JAの活動:JAトップアンケート 今、農業協同組合がめさずこと
【JAトップアンケート】JA新いわて 久保憲雄・代表理事組合長 「生産基盤最大限に活かす」2015年10月26日
JAグループは10月15日の第27回JA全国大会で「創造的自己改革への挑戦」のスローガンのもと、「農業者の所得増大」と「農業生産の拡大」「地域の活性化」に全力を尽くすことを決議した。これらの課題を全国各地で地域特性に合わせて実践していくには、各JAトップ層のリーダーシップ発揮が期待される。そこで本紙では「今、農業協同組合がめざすこと」をテーマにJAトップ層の考え、思いを広く発信しJA運動と事業の発展に資すればと考えアンケートを実施した。今回は、JA新いわての久保憲雄代表理事組合長のご意見を掲載する。
JA新いわて
久保憲雄・代表理事組合長
回答日:2015.9.25
【問1】あなたの農協では、農業・地域に対し、どんな役割を果たそうと考えておられますか。今後もっとも重要な役割だとお考えの内容をお書きください。
当組合は、農業所得の増大及び農業生産拡大はJA事業の根幹をなすものとして、従来から取り組んで来ている。しかし、過去10年間は日本経済を取り巻く環境から、農畜産物の販売価格低迷と生産資材価格の高止まり傾向から、生産現場の努力が報われず厳しい農家経営環境であった。
当組合は平成20年の広域合併を契機に「日本一の産地チャレンジ運動」を創設し販売額500億円をめざし、JA独自の「地域農業振興対策事業」に取り組み販売事業強化を実践してきた。結果として平成20年度396億円の販売額から平成26年度は445億円の販売額となり、確実な生産基盤の進展と多様な担い手及び大型経営体の実現と成っている。
また、当組合は基本方針として『「協同」でつなぐ強い「絆」~農を通して地域とともに生きる』を掲げ、運営方針として「次代につなぐ力強い地域農業の確立」「豊かで暮らしやすい地域社会の実現」「強固で安定した組織・経営基盤の確立」に向けて取り組んでいる。
今大会議案は、今日のあらゆる改革環境から改めて農業協同組合の価値を見直すものであったと思うが、この改革をチャンスと受け止め、今までの生産基盤を最大限活用しながら、時代が求める多様な販売(流通)チャネルを作り出し、食料供給基地としての役割、農業を基軸とした地域の活性化に資することが最も重要な役割と考えます。
【問2】問1の役割を果たすうえで、今、農業・地域での最大の課題は何ですか。
農畜産物販売は、人口減少・高齢化による消費減少やライフスタイルの変化、食生活の多様化により、市場出荷から加工・業務用需要に対応した契約取引や直接販売等が拡大している。
また、大手小売業・外食産業による系列化やプライベートブランドによる産地・担い手の囲い込み、小売業や食品産業などの農業への参入が進んでいる。
当組合では農業者の高齢化・世代交代が加速化し、農業者の減少が急速に進んでいる。組合員全体の2割の生産者で販売額の8割を担っていることから、担い手経営体や大規模法人化へ農業生産と販売の集中が進んでいる。このような状況下で農業生産の労働力確保が課題であり、農作業の省力化・機械化が求められている。
【問3】問2の課題を解決するため、もっとも力を入れようと考えておられることは何ですか。
農業生産基盤の維持・拡大をするためには、担い手の育成・確保とともに、担い手の多様なニーズに応えたJA事業運営の見直しが必要です。
また、農業者の所得増大を実現するためには、従来の「市場出荷重視型」の販売事業方式に加え、販売環境の変化に対応した事業方式への転換の加速化が必要と考えている。
環境が変化するなか、新たなニーズに柔軟に対応していくためには、TACを含む営農指導員の対応強化を進める必要がある。また、大規模経営体の増加や法人化に伴う資材供給・経営指導等の対応も考慮しなければならない状況にある。
JAの自己改革も視野に入れ、地域農業を守るため農家・組合員の農業所得向上と農業生産の拡大のため、営農担当の職員の増員を検討しなければならない局面に来ている。
「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」に向けた基本的取り組み。
(1)契約販売・相対取引の拡大とブランド化に向けた取り組み・物語のある農業生産への取り組み(地域ブランドの取り組み)。
(2)生産コストの低コスト資材の提案と低コスト生産技術の提案(普及センターとの連携)。
(3)年度別にポイント(業種・品目別)を絞った生産拡大助成・奨励。(4)担い手との会話を重視した訪問活動の実施(TAC、経済渉外、担い手金融リーダー、金融渉外、LA等)
【問4】問3に関連して、第27回JA全国大会議案では「9つの重点実施分野」を掲げています。このうち課題を解決し、貴JAがめざす姿を実現するために、もっとも重要と考えておられる事項を3つあげてください。また、その分野において、どんな取り組みを考えておられるのか、具体的内容をお書きください。
a=担い手経営体における個別対応
(具体的取組内容)
大規模化をはじめ多様化・高度化する担い手ニーズに対し、個別支援や事業提案を迅速かつ的確に対応する。とくに担い手のコストの抑制と農業経営に専念できる環境づくりに向け、会計・税務に関する専門家等の活用により、記帳代行・申告を支援するほか、販売実績データ等に基づく経営診断や経営改善に向けた提案を行う。
b=マーケットインに基づく生産・販売事業方式への転換
(具体的取組内容)
消費者・実需要者ニーズを踏まえた積極的な生産・販売提案を通じ、産地・主要卸・実需者間等の結びつきの強化をはかり事前契約をすることで長期安定取引および早期販売に向けて取り組む。
d=生産資材価格の引き下げと低コスト生産技術の確立・普及
(具体的取組内容)
担い手経営体等のニーズに対応するため一律的な価格体系に基づく購買事業方式からの転換を加速化し、生産資材の供給価格の引き下げにより、大口取引農家のコスト低減を図る。
定期的な市場調査により、競合する商社等の商品の価格・品質を把握し、同等の商品でJAの取扱価格が高い場合は、仕入れ先である全農等と協議を行い、弾力的に価格・手数料設定を見直し、生産資材価格の引き下げに取り組む。
【問5】第27回JA全国大会を機に、JAトップとして内外に発信したいお考えをお書きください。
新農政、TPP、JA改革とさまざまな課題があるが、JAの基本理念に変わりなく、組合員・生産者、地域住民が主役のJA事業を展開していかなければならないと考えます。
今後の経済変化、時代に即した農政変化等を的確に農業者に伝達していくことは、これから役職員の大きな役目になります。環境変化が厳しいなか、5年先を見通して、経済情勢や農畜産物流通がどうなっていくのかといったことを、正確な情報に基づいて発信していくことが重要な役目になっていく。地域の人たちと一緒に農業展開を実施していかなければならない。
組合員が将来への希望と誇りが持てるよう、生産の低コスト化・効率化や付加価値を高めるブランド化、中核となる担い手の育成などにより、農業を基軸とした自己改革を進め、知恵を出し、汗をかいて儲かる農業、豊かで暮らしやすい地域社会の実現をめざします。
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