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JAの活動:第27回JA全国大会特集 今、農業協同組合がめざすこと

農業と地域に全力!JAの現場から(1) 子育ては女性部と共に 若い母親の仲間づくり2015年10月15日

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JAみどりの涌谷支店(宮城県)「PIKAPIKAママくらぶ」

 新鮮で元気がみなぎる響きを放つ「PIKAPIKAママくらぶ」――JAみどりの涌谷支店が実施する子育て支援活動の名称だ。平成22年度に開始して以来、今年で6年目に入ったこの活動は、JAの組合員に限らず、涌谷地区で子育てに奮闘する多くの若い母親たちの“心のより所”として、地域に根付いている。

◆「同室託児」で安心

母子ともに安心して過ごせる「同室託児」 そもそもの発端は、JA女性部員が口にした、農村部ならではの悩みから。「わが家に県外からお嫁さんが来てくれたけれど、地元に友だちがいないの。なんとか同世代の仲間をつくってあげることはできないかしら」。それを聞いた、同じ思いを抱いていた他のメンバーたちから「それならば、自分たちJA女性部が中心となって、地域の若いお母さんたちが気軽に集まれるような場づくりをしようよ」という声があがり、JA女性部員の有志がサポーターとなって子育てを応援する「PIKAPIKAママくらぶ」が誕生した。
 「PIKAPIKAママくらぶ」は年に6回、JAみどりの涌谷支店の2階会議室を会場として開催されている。母親たちは料理や手芸などの講座を受講し、その間、子どもたちをJA女性部員が保育するシステムだ。毎回10人から15人の若い母親とその子どもたちが参加し、10人前後のJA女性部員がサポーターとして活躍している。参加料は300円から500円の材料代のみで、それ以外の運営費はJAが負担している。
 講座は、米粉クッキングや通園バッグづくり、ベビーマッサージなど、楽しいだけでなく、若いママたちの実生活に役立つものばかり。講師はその分野を得意とするJA女性部員が務めるほか、時には専門家を招くなど本格的だ。また、母親向けの講座のほかにも、「ミニミニ運動会」や「ひな祭りの飾り巻き寿司づくり」など、母子が一緒に楽しめるプログラムも用意されている。
 母親たちが講座を受講している間、子どもたちは同じ会議室の一角でままごとをしたり、絵本を読んだりして楽しく過ごしている。保育を担当するのは、元保育士を中心としたJA女性部員たちだ。母親たちの講座と、子どもたちの保育が、同じ部屋で同時に行われているため、母親たちは安心して講座を受けることができるし、子どもたちも近くにお母さんがいるから、緊張せずに遊んでいる。このつかず離れずの「同室託児」が、参加者の母子にとって、ほどよいくつろぎ感を醸し出しているようだ。

(写真)母子ともに安心して過ごせる「同室託児」


◆友だちの輪広がる

toku1510150702.jpg 7年前に横浜から涌谷地区の酪農家に嫁いできたという齋藤祐子さん(36)は、6歳、3歳、9か月の3児のママ。平成22年に開設して以来、継続して「PIKAPIKAママくらぶ」に参加している。 「結婚した当初は、近くに友人や同世代の知り合いがいなくてとても寂しく不安でした。でも『PIKAPIKAママくらぶ』に参加することで新たな友だちの輪が広がり、何よりJA女性部サポーターの皆さんの支えがあって、自分らしさを取り戻すことができました」と笑顔で話す。

(写真)JAみどりの女性部の木村部長(左)と齋藤さん一家


◆悩みを打ちあけて

「スイカ割り」では大人も子どもも笑顔がはじけた 「PIKAPIKAママくらぶ」は、行政などが手掛ける多くの子育て支援事業とは違って、主軸を「子ども」ではなく「母親」に置いていることが大きな特徴だ。だから、活動に参加するに当たって、子どもの年齢制限を設けておらず、幼稚園や小学校に上がったとしても、引き続き利用することができる。実際に、平成27年度の参加者のなかには、子どもが小学生の母親が数人いるとのことだ。
 毎回講座の後に「おやつタイム」がセッティングされているのも粋なはからいだ。おやつタイムには、JA女性部員お手製のゼリーや季節の果物などがテーブルの上に並べられ、まるでパーティーのよう。この時間が楽しみで、毎回講座に参加する母子もいるほどだ。活動の開始当初は、1回につき2つの講座を開いていたが、母親同士の仲間づくりに重点を置いた結果、講座は1つに絞り、残りの時間はおやつタイムとして、交流や情報交換の時間に充ててもらうことにしたそうだ。
 「子どもというのは何気なく大人の話を聞いているもの。だから子どもが隣に座っていると、なかなか子育てに関する悩みを打ち明けることはできません。でも、この『PIKAPIKAママくらぶ』は、同じ部屋のなかに大人と子どもの居場所がそれぞれ確保されているから、ママ仲間やJA女性部員の皆さんと本音で話すことができるんです。それもこの活動の魅力の1つ」(齋藤さん)。

(写真)「スイカ割り」では大人も子どもも笑顔がはじけた


◆女性部の底あげも

 JAみどりのの女性部部長で、活動開始当初から「PIKAPIKAママくらぶ」の運営に携わっている木村和枝さんは、「孤立しがちな農村地帯の若いお母さんたちに、この地域で生き生きと暮らしてほしい、という思いからこの活動を立ち上げました。その一方で、サポーターを務めるJA女性部員たちも、若い人や子どもたちとの交流に新たな喜びを感じています。その楽しさから活動の継続性が生まれ、JA女性部の底上げと結束力につながっているんです」と話す。
 「PIKAPIKAママくらぶ」の参加者は、JA女性部にグループ登録しており、この活動を通して、JA女性部員の増加が実現している。「他の地域でも、若い人との関わり方のヒントにしてもらいたい」。
 さらに今後の方向性として「これまではお母さんたちの希望を聞きながら、私たち女性部とJAの担当者とで運営を行ってきました。将来的には参加者が自主的に企画し、それを女性部やJAがうまくサポートしていけたら......。若い人たちのなかから地域のリーダーが生まれたら嬉しいですね」と新たな希望に胸を膨らませた。


◆JAの全域に拡大へ

 「PIKAPIKAママくらぶ」の運営には、事務局であるJAみどりの涌谷支店の応援が欠かせない。JAで事務局を担当するふれあい係職員の渡辺かおりさんは、自身も子育て真っ最中。「この活動のお手伝いをするなかから、私も子育てのヒントをもらっています。JA女性部の皆さんから教えていただくことがいかに多いことか。仕事を通してJAの存在意義を実感しています」。この活動に関わるすべての人が「PIKAPIKAママくらぶ」から良質のパワーをもらっているようだ。
 「地域の若い人たちがJAに興味を持ち、JAの活動や事業に積極的に参加してくれることが、これからのJAの新たな基盤づくりとなります」。
 JAみどりの涌谷支店の千葉利一支店長は、「PIKAPIKAママくらぶ」を「そのきっかけとなる重要な活動」と位置付けている。現在は涌谷支店限定の活動だが、JAみどりの全域に広げていく方向で新たに動き出そうとしている。
 JA女性部ならではの「気づき」と「思いやり」から生まれた「PIKAPIKAママくらぶ」。今後の展開が楽しみだ。

(一般社団法人JC総研・小川理恵)

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