JAの活動:JAトップアンケート 今、農業協同組合がめさずこと
【JAトップアンケート】JA秋田しんせい 畠山勝一代表理事組合長 「農協は不可欠な社会基盤」2015年11月2日
JAグループは10月15日の第27回JA全国大会で「創造的自己改革への挑戦」のスローガンのもと、「農業者の所得増大」と「農業生産の拡大」「地域の活性化」に全力を尽くすことを決議した。これらの課題を全国各地で地域特性に合わせて実践していくには、各JAトップ層のリーダーシップ発揮が期待される。そこで本紙では「今、農業協同組合がめざすこと」をテーマにJAトップ層の考え、思いを広く発信しJA運動と事業の発展に資すればと考えアンケートを実施した。今回は、JA秋田しんせいの畠山勝一代表理事組合長のご意見を掲載する。
JA秋田しんせい
畠山勝一代表理事組合長
回答日:2015.9.30
【問1】あなたの農協では、農業・地域に対し、どんな役割を果たそうと考えておられますか。今後もっとも重要な役割だとお考えの内容をお書きください。
JAの強みである総合力を生かし、農業所得の向上と地域の活性化を具体化していかなければならない。協同組合理念にもとづく相互扶助の精神とJAが果たしてきた社会的・経済的役割の重要性に鑑み、盤石な財務基盤の確立と組合員や利用者、地域に信頼される経営と事業改革に取り組んでまいりたい。
【問2】問1の役割を果たすうえで、今、農業・地域での最大の課題は何ですか。
(1)農業者の多様化への対応
農家戸数の減少や高齢化とともに、農業生産法人などの担い手が増えてきた。併せて、農地中間管理機構制度の活用により、ますます担い手への農地集積が進み、農業者のニーズも多様化している。
多用化する農業者のニーズを踏まえた対応が求められる。
(2)農協改革とTPP
誰のための農協改革なのか?TPPを締結することによって誰が得をし、誰が損をするのか?
生産現場は不安と憤りの頂点に達しており、政策に翻弄されない農業経営を強く望む。
(3)財務基盤の強化に向けた対応
人口減少・高齢化が進む状況下において、組合員の脱退・出資金減少の傾向にあり、併せて、バーゼルⅢや農林年金特例業務負担金の対応が求められている。利益の確保と財務基盤の強化が喫緊の課題である。
【問3】問2の課題を解決するため、もっとも力を入れようと考えておられることは何ですか。
(1)担い手や多様な農業者の参画による地域農業の持続的な発展
新農政等、変化する農業情勢に対応し、安心して営農継続できる環境整備と地域農業の発展に向け、担い手経営体及び多様な農業者が参画し、農地の集積とフル活用を図り、農業・農村・農地の維持と農業所得の向上に取り組んでまいりたい。
(2)組合員・地域社会の構造変化に対応した活力ある地域づくり
JAは、地域に欠かすことのできない社会基盤として、組合員・地域住民が必要とするサービスの提供と協同活動を通して地域社会の文化に貢献し、地域の活性化に取り組んでまいりたい。
(3)JA経営の健全性・信頼性を高める財務基盤の強化
組織基盤の拡充、自己資本の増強、人材育成、施設整備、教育活動の充実によるJA経営の健全性の向上と法令等遵守態勢、利用者保護等管理態勢、リスク管理態勢を強化し、信頼されるJA経営の実現に取り組んでまいりたい。
【問4】問3に関連して、第27回JA全国大会議案では「9つの重点実施分野」を掲げています。このうち課題を解決し、貴JAがめざす姿を実現するために、もっとも重要と考えておられる事項を3つあげてください。また、その分野において、どんな取り組みを考えておられるのか、具体的内容をお書きください。
a=担い手経営体における個別対応
(具体的取組内容)
部門横断型の担い手支援専門部署を設置し、JAの経営資源をフルに活用したTAC機能+農業経営アドバイザー(経営分析・コンサル・融資)を起動させ、意欲的な農家に積極的な提案・支援をすることにより農家所得の向上を推進する。
c=付加価値の増大と新たな需要開拓への挑戦
(具体的取組内容)
・園芸メガ団地による農産物の生産基盤拡大と農家所得の向上を図る。
・土づくり・あきたecoライスを基本に特別栽培米・プレミアム米・つぶぞろい(新品種)等実需者の要望に対応できる仕組みと販売戦略の確立。
・専用品種による飼料用米、主食品種主体での飼料用米の取組による水田活用の強化による農業所得の確保と平準化
e=新たな担い手の育成や担い手のレベルアップ対策
(具体的取組内容)
・園芸就農者支援研修制度の確立
・部会リーダーの設置による組織の活性化と栽培技術の向上
・和牛青年部を主体とした飼育技術の向上と多頭飼育への誘導
【問5】第27回JA全国大会を機に、JAトップとして内外に発信したいお考えをお書きください。
そもそも農協組織は「誰の為・何の為」の組織でしょうか。それは、明治時代の高利貸しの横行、戦中・戦後の食糧難、高度成長期の公害、所得格差の拡大等貧困や経済・社会の弱者を皆で助け合い解決しようと始まったのが協同組合であり、まさに相互扶助の精神のもとに誕生した自主・自立の組織である。
幕末、農民指導の傑出者として、先祖株組合を創設し荒廃した農村の復興に尽力した大原幽学。二宮尊徳は、譲り合い・助け合いで幸福な社会を形成することを目的に報徳社を設立しました。二人の思想は、まさに博愛のこころであり日本の協同組合運動の先駆けである。
さらに、明治維新後、平田東助・品川弥二郎がドイツに留学し、信用組合の仕組みを文献にし、その志が産業組合法施行につながり、戦後の農業協同組合発足への足掛かりとなりました。以来、JAグループは戦後の日本農業と農家経済の発展に大きく貢献してきたものと自負するところであり、現に、ICA(国際協同組合同盟)は、日本のJAの総合事業を通じた協同組合活動を高く評価している。
ドイツ信用協同組合の先駆者ライファイゼンは「一人は万人のために、万人は一人のために」と説いて止まなかった。これは、まさに協同組合の源流であって、農協人として心に響く言葉であり、いかなる逆境・苦境に立とうとも「この思想」が私たちの道標と心得るものである。
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