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JAの活動:第27回JA全国大会特集 今、農業協同組合がめざすこと

【米卸からエール・インタビュー】(株)神明ホールディングス・藤尾代表取締役社長 マーケットインこそ 米の生産力を高める 2015年9月29日

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世界に目を向け輸出に注力

 米穀取扱数量約50万tの最大手米卸の神明グループは、米飯事業、外食事業、さらに農業事業など関連部門を幅広く展開している。企業理念には、米を通じて日本の水田、文化を守ることなどを掲げている。若い人たちに農業の魅力を知ってもらい生産の現場に入ってもらうためにも生産と販売の連携が必要だと強調する。

◆消費拡大が大きな課題

藤尾益雄代表取締役社長--最近の米価、米の生産現場についてどうお考えですか。

 昨年の米価下落は流通にとっても決していいことだとは思っていません。安くなったからといって米の消費量が伸びるわけではありませんし、外食・中食でも結局は、ほかの食材が値上がりした分を米で調整するというかたちですから、米の使用量が増えたわけではありません。やはり価格には適正な価格があると思います。
 今の農業の実態を考えると不安なのは、高齢化の進行と稲作就業者数の減少です。このままでは生産力が衰えてくるのではないか。今年は生産調整に取り組んだ結果として需給バランスが逆転したということですが、そのうちこれが当たり前になってくるのではないか。つまり、絶えず足りない状態です。日本の食料危機にもつながりかねず、日本は国力すらも低下させてしまうということで、もう少し消費拡大に向けていろいろな手を打っていくことが大事ではないか。若い人たちにはいかにしてごはんをおいしく手軽に食べてもらえるかを考えていく。さらにやはり輸出が大事だと思います。とにかく国内外を含めて消費拡大に取り組んでいくべきではないかと思います。

(写真)9月8日東京都 (株)神明ホールディングス本部にて


◆増える世界の米生産

--国産米の消費拡大には輸出が重要になると?

 TPPがどうなるかは分かりませんが、私たちはTPPを1つのチャンスとして考えてほしいと思っています。というのもいちばん問題にしたいのは世界の米のマーケットです。世界の米生産量は1992年には3億5000万tだったのが、現状は4億8000万tと1億3000万tも増えました。3割増です。日本はどうでしょうか。まったく逆で92年には1050万tの生産量だったのが850万tと200万tも減っています。2割の減産です。
 そこを問題として考えるべきだと思います。私たちは生産者やJAグループも一緒になってグローバルに闘える農業をつくっていこう、ということです。そのときには多収穫米の生産振興にももっと取り組んで1俵あたりの価格ではなく1反あたりの、面積あたりの所得として考えようということです。
 海外での米販売を考えるとき現地の米価の1.5倍ぐらいまでであれば、十分に闘えると思っています。現状は2倍、3倍、あるいはそれ以上ですから無理がありますが、われわれが努力をすればやっていけると思います。日本食レストランも2013年の5万5000店が今年の調査では8万8650店に増えています。
 もう頭を切り替えて、4億8000万tもの米のマーケットがあるわけですから、私たちは内外ともに販売していける道を考えていくべきだと思います。
 そのときに多収穫米というのはどちらかといえば国内への輸入米対策として生産していくのではないかと思っています。というのも外国産米が大量に輸入されるようになったとしても家庭用で買う人は少ないと思うからです。どちらかといえば外食に使われるのではないか。それも丼やカレーライスなど、寿司ではないと思います。今も寿司店の取り引き先からは絶対に国産米を使ってくれと言われています。
 だからむしろ国内産地は寿司に合う米を作ってもらうことなども重要になると思いますし、それは特別な米ではなく用途にあった米をしっかりと考えて作ってほしいということです。

◆米輸出は文化の輸出

--神明グループとしても元気寿司との取り組みを展開していますがその狙いは?

 元気寿司は国内だけでなく海外にも積極的に出店し130店舗以上になってきました。毎年20店舗ほどのペースで出していて、イギリス、オーストラリア、ミャンマーも出店計画に入りました。
 これになぜ力を入れるかといえば、私たちは日本の伝統である寿司は日本の文化でありたいからです。本当のおいしい寿司というものを広めないといけません。そこにはやはり日本の米が必要です。
 ですから、われわれが寿司店の展開を手がけている現場を見てもらえれば、若い生産者の方にももっと意欲を持ってもらえると思います。米づくりを続けるかどうかを迷っていらっしゃるのであれば、われわれが日本の米でどう現場で事業を展開しているか知ってもらえば賛同してもらえると思います。
 これまでは生産調整をするために、飼料用米をつくればこれだけの助成金を出す、という政策をやってきましたが、これからの若い人たちはそれでいいのかと思います。国の懐事情が変われば助成金などどうなるか分かりません。
 むしろ輸出も含めた販売、流通の部分にもう少し予算を使うべきではないか。それによって米の消費が拡大される、拡大されれば生産者は安心して米をもっとつくれる、という仕組みに変えていかなければならないと思います。農業できちんと所得が得られて重労働が軽減されることは大事ですが、さらに大事なことは作ったものがきちんと売れるということです。それも適正な価格で。こういう仕組みを作らないと若い人たちが来ないのではないかと思います。

--農業生産の現場にも子会社を通じて関わりを強めていく方針でしょうか。

 生産者の方は農産物を作ることのプロですね。われわれはマーケットインの発想に立ったビジネスを追求しています。ここはお互いが役割分担をしっかりして生産者が一生懸命につくったものをわれわれは商品にして売るということが大事ではないかと思っています。われわれはその価値をきちんと引き出せるような商品にしていかないといけません。おにぎり一つでも本当においしいおにぎりを作る、と。
 一方で、当社は神戸の量販店内に売り場を持って兵庫県産の野菜販売をする事業を始めました。とくにカラフルな野菜を扱っていて非常に好評です。売り場での見せ方、地産地消は非常に大事だと改めて思っています。
 この事業は米を扱うために生産者を回っているなかで、当然、生産者は野菜も作っているわけですから、そこで何かお手伝いができないかということから始めました。売り場での直売だけでなく量販店などへの卸もやっています。今のところ、生産法人との取り引きが多いですね。米の事業でインフラを持っていますから、それに野菜も乗せていこうということです。野菜については生産者から買い取ってわれわれが販売する直売所を早期につくりたいと考えています。それによってより安心して生産してもらえるのではないかと思います。
 一部では農業生産部門も手がけていますが、どちらかといえばわれわれができることは生産者にきちんとつくってもらい、それをしっかり集めて販売するということだと考えています。なかにはわれわれも出資して農業生産法人をつくることもありますが、その場合も販売等のマネージメントで参画するということです。どちらにしてもわれわれは生産現場の活性化、若い人にもっと農業に入ってきてもらいたい、そこに役に立ちたいということです。

◆理念の実現に若い力活用

--外食との提携、野菜のインショップ販売、さらに農業生産部門の展開などこれまでの米卸の業態から大きく変化させてきました。社内では何を強調していますか。

 今までのビジネスモデルを変えるのは確かに大変なことです。社員の意識から変えていかなければなりません。しかし、私がいつも言うのはわれわれの志が大事なんだということです。企業理念は私が社長に就任したときにつくりました。
 それは「私たちはお米を通じて、素晴らしい日本の水田、文化を守り、おいしさと幸せを創造して、人々の明るい食生活に貢献します」です。これを実現するにはどうしていくべきかを考えよう、ということです。そのためには、まずは動こう、です。やはり本当の解決方法、回答は現場にある。だからそこに向かって動こうということを大事にしています。
 そして若い人にチャレンジさせる。多少失敗してもいいからとりあえずやってみて、と絶えず若い人たちにチャレンジさせるということが大事かなと思います。
 われわれ米卸も食管制度があってこれに守られてきました。ぬるま湯に浸かっていたわけです。それが食管制度がなくなってもう何にも守られていない。われわれ自らチャレンジしていくしかない。そこが大事だと思います。農協も民間ですから同じではないかと思います。自らビジネスをしていくしかない。
 ただ、米についていえば国は、これからこそ、きちんと指標を出すべきだと思います。生産調整を見直しするということですが、やはりどれだけ作るのか、そのうち主食用や飼料用はどれだけか、さらに海外にはこれだけ輸出するといった指針を出さないと生産者は不安だと思います。食料安全保障の点からも日本全体の話は国がしっかり示すべきだと思います。

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