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JAの活動:第27回JA全国大会特集 今、農業協同組合がめざすこと

【JA全国連トップに聞く】農林中央金庫 河野良雄理事長 農業再生への血液に2015年10月7日

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聞き手:本紙記者

 第27回JA全国大会のテーマである「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」に、どのように支援していくか。JA組織のこれから進むべき方向を含め、JAグループ全国機関のトップに大会に向けての抱負を聞いた。

◆地域の活性化を支援

 ――JA全国大会に向けたメッセージを。

農林中央金庫 河野良雄理事長 河野 JAグループの目標は農業生産拡大と農業所得の増大であり、経済事業に力を入れると言う大会議案の趣旨は正しい方向だ。ダイレクトに貢献することはできないが、農林中央金庫は信用事業を通じ、目標達成のための血液の役割を果たす。
 そのために3つの施策に取り組んでいる。一つは農業所得増大・地域活性化応援プログラム。5年間の事業規模は2兆円で、中金の収益から1000億円を拠出して農業所得の増大、地域活性化のための支援を行う。
 個別施策として、アグリシードリース事業や担い手経営体向け経営相談機能強化事業を開始しており、今後も順次拡大していく。さらに6次産業化、生産性向上のための技術改革など、全国のJAから具体的なニーズを聞いて、積極的に個別施策を実施していきたい。
 もう一つが、JAが営農・経済事業へ注力できるための支援。営農・経済事業改革のためにJAは今以上にヒト、モノ、カネが必要だが、信用事業の本部・管理機能が負担になるなら、JAの選択により信用事業を中金、あるいは県信連に移管して、JAはその代理店としての機能を果たしていただくという考えだ。余裕の出た人員を回すことで、JA本来の経済事業強化の一助としたい。
 さらに大々的に打ち出してはいないが、窓口業務で負担のかかっている現金処理の機械化を進めたい。機械そのものはあるが、現状あまり普及していないので、JAが導入する場合に初期費用の一定額について助成を行うことで導入を促したい。
 また、高齢化が進む過疎地域等で組合員サービスが低下しないように、車による移動店舗を導入する場合など、その費用の一部を中金が負担する。
 さらに、組合員とのつながりを強めるための施策として、各JAで地域の実情に合わせて、農産物消費拡大につながる金融商品(定期貯金などの金融商品の特典として、直売所利用券や地元農産物などがついてくる)を企画・販売する取組みを進める。ほかに総合ポイント制度の導入や決済手段の多様化を通じて農産物直売所などの利用活性化を支援する。これはJA全国大会の議案にも入っており、これからも系統の信用機関としての役割をしっかり果たしていきたい。
 こうしたアイデアの基にある現場のニーズを大切にする考えは、特にJAバンクになってから強くなった。中金が本店機能を果たし、最前線で事業を行う単協まで神経が通ったためだと思っている。
 さらに最近こうした考えを強く持つようになったが、これは東日本大震災の経験によるところが大きい。震災復興では、総事業費1兆円、真水で300億円を用意した。人的にも、被災地のJAに中金の職員を派遣したが、そこでさまざまな現場のニーズが上がってきた。それまでは、資金は用意したが、どこにどう支援すべきか分からなかった。被災地に寄り添った支援活動が契機になって、中金職員のマインドが変わったように思う。

 ――農林中金とJAの、これからの役割分担はどうなりますか。

 河野 信用業務の企画は中金・県信連が、実際の窓口対応や渉外はJAが担うことになるだろう。中金としては信用事業職員に求められる「必須資格」の考え方を明示するとともに、信用事業担当職員向けの「標準プログラム」研修を提示し、「農林中金アカデミー」を通じて良質な研修を提供することによりJA職員の戦力アップを図っている。
 また、一部県信連でやっているところもあるが、中金が「農林中金アカデミー」を通じて信用担当の常勤役員、部長などマネジメントのできる人を対象として研修を実施することも開始しており、JAの役職員と接することで、JAと間がより近くなる。
 今後も中金・県信連が緊密に連携し、信用部門を担当するJA役職員全員の研修を積極的に行うので、JAが代理店化しても、組合員のサービスが低下するようなことはない。

 ――これからの農業融資はどのように。

 河野 この分野は従来、中金でなく単位JAの役割と考えてきた面もある。だが、6年前のリーマンショックがこの考えを変えた。その時から、もっと個々の農業融資に力を入れるべきではないかという意見が強まった。その前から大規模、法人経営の資金需要はあったが、十分には補足できていなかった。
 一方で、地銀や公庫資金が融資を伸ばしている。中金としては組合員の資金需要に応える仕組みとして、県域で農業金融センター設置を進めている。いまJAグループでは、ワンストップで担い手を支援するサポートセンターの設置を急いでいるが、それを融資面でフォローする。間接的だが中金として、農業融資拡大のためのスキームとしていま最善の方法だと思う。

 ――JA改革で中金の役割は何でしょうか。

 河野 JAバンク自己改革のメニューを徹底して実践し、併せて貯金100兆円をめざす。そしてJA改革に取り組んだ4、5年後、「JAを利用してよかった」、「JAがなくてはだめだ」と、多くの地域の人からも言われるようにしたい。それがJA改革の一番の後押しになるのではないかと思っている。
 政府もわれわれも、疲弊した地方の再生には農業を育成する、これが一番実現可能な案だと考えている。それには農業の6次産業化、農産物輸出などがあるが、それを金融面で支えていく。


◆ボトムアップ体制を

 ――全中の一般社団法人化をどうみますか。

 河野 いろいろ言われているが、全中が不必要だと言う人はいない。法的裏付けがなくても必要な組織であり、JAグループとして支えていくことは従来と変わることはない。
 ただ、JAの事業連は、全農が県連との統合を進め、中金も12信連と統合し、全共連は全ての県連を統合した。このなかで全中は不変だった。その意味で、どのような組織でも60年もそのまま続くことは難しい。良い方向で変わる必要があり、JA改革でいまその努力がなされている。
 法律に基づいた指導でなく、JAからボトムアップした意見、JAグループを代表した政策にする、そういう発想の組織に変わらなければならないだろう。かつて3000のJAがいま700を割った。信金、地銀よりも大きいJAもあり、上からの指導で運営するという段階ではない。全中もそう考え、携帯端末でJAの声を直接聞くシステムなどが計画されているが、ぜひ進めてほしい。

 ――CSR活動についてはどう考えていますか。

 河野 JAは相互扶助と共生の社会の実現を目指すことで社会的に認められる組織である。CSR活動は精力的にやっていく。そのためには収益基盤を強固にして、少しでも多くCSRに振り向け、貢献していく方針である。

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