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JAの活動:第27回JA全国大会特集 今、農業協同組合がめざすこと

【JA全国連トップに聞く】JA全農経営管理委員会・中野 吉實会長 農業収入増大に全力2015年10月5日

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聞き手:梶井功・東京農工大名誉教授

 第27回JA全国大会のテーマである「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」を、どのように支援していくか。JA組織のこれから進むべき方向を含め、JAグループ全国機関のトップに大会に向けての抱負を聞いた。

◆マーケットインで

 ――JA全国大会に向け、全農はどのような役割を果たしますか。

JA全農経営管理委員会・中野 吉實会長 中野 農協法の改正後、初めての大会であり、大会ではJAグループとしての考えをきちんと示す必要があると思っている。
 全農は最も営農と直結しているので、それだけ責任が重いと感じている。全農が特に力を入れていく方向は、(1)お客様が必要としているものを生産するというマーケットインの考え方に事業を変えていくこと、(2)生産から販売までのコストをトコトン下げていくこと、(3)規模拡大した農業者など多様化した農業者ニーズに柔軟に対応していくことだ。一方、政省令はこれから決まるが、農協法改正で、これまで色々言われてきたことが、本当に実現できるのかどうか不安をもっている。政省令が出たとき、どう対応するかという課題があると思っている。JA理事の定数の過半数は認定農業者等でなければならないと言っても、認定農業者がまったくいないところだってある。そのようなところは経過措置をとるとか、認定農業者でなくても認めるなどの対応が必要になる。


 ――JAはこれからどうなるか。特に営農に従事している農家は心配しています。

 中野 経済事業を展開している全農としてやるべきことははっきりしている。組合員のみなさんは全農の事業をよく理解していただき、期待されていることをきちんとやる。これはこれまでもこれからも変わらない。
 戦後の農協は、国民の食料確保や農村生活の向上など、協同組合としての役割をきちんと果たしてきた。
 全農も商系の同業他社との厳しい競争の中で、事業を安定させ、組合員の信頼も得たと自負している。これからも信頼され、期待もされる全農をめざす。
 こういうときこそ政策を安定させ、農家が本当に安心して営農できるようにしなければならない。政策にもそれを願いたい。


  ――TPPに参加すると、国内農業に与える影響が大きいと思うが。

 中野 なぜ政府は、自ら農産物を犠牲にして交渉を急ごうとしているのか理解できない。TPP交渉における国会決議を踏まえ、国益を守ってほしい。また、もっと日本の農産物を海外で販売できるようにしてほしい。牛肉の対米貿易は、アメリカからは既に19万トン程度(2014年度)も輸入しているが、日本から低関税で輸出できるのは200トンまでとなっているのが実態だ。


 ――農協改革で全農の経済事業、株式会社化論も出てきましたが。

 中野 海外では資金調達の必要性から農協組織を株式会社にしたところがあるが、カーギルなどの世界的な企業に買収され、農家の組織でなくなった組織もある。
 全農の株式会社化については、全農は農業協同組合として自主的な組織であるため、組織形態の重大な変更は、法的措置内容の如何にかかわらず、会員総代の合意形成が前提となる。
 世界的にみても、海外との取引や国内への飼料・肥料の供給について、全農ほどうまく運営している組織はほかにないと自負している。それだけに全農が株式会社になると、世界的な穀物メジャー等から狙われることも否定できない。

◆生産コスト削減へ

 ――農業所得倍増の中で、資材など生産コストをいかに抑えるか。全農には頑張ってもらわないと。

 中野 全農はこれまでも色々なところで、さまざまな商系と競争する中で、組合員の要望に応えてきた。だがこれからは必ず生産コストの問題が出て、どう対応するかが求められるだろう。耕種部門においては、トータルコスト低減に向けて、(1)物財費の削減、(2)労働費の低減、(3)生産性向上にかかる個別具体策についてJAや生産者と連携してすすめる。それを念頭において、新しい事業のやり方を検討しているところだ。
 生産における飼料用米対策もそのひとつで、家畜に与えたときの飼料効率や栄養価、肉質などを研究している。また生産だけでなく、販売では子会社の機能を充実させ、流通コストの削減にも努めている。


 ――飼料用米は投資も大きく、長期の政策でないと判断できない。気になるのは、日本の飼料穀物の輸入が減ると、輸出国のアメリカからクレームがくるのでは。これで行くのだという国の長期的政策が必要なのではないでしょうか。

 中野 全農は、今年度60万トンの飼料用米確保を提案し、農水省の了解も得て進めた。しかし今、主食用米需給改善対策の数量がやっと50万トン達成したところだ。農家が乗ってこないのは、来年以降も継続するのかという不安があるからだ。
 規模の大きい農家には、ここまで米価が下がっても、飼料米は不安だから主食米を作るというのを説得して転換してもらったところもある。政策を法律化すれば、農家は生産力を維持しながら、作付け転換できるのだが。
 JAグループの政策提案は、従来どおり、全中を中心に行わなければならない。一般社団法人になってもそれは変わらず、今まで以上に全中のリーダーシップが求められる。


 ――どのような農家を担い手と考えていますか。

 中野 政府の考えは法人や集落営農などによる規模拡大だが、われわれは小規模経営を切り捨てることはできない。小規模農家の経営をカバーしながら、大規模経営には別の対応していく。そのことは組合員は理解している。
 すべての組合員に応じた、納得できるサービスをきちんと実行していくことが全農の役割だ。それをやらないとJAの存在理由が問われかねない。


 ――今後JA全農の事業を一般国民にどのように発信していきますか。

 中野 全農は経済事業を担っておりますので、Aコープ店舗に地元農産物の直売所を併設したり、海外も含めて各地にレストランを開店したり、JAタウンのようなネット販売の機会を拡大したり、様々な事業を通じて一般の方々との絆を太くしていきたいと思う。
 また、「お米のミルク」やロンドンに開店するレストランのように、見える形で具体的な情報を発信していきたいし、卓球の石川佳純選手が頑張ってくれていますのでその応援も含めて国民全体の皆様に全農をよく知っていただく事にも力を入れていく。
 そのためには、従来の新聞やテレビ・ラジオ等をつうじた情報発信もするが、全農の事業に理解を示してくださる方々と直接意見交換できるような、インターネットなどを活用した新たな仕組みをつくり、ひとりでも多くの方々と仲間の絆を強められるよう頑張っていく。

(写真)JA全農経営管理委員会・中野 吉實会長

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