JAの活動:第27回JA全国大会特集 今、農業協同組合がめざすこと
【JA全国連トップに聞く】JA共済連 経営管理委員会・市村幸太郎会長 安心・満足を地域に2015年10月6日
聞き手:梶井功・東京農工大教授
第27回JA全国大会のテーマである「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」に、どのように支援していくか。JA組織のこれから進むべき方向を含め、JAグループ全国機関のトップに大会に向けての抱負を聞いた。
◆生活と暮らしを守る
――農協法が改正されました。どのようにみますか。
市村 政省令の改正はこれからだが、JAグループは10月のJA全国大会の議案で自己改革を明確に打ち出しており、全中を中心に改革を進めていくことになる。全中は全国の組合員、JAにとって精神的な支柱である。組織の形がどのようになっても、盛り立てていかなければならない。
全国には地方の信用金庫や地銀に負けない力を持つJAもたくさんあるが、それぞれのJAが地域における農業協同組合として理想と使命感を持って運営している。それらの全体をリードするのが全中の役割で、JAグループとして果たすべき役割は大きい。
政府の「農協改革」では准組合員の利用が問題になっているが、農協は戦後、職能組合からスタートし、地域組合の色合いをあわせ持ちながら事業展開してきた。だが、これは戦後経済の成長や農村社会の構造変化などにより、農外収入で生計を立てる農家が増えた結果、准組合員に姿を変えてきたのである。
その間、農協職員はそれぞれの地域において協同組合運動に一生懸命取り組み、正准組合員を含めた地域の皆様から理解と信頼を得るまでに至ったものと理解している。
――全国大会の議案の中で、JA共済連にはどのような役割が求められていますか。
市村 農業協同組合が理念とする相互扶助を事業活動の原点に、組合員・利用者の地域における生活と暮らしを安心と満足で守り続けることが使命。これまで以上に地域の特性を踏まえ、きめ細やかで高品質のサービスを提供し、相互扶助に基づいた地域社会づくりに貢献していく必要がある。
そのためには、組合員世帯の全戸訪問活動である「3Q訪問活動」を基軸に組合員・利用者の目線で世帯全体に安心を提供するとともに「エリア戦略」に基づく各地域の特性や保障ニーズに合わせた推進活動を展開して、安心の輪を広げていく。
また、これまでもさまざまな地域貢献活動に取り組んできたが、さらに地域の生活環境充実のため、生活支援や防災活動など、新たな地域貢献活動にも力を入れる方針だ。
――大会議案では創造的な自己改革が唱えられているが、JAが、今やるべきことは何でしょうか。
市村 それぞれのJAにおいて、組合員の価値を最大化するバリューチェーン構築の考え方が必要だと思う。JAは信用、共済などを含めた総合事業であり、大会議案にある営農・経済事業の強化は、全ての事業を通じたサポートの強化により農業生産の拡大から販売までそれぞれの段階で対応力を高め、最大限の価値を組合員にもたらすことだと考えている。
また、農協改革では、単位JAが営農・経済事業にシフトできるような環境を整えることが必要であり、そのためには、共済や信用の事務を効率化していくことが必要である。
共済事業は組合員・利用者の生活の安全と満足のために役立つ仕組みをいかに開発するかが大きな役割だが、農業リスク分野への保障提供について、共栄火災と連携し、JA共済グループとして、今後の農業構造の変化に対応するため、「担い手経営体」、「大型化・法人化する農業者」、「6次産業化する農業者」を取り巻くリスクを包括的に保障する仕組みの開発に向けた検討を進めていく。
◆現場の体験を事業に
――協同組合で働く職員にはどのようなことが求められますか。
市村 少子高齢化・過疎化が進む地域社会の中で、JAの存在感を高めることが役職員の役割。そのためには、日々の仕事で、組合員・利用者の安心と満足を最大限に高めるという意識と責任を忘れていないか、役職員には常に自問してほしい。その気持ちを強く持って仕事をすると、JAの事業はもっと伸びる余地がある。
JAの職員は、農家がどのような苦しみや楽しみを持って暮らしているか。理屈ではなく肌感覚で知ってほしい。地元のJAでは、全支店に「ふれあい農場」を設けて、支店長を先頭に職員が農作業をしている。
そこで農業になじみの無い職員も、農作業の辛さ、野菜に虫がついたときの残念さ、収穫の喜びなどを知ることができる。また、地域の園児や児童達を招いた農業体験などの経験は、JAや農業のPRだけでなく、組合員と話す内容も豊富になってくる。職員には、組合員・利用者に近い支店を中心に事業を展開するという意識を強く持ってもらいたい。
JA共済連の職員にも、なるべく農業の現場へ行く機会を持って欲しいと思い、会長に就任直後、全国本部の部長職を対象にJA研修を企画・実施し、現場に行ってもらった。報告書ではみんな「いい体験ができた」と言っている。現場に行くことは、農業を知るだけでなく、JA共済連で実施・展開している自分の仕事の評価を直に感じることができる。
農協法の改正や農協改革など、これまでにない大きな環境変化が想定されるが、どうしたら組合員・利用者のためにお役に立てるのか。JA・JA共済連の職員にはその思いで日々の業務に専念していただきたい。
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