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【インタビュー】女性の元気が地域の力 伊藤茂・JA松本ハイランド組合長2015年1月23日

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聞き手:今村奈良臣・東大名誉教授
・女性部交流からJA間提携へ
・女性部員と若手金融職員をチームに
・「人づくり」も重視して

 女性理事の登用をはじめJAへの積極的な女性参画でJAの事業・運動に新たな時代を開こうとしているJA松本ハイランド。「女性の元気が地域の力」と語る伊藤茂組合長に聞いた。

◆女性部交流からJA間提携へ

伊藤茂・JA松本ハイランド組合長 今村 女性参画センターが設置されてから今年で7年になりますね。どう評価されていますか。
 伊藤 このセンターを立ち上げてから、女性の意見を反映させるといったことは“当たり前の世界”になってきたという感じがします。女性参画ということを改めて取り上げなくても、実際にみなさんそれぞれの分野で活動していただいていますから。やはり女性のみなさんは太陽だと話しています。家庭でも女性が元気であれば家中が明るくなります。家庭だけではなくこれは組織でも同じだと思います。
 今村 最近の具体的な成果にはどんなことがありますか。
 伊藤 宮城県のJAいしのまきと平成24年に姉妹協定を結びました。自然災害など不測の事態には協同の理念で助け合おうというものですが、これは女性部のみなさんの交流がきっかけになったものです。ちょうど双方で元気を出そうと“スコップ三味線”の取り組みを始めたときに、復興支援での交流活動がきっかけになりました。そのなかで組合長どうしも話をするようになって姉妹協定に至ったわけです。
 今村 女性部の交流が先行してJA間提携が実現したということですね。
 伊藤 そうです。ですからごく自然体でいい関係が結べたと思っています。姉妹協定締結のセレモニーでも、結婚の縁組みみたいなもので、素晴らしい相手に恵まれたとあいさつしました。実際に大変うれしかったのは、私たちの地域は昨年、深刻な雪害や雹害があり1000棟以上のハウスが倒壊しましたが、その都度、お見舞いや人的な支援に来ていただいたことです。私たちも東北の復興支援を続けているなど、交流が順調に定着しています。生産部会などにもつながりを広げ営農面でも交流ができればいいと思っています。

(写真)
伊藤茂・JA松本ハイランド組合長

 

◆女性部員と若手金融職員をチームに

 今村 JAの女性職員が参加する活動も生まれたと聞いていますが。
 伊藤 「美味しさとどけ隊」による農産物販促活動です。これは女性参画センターのみなさんから店舗での買い物は女性が中心なので女性の立場で農業について広く発信するのが大事ではないかという提案がありました。
 一方で私としては地元の農業や農産物について若い職員が勉強することが必要だと思っていました。非農家出身の職員も増えていますから。JA管内にどんな農産物があって、他からどんな評価をいただいているかを知るべきだと考え金融共済の若手女性職員にも担当してもらいたいと考えていました。
 そこに女性参画センターのみなさんからも自分たちも店頭に立つという話でしたから、それまでの販売員を雇っての販促でなく自分、たちで作った農産物を自分たちで販売しようということにしたわけです。
 この「美味しさとどけ隊」の活動を見ていると、“和えもの”を思い浮かべます。経験豊富な農業女性である女性参画センターのみなさんと、若い女性職員が、一つの器のなかで混ざり合って大変いい味になっているなと思います。
 チームワークの理想はこの和えもののなかにあるような気がします。販促活動にあたっては、地元農産物の調理まで含めて豊富な知識のある女性のみなさんと若い女性職員がセットになるようにチームを組んで、相互理解と協調を大切にしています。若い女性職員からすれば思いがけない取り合わせになったと思いますね。

 

◆「人づくり」も重視して

 今村 全国で初めて若妻大学を開設するなど、JA松本ハイランドは昔から組合員教育に力を入れていますが、今年度から新しく「夢あわせ大学」というものをつくられたそうですね。これはどういう狙いがあるのでしょうか。
 伊藤 農協の財産とは人だと思います。それも組合員のみなさんだけでなく職員もそうです。そこで今まではどちらかといえば組合員のみなさん向けが主体だったわけですが、これまでの若妻大学やはつらつ大学などをまとめ、さらに職員セミナーなども加えて一本にしたのが「JA松本ハイランド夢あわせ大学(夢大)」です。今までの若妻大学などは夢大のなかの学部として位置づけ、夢あわせ大学全体講座も開くなど総合的な運営を考えていきます。
 そのなかに新しく「協同活動みらい塾」をつくりました。これは組合員のための塾で将来の農協、地域のリーダーを育てる目的でスタートしました。若いみなさんにしっかりと農協のこと、地域のことをまずは知ってもらいたいということです。
 農業を取り巻く環境が厳しさを増すなかで、組合員自身が協同組合の運営者であるという意識が希薄になりがちです。職員も若手を中心に農業を知らない世代も増えてきている。人づくりはいっそう重要になります。
 今村 全国に向けて発信したいことは?
 伊藤 私の好きな言葉は、人生に特効薬はない、一つひとつの積み重ねの上にしか花も実もつかない、です。地道に取り組むしかないと思います。
 そのなかで訴えていきたいのは「社会的共通資本としての農の営み」です。農業・農村が国民の健全な食生活の確保とともに、国土と環境保全、美しい景観の形成といった大きな役割を担っています。そのことがだんだん忘れられているのではないか。そこを力説していきたいと思います。
 今村 まさに地方創生の基本的な視点です。そこに女性の力が非常に重要な役割を果たしているということだと思います。


インタビューを終えて


 女性の多彩なネットワークが地方創生の源泉である――。1面に掲載されている女性群像のみなさんと話していて痛感した。「大小相補」そして「老中青婦」の結合による地域農業の推進。北アルプス、美ヶ原に囲まれた美しい松本盆地の農村景観の創造・環境の保全、さらに、「地産・地消」、「地産・地食」の原点から「地産・都消」、「地産・都商」への農業6次産業化の推進、高齢化の進む農村での多彩な介護システムの構築など、眼を見張る活動を全国に拡げてもらいたい。(今村奈良臣)

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