農家組合組織は横軸に相当します。縦糸だけでは織物は紡げません。

 

◆女性の参画前面に

――規制改革会議は、JAは農業生産だけやっていればよいと言っていますが。

 高山 本来、農村社会は家族農業をもとに形成されており、家族は孤立しては生活できないため「結」(ゆい)の精神が醸成されたのだと思います。それが地域社会です。つまり家族農業は、家族と社会の横串を刺す役割を果たしているのです。そう考えると、地域社会を農業だけで語ることはできません。専業農家、兼業農家の区別もないのです。
 農業は単に農業生産という機能を果たすのではなく農村社会そのものです。それを壊したら日本が壊れてしまいます。規制改革会議は、JAは農業に特化した事業だをやっていればよいと言っているようですが、農村社会のことがよく分かっていないのではないでしょうか。
 都市住民の大切な水を供給しているのは農村です。食料も同じ。都市の水害が増えたのは、山林が維持管理されず、荒れ果てているためです。その大事な役割を持つ農村の人や土地を、18世紀のイギリスのように、都市が、2次、3次産業によって囲い込んでいるのが今の日本だと思います。

――JA活動には女性の力が欠かせません。JA松本ハイランドには女性参画センターがあります。そのような機能を持っているのですか。

美味しさ届け隊で農産物をPRするJA職員 高山 女性が地域を動かしているのは、いまや歴然をした事実です。これをJA活動のなかで、もっと前面に出して?見える化?したいという思いで設けたのが女性参画センターです。各女性組織の代表で構成し、非常勤の女性理事を委員長とする運営協議会が運営に当たり、セミナーや食農のイベントなど、さまざまな活動を企画・実行します。
 大きなイベントの一つに、毎年8月の「よい食パク博」があります。乳牛の乳搾りやおにぎりバイキングなど、親子で参加する体験型イベントです。「ちゃぐりんおもしろ体験隊」も好評です。次・次々世代の地域の人々にJAを知ってもらうよい機会です。
 さらに女性参画センターでは消費宣伝「おいしさ届け隊」の活動なども企画しています。これは小売の現場で、自分たちが生産した農産物をPRする宣伝隊です。県内外の量販店等の店頭でおいしい食べ方などを提案することで、消費者と接するよい機会です。これにはJAの女性職員も参加します。女性から「女性参画センターがあってよかったね」と言われるように、さらに充実した活動を期待しています。
 ただ、参画センターの活動は、基本は組合員のみなさんを対象としたものです。大きなイベントには非組合員の方も誘いますが、組合員加入の運動をしているなかで、メリハリをつける必要があると思うからです。非組合員には年6回、情報誌を全面広告の形で、地元の新聞に出しています。そこでは協同組合の役割、地元農産物の宣伝、青年・女性部組織の活動、農家組合の役割などを紹介しています。

(写真)
美味しさ届け隊で農産物をPRするJA職員

 

◆家族に事業は一つ

――規制改革会議は、JAは准組合員や非組合員を外し、農家だけの職能組合であるべきだと言っていますが。

 高山 本当に職能組合にされたくなかったら、JAは、もっと事業の質を高める必要があると思います。
 特に信用事業は預金者保護の観点から、内部のリスクコントロールがきちんとできているのかどうか。これについては、世間の第三者にどのように評価されているかが問題です。それが農林中金などによるJAの代理店化の話につながっているのではないでしょうか。共済事業も同じで、さらに自らのクオリティアップが必要です。営農経済事業も赤字でよいというものではないと思います。
 職員には「今日より、よい明日を」ということで、いかにJAを地域でプレゼンスを高めるかを考えて仕事をするようにと常に話しています。総合JAの「総合」は、複数の事業をやっているからではなく、各事業はそれぞれの家族の暮らしの中では一つだという意味です。それには職員も、それぞれ仕事を共有することが求められます。それは営農から生活、信用など、JA事業のすべての面で専門家になることです。そう考えると職能組合化などありえません。

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