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JAの活動:JA全青協会長インタビュー

「伊予美人」で地域農業を活性化 JAうま(愛媛県)2015年10月30日

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出向く営農で担い手との架け橋に
・江戸時代から続く里芋産地
・農家との接点を積極的に強化
・当初は悩んだり不安な気持ちも
・県・市とも一体で機械化を推進
・「愛媛の小芋」から「伊予美人」へ
・「チームえひめ」として広域選果体制へ
・さらにTACが指導的な役割を

 第27回JA全国大会も終わり、JAグループは着実に自己改革の取組みを進めている。なかでも、地域農業の担い手に出向くJA担当者「TAC」の活動に対する期待は非常に高まってきている。
 本紙では、そうしたTACの活動をレポートしているが、今回は早くから「農家に出向く」体制を整備してTACを設置し、特産農産物の里芋「伊予美人」の産地化・ブランド化に取組み、担い手農家との信頼関係を築いている愛媛県のJAうまを取材した。

◆江戸時代から続く里芋産地

「伊予美人」を牽引する宝利特産部会長 愛媛県というと、まずミカンを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。しかし、県東部・JAうまを中心とする地域の代表的な農産物は「里芋」だ。「文献によれば江戸時代から里芋は栽培されており、400年以上続く伝統に裏付けされた高い技術水準と、栽培体系が確立されている」とJAうま合田仁営農指導課長。
 里芋がこの地域の中心的農産物になったのは、日本三大局地風の一つである「やまじ風」が吹き、地上で収穫する果菜などの農作物は風で倒され栽培しづらいこと、水稲よりも収益性が高いこと、そして水田栽培が可能で輪作することでより安定した品質・収量が得られるからだ。
 古くからの産地なので、商系の集荷業者も多く、平成15年以降は、JAの販売金額は伸びたものの、取扱数量が激減。こうした事態を打開するために、「伊予美人」を武器に活動するTACへの期待は大きい。
 「伊予美人」とは、愛媛県農林水産試験所が従来品種「女早生」から系統選抜によって開発した品種「愛媛農試V2号」のことだ。「愛媛生まれの白く丸い里芋」という意味で名づけられ、JA全農えひめが商標登録を取得しブランド化に取組んでいる。柔らかく、粘りも強く旨味・味わいがある、特有の"ぬめり"には栄養素がいっぱいである。「味に癖がなくどんな料理にも相性抜群が、『伊予美人』の優れた特徴だ」と、JAうま特産部会長で「伊予美人」の生産拡大とブランド化を牽引する宝利義博さん。


◆農家との接点を積極的に強化

JA全農えひめが商標登録した「伊予美人」 JAうまは、紙の出荷額が全国一という全国屈指の製紙・紙加工業中心の四国中央市と新居浜市別子山を管内とする広域JAだ。平成8年に東予の8JAが合併して誕生。その後15年にJA川之江市が加わり現在の形になった。主な農産物としては、特産の里芋・山の芋に加えて、水稲、鶏卵、肉豚などがある。
 同JAは、平成20年に営農経済担当常務の直轄部隊として「農家との架け橋! 出向く営農」をスローガンに、県内ではもっとも早くTAC(設置当時:アグリアドバイザー)を設置する。これは全国で担い手対応のTACの取組みがスタートした時期でもあり、JA全農えひめとも相談し、TACシステムを導入し、訪問活動、面談記録の蓄積を開始した。
 TACを設置したのは、まず、広域合併してJAが大型化し、組合員のJA利用が低下していることがあげられる。
 また、18年当時、15支店に経済担当窓口が設置され、主要な支店には営農指導員が配置されていたものの、販売・購買業務などと兼務で栽培講習会などを実施しなければならず、農家に出向く回数や時間を十分にとることができずに、「受け身」となっていた。そのため、農家との接点を積極的に強化する必要性をJAが強く感じていたこともある。


◆当初は悩んだり不安な気持ちも

市内には多くの里芋畑が見られる 基幹品目である里芋について、農家の高齢化が進み、栽培農家が減少するなかで、従来からの栽培方法では労力がかかるために、規模拡大が難しい状況になってきていた。産地を維持し、農家所得を上げていくためには、機械化・省力化による規模拡大を促進していく必要があった。
 TACが設置されたこの時期は、里芋の優良品種「愛媛農試V2号(伊予美人)」への品種転換を進めていたこともあり、TACを中心に機械化などによる栽培の簡素化・省力化を強力に推進していくことになる。
 TACが訪問する担い手は、認定農業者、水田1ha以上の生産者、各地区の生産部会代表者・関係者など約500戸。管内を5地区に分け1人約100戸を担当でスタートする。
 しかし当初は、「今更来られても...」「毎日来ても用はない」と言われ、担い手からなかなか受け入れられてもらえず、悩んだり不安な気持ちを抱いたりしたこともあったという。それでも、JA全農発行「グリーンレポート」や生産・販売などの情報資料を作成して出向くなど工夫と努力をすることで、しだいに担い手から受け入れられるようになっていく。


◆県・市とも一体で機械化を推進

 そうしたTACの活動を支えたものとして、19年4月に設置された「四国中央市農業振興センター」の存在がある。
 これは、「農業版ワンストップサービス」を行おうと市の農業振興課、農業委員会、県の農業指導班が、JAの経済センターに入り「ワンフロア化」したもので、これによってJAと行政組織との横の連携が強化され、担い手に応じた作物・営農相談など総合的な情報提供ができるだけではなく、迅速かつ細やかな対応が可能となった。(なお、農業振興センターは、26年12月に四国中央市の農林関係全部署が入る施設が完成し、引続き同一敷地内で連携し一体となって農業振興に取り組んでいる。)
 「農家との会話を取り戻すために、TACには精鋭が配置された」と合田課長。その精鋭のTACたちが中心的となり、「伊予美人」への品種転換に取り組んだ。JAの目標は、既存の「女早生」に比べて10a当たり収量800kg増加、秀品率15%向上だ。
 そのためのTACの役割は、原種圃の設置と種子更新だ。具体的には、毎年セル苗を立てて、原種圃で種子を増殖し、優良種子を選別して農家に供給する。また、品種特性を維持し、品質を安定させるため、5年ごとの種子更新を呼びかけている。
 生産面では、機械化一貫体系の普及推進を図ることで、省力栽培による規模拡大をはかり、農家の所得増大につなげていく取組みを行っている。最近では、県の農業指導班と協力し、省力化技術「全期マルチ栽培」(里芋の全生育期間を通じて畦をマルチで被覆する栽培方法)を組合わせた機械化一貫体系の普及推進に力を入れている。
 従来の栽培方法では、1戸1haほどが限界であったが、こうした省力化への取組みによって、2~3haまでの作付けを可能とし、大規模な担い手も増えてきている。「機械化は、高齢化で栽培者数が減っているなかで、栽培面積の維持につなげていく大きなポイント」だと合田課長。


◆「愛媛の小芋」から「伊予美人」へ

消費者に郷土料理の「いもたき」をふるまい認知度を向上 販売面での取組みも重要だ。JAが商系業者に負けない販売力を持ち、農家手取りで優位性を築く必要があるからだ。
 消費者にJAグループのブランドである「伊予美人」の認知度を高め、購買意欲を引き立てるために、JA全農えひめと連携して、広島や京都などに大鍋を持ち込んで、郷土料理である「いもたき」の試食宣伝や食味などの嗜好調査アンケートを5年間続けている。こうした取組みで従来の「愛媛の小芋」というひとくくりの販売から「伊予美人」へ消費者意識の切り替えをはかっている。
 さらに、市場流通だけではなく、県内の加工業者と提携し、規格外品を活用した、里芋ギョーザやコロッケ、里芋焼酎、航空機の機内食でも人気のかりんとう「ポリポーリ」などの加工食品が開発・販売され、「伊予美人」の認知度向上に一役かっている。


◆「チームえひめ」として広域選果体制へ

JAの直売所でも「伊予美人」は人気商品だ JAうまでは近隣JAと連携し、「伊予美人」の広域選果体制への取組みを27年度より試験的にスタートさせた。県内JA間で連携し、広域にて集荷・選別し、出荷する体制を整え、チームえひめとして「伊予美人」のブランド化に取組んでいきたいと合田課長も宝利特産部会長も考えている。
 また、この11月には四国中央市で、第2回全国里芋産地交流会が開催され、全国の主要な里芋産地の生産者及びJA関係者、流通販売関係者、行政関係者など約300人が参加する。合田課長やTACの皆さんはもとより、宝利特産部会長をはじめとする生産者の方々も全国の里芋生産者との交流ができると張り切っている。


◆さらにTACが指導的な役割を

 JAうまでは、産直市専任担当TACを1名新設。3カ所のJA産直市でそれぞれ月2回ほど、産直市会員に対し産直市のバックヤードに椅子だけを並べ、コンパクトな相談所を設け、個別に
相談できるような機会をつくった。出向く営農指導ではなく、逆に産直市に出荷に来る生産者をターゲットにした出迎える営農指導だ。また、このTACが食育ソムリエの資格を取得し料理面からのアドバイスも行える体制を整えている。
 宝利特産部会長は「合併してJAが大きくなったが、早めにTACが設置されたおかげで、昔通りのコミュニケーションがとれている」と「農家との会話」をするために設置されたTACの活動を評価している。そして、いま以上に規格・品質の水準を高めそれを維持していくために「TACがさらに指導的な役割を果たしていくべきだ」とも考えている。
 合田課長も「営農指導ができなければ、JAうまではTACとはいえない」と言い切る。「伊予美人」という特産農作物を武器に、JAうまのTACは、担い手とタッグを組んで、地域農業の振興に全力をあげている。

(写真上から)「伊予美人」を牽引する宝利特産部会長、JA全農えひめが商標登録した「伊予美人」、市内には多くの里芋畑が見られる、消費者に郷土料理の「いもたき」をふるまい認知度を向上、JAの直売所でも「伊予美人」は人気商品だ

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