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JAの活動:第27回JA全国大会特集 今、農業協同組合がめざすこと

【JAトップインタビュー】JAは組合員のもの 方向はトップが示せ2015年10月16日

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JA富山中央会会長穴田甚朗氏

 畑作の北海道、水田地帯の北陸、都市農業の東京、山間地の大分ー多様な日本の農業の中で、JAはそれぞれ地域の特性を生かして事業・活動を展開している。地域を代表するJAのトップに、「今、農業協同組合がめざすこと」を聞いた。
 今回のJA改革で全中の委員会の座長も務めた穴田甚朗JA富山中央会会長。改革を進めるにあたっては、「協同組合」としてのJAについて役職員も組合員も学ぶ必要があると強調する。

◆営利規定削除は協同組合の否定

――改正農協法が成立しました。どう受け止めますか。

富山中央会穴田会長 農協法改正が今回発議されたきっかけや審議の経過を振り返ると、やはり立法事実がないなかでの改正だったと思います。たとえば、こういう問題や実態があるから中央会規定のここをこう変えるという話ではなく、規制改革会議の農協改革の論議がきっかけとなったものでした。それは全農の株式会社化や信用・共済の分離といった総合農協や、さらには協同組合をも否定するような議論です。協同組合の何たるかを分かったうえでの法改正なら、まだしも理解できなくもないと思いますが、それがまったくなかった。
 いちばんの問題は営利を目的として事業をしてはならないという規定が削除されたことです。まさに協同組合否定の考え方が農協法にも出たということです。
 われわれはこれからも農協運営にしっかり取り組んでいかなければなりませんが、この先、この改正農協法では協同組合とは、どうあるべきかが希薄になる懸念があります。今こそ、協同組合の原点、理念を踏まえて事業展開するとともに、やはり組合員のために営利を目的としないという規定を復活させていく、そういう政策要求も打ち出していくべきだと思います。

――全国大会を契機にどんな取り組みが期待されますか。

 今後は、大会議案で打ち出した農業者の所得増大、農業生産の拡大、地域活性化について、より具体的にどうするかを考えていかなければなりません。
 そこで大事なことは、政府の考え方は農業所得の増大ですが、私たちは"農業者の所得増大"を掲げているということです。しかもわれわれ農協運営に携わるものとして考えるべきは農業者の所得増大ということは組合員の所得増大だということです。こういう捉え方をしたい。単なる農業者の所得増大なら、組合員ではない、たとえば農業に参入した株式会社も農業者ということになる。そこをしっかり押さえて事業運営をすべきです。
 それから地域活性化とは准組合員との協同関係づくりです。それこそ今日からでも准組合員の加入促進をしよう、ということです。信用事業や共済事業という事業推進面から准組合員加入を進めるのではなく地域のみなさんに私たちは食と農を基軸として、地域に貢献する組織であり、その役割を担っていることを理解してもらい、それによって准組合員になろうと考えていただく。准組合員でもさまざまなかたちで農業と関わることができるといった具体的な農業協同組合との関わりから准組合員になってもらい、そのうえで信用事業や共済事業も、ということが大切だと思っています。


◆准組合員にも教育の実践を

――地域住民に対してもJAへの理解促進が大事になるということですね。

地域住民に農業に関わってもらい理解を広めたい 准組合員の加入促進をするにも、協同組合の理念を知って加入してもらうということですが、分かったといってもそのままではだめです。かつてはお互いに助け合うという精神は知らず知らずのうちに理解していましたが、今はこれだけ豊かですから協同組合の理念を教育しないと必ず忘れていきます。その教育が必要だと思います。
 27回大会を契機にこの教育について何としても重要だということを位置づけたいです。全中や県中は組織形態が今後変わろうとも、中央会の仕事は協同組合理念の周知徹底だと思います。それも組合員に対する教育の前に、まず役職員にこそ必要で、大会議案では意識改革が必要だと強く打ち出されていると思います。
 准組合員への対応が重要になりますが、まずは正組合員の世代交代に目を向ける必要があると思います。地域の農協では正組合員の世代交代が進んで、たとえばJA高岡では毎年200人ぐらい世代交代しています。親から出資を引き継いで集落営農組織に関わっている人などは当然、次世代の正組合員です。その方々に協同組合とは何かといったことを何もフォローしていないのではだめだと、新しく正組合員になった方々を対象に正組合員学習というセミナーを10年ほど前から始めました。
 それも、どうぞ自由に受講してくださいと呼びかけるだけでは弱いということで、どの組合員世帯で出資金の引き継ぎがあったかが分かるわけですから、半年ごとに個人宛に支店長が宛名を書き、それを職員が直接届けるかたちで参加を呼びかけることにしました。参加できなかった人にはまた次の機会に同じように呼びかける。これぐらいの努力をして組合員とのつながりを深め、協同組合理念を徹底すべきだという思いを持っています。
 こういう取り組みの延長で准組合員に対する協同組合教育も広げていければと思います。これに取り組むことによって、今後准組合員の事業利用規制が問われたとき、しっかりと対応することにつながると思います。

(写真)地域住民に農業に関わってもらい理解を広めたい


◆農業振興にはJAの団結力

――今後の農業振興について水田地帯として何が課題でしょうか。

 30年産からは生産調整が見直されわれわれ農業者、農業団体が自主的判断で生産をしていくということですが、JAが地域農業にどう存在感を出すか、JAグループとしてどう団結するかが問われると思います。
 米の生産調整にもJAグループ自らどう取り組むのかをふまえてこちらから政策提言をしていくことも考えたいです。というのもやはり適地適作があるからです。
 飼料用米は全国的な政策支援のもとに増産が必要ですが、畜産地帯に近い産地で力を入れたほうが輸送コストもかからないなどのメリットもあります。一方、水田地帯だといっても園芸振興は必要ですし、大豆や小麦の生産も大切です。ですから、主食用米の生産数量目標は守っているのに、さらに深掘りして飼料用米の増産を、という方向でいいのかということも考えていく必要があると思います。飼料用米以外の作物でも主食用米と変わらない水準の所得が確保できればいいわけですから、JAグループから政策提言するような地域ごとに取り組みとJAグループとしての団結が重要になってくるのではないかということです。
 富山県でも米だけではだめだと県全体で1品目1億円産地づくりに取り組んでおり、25品目を決めました。県内JAのなかにはタマネギで3億円を達成したところもでてきました。さらに果樹にも力を入れようとしています。
 こういうことが農業者の所得増大につながり、多様な農業者による農業振興を考えていく必要があります。

‐‐改めて全国に呼びかけたいことをお願いします。

 当然のことですがJAは組合員のものです。組合員はJAに何をしてほしいと考えているのかを理解していないと組合員のための事業はできない。それをトップ以下、役職員すべてが組合員と接して知っていくことが必要だろうと思います。組合員が求めている事業をやるんだということです。
 同時にJAのトップは自分のJAのエリアの現状をどう判断し、5年後、10年後どうなるかをつねに考えていきたいと思います。
 私も職員には、自ら何をしなければならないかを考えることが必要だと言いますし、あなた方若い世代が次の農協も農業もつくっていくのだと常に言います。ただ、大事な方向性はやはりトップが示す。トップダウンがあって、ボトムアップがあると考えるべきだと思います。

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