JAの活動:JAトップアンケート 今、農業協同組合がめさずこと
【JAトップアンケート】JA東京あおば 榎本高一代表理事組合長 「支店を地域の拠点に」2015年11月4日
JAグループは10月15日の第27回JA全国大会で「創造的自己改革への挑戦」のスローガンのもと、「農業者の所得増大」と「農業生産の拡大」「地域の活性化」に全力を尽くすことを決議した。これらの課題を全国各地で地域特性に合わせて実践していくには、各JAトップ層のリーダーシップ発揮が期待される。そこで本紙では「今、農業協同組合がめざすこと」をテーマにJAトップ層の考え、思いを広く発信しJA運動と事業の発展に資すればと考えアンケートを実施した。今回は、JA東京あおばの榎本高一代表理事組合長のご意見を掲載する。
JA東京あおば
榎本高一代表理事組合長
回答日:2015.9.30
【問1】あなたの農協では、農業・地域に対し、どんな役割を果たそうと考えておられますか。今後もっとも重要な役割だとお考えの内容をお書きください。
東京という特殊環境の中で、JAの持つ役割は地方のJAとは違いがあると思います。農地・農家が減少する中でJAが求められるものは、地域組合としての性質の方が大きいのではないでしょうか。その中において、農地・農家に対する地域住民の理解というものを進めていかなければならないと思います。
JA東京あおばは、平成36年度を目途に現在ある17支店から10支店程度に統合・再配置するとした「支店再編方針」を平成26年6月の総代会で可決・決定し、現在支店再編を進めているところでございます。この支店再編方針は地区ごとの拠点となる支店(板橋地区・練馬地区・石神井地区・大泉地区)を中心に組合員・地域の皆さまが集うコミュニティの場となるような店舗展開を図っていき、(1)都市農業を守るために(2)組合員のくらしを豊かにするために(3)地域の活性化に貢献するために、という使命を果たしていくコンセプトでございます。この拠点を当組合はJA-villageと呼んでおります。JA-villageでは直売所機能、振興渉外機能、窓口機能、渉外機能、相談機能を備え、教育文化活動の実践により、組合員・地域の皆さまが足を運びたくなるようなコミュニティの場を提供します。このような地域の活性化への貢献や総合事業の果たす役割というものが大変重要と考えています。
【問2】問1の役割を果たすうえで、今、農業・地域での最大の課題は何ですか。
まず都市農業は、農業を取り巻く経営環境の厳しさに加えて、都市農地の減少や後継者不足等の問題をかかえていることが課題として挙げられます。また、総合事業を行うJAにとって、地域になくてはならない存在となるために、レベルの高い競争相手にどのように打ち勝っていくかも課題の一つです。例えば農産物でいえば多数の民間企業が農業分野に参加し、地元の企業・農家と組んで市場に参加しており、信用・共済においてはメガバンク、民間生損保等、JAの行っている事業はどこにでも強力な競合相手がいます。今日のような低成長経済の時代では、パイのシェアの取り合いが競争の焦点となり、今後はさらに激化していくと考えます。
また、組合員・地域住民も変化しだしており、ニーズを把握するのも大変難しくなっております。近年、相続による組合員・農地の減少、組合員の顧客化、組合員の世代交代と多様化が進む中で、正組合員や次世代組合員に「わがJA意識」をもってもらう取組みをすることは大変重要です。その上でJAは地域農業と協同組合の理解を深める活動を展開するとともに、組合員組織等の活性化により組合員の参画の場を作り、段階的に組合員の意思反映、運営参画をすすめていくことが重要と考えます。
また、今年の4月16日に制定された「都市農業振興基本法」では、都市の有する多面的機能が正式に法として位置づけられ、国として都市農業を振興するという大きな方向性が示されました。これを追い風に、固定資産税や相続税の負担軽減といった都市農地の保全に向けた具体策の実現を求めていきます。こうしたことを通じ、直売所の運営や農業体験、食農教育などの取組みにより都市農業がもつ多面的な機能をPRしていくことが、都市農業の振興、課題の克服につながると考えております。
【問3】問2の課題を解決するため、もっとも力を入れようと考えておられることは何ですか。
これからのJA東京あおばにとって重要なことは人材育成と考えます。どんなに立派な建物を構えても組合員・地域の皆さまのニーズにお応えできる職員なくしては、問1でも記載したJA-village構想は実現できません。そのために、JA東京あおばの経営理念「わたしたちは、農業の豊かさ 人の和を大切にし、地域になくてはならない存在をめざします。」の意味することを理解し、経営理念に基づいた行動がとれる人材育成を徹底していきたいと考えております。
また、今回の農協改革で中央会組織の変革が求められております。中央会については名称や形は変われども、地区や全国のJAをまとめあげる組織は必要であろうと思います。そういった意味でJAや行政との調整機能の他にコンサル機能については力を発揮していただきたいと思います。JA組織全体としても人材育成をはじめ、多岐にわたる分野で課題はたくさんありますが、このような様々な課題克服に中央会との連携は欠かせません。外部コンサルを超える組織として農協を指導できるようになる必要があると考えます。中央会とJAが一体となって人材育成を進めていくことで、協同組合原則を堅持しながら、変化に対応し続ける組織を作り上げ、地域になくてはならないJAとなることにつながると考えます。そうなれば、自然と組合員・地域の皆さまから准組合員規制や代理店化等の農協改革について反対の声が上がり、議論の余地もなくなると考えます。
【問4】問3に関連して、第27回JA全国大会議案では「9つの重点実施分野」を掲げています。このうち課題を解決し、貴JAがめざす姿を実現するために、もっとも重要と考えておられる事項を3つあげてください。また、その分野において、どんな取り組みを考えておられるのか、具体的内容をお書きください。
g=JA事業を通じた生活インフラ機能の発揮、JAくらしの活動を通じた地域コニュニティの活性化
(具体的取組内容)
前問で記載しているJA-village構想
h=正・准組合員のメンバーシップ強化
(具体的取組内容)
前問で記載しているJA-village構想
i=准組合員の「農」に基づくメンバーシップの強化
(具体的取組内容)
前問で記載しているJA-village構想
【問5】第27回JA全国大会を機に、JAトップとして内外に発信したいお考えをお書きください。
今回、農協改革ではJA全国監査機構の監査法人化が決定しましたが、農業所得の増大にどうつながるのかは今でも疑念を払拭できません。また、政府の言う農協改革は農協組織の解体というように考えざるを得ません。生活インフラをJAが担っている地方も多いという実態の中、JAなくして地方創生はありえないと思います。また、これまで国、地方公共団体とJAは農政の推進を一体で進めてきたにも関わらず、農業衰退の責任を農協だけに押し付けるのは違和感を覚えます。やはり国、地方公共団体とJAが一体となって進めていくことが重要です。今後に関しては、法改正によって決まったことにどう対処するかが重要になってくると考えます。具体策としては、各自治体の創生の動きにJAは積極的に参画し、地域にJAが不可欠という状況をつくりあげるということです。
また、全国でも地方のJAと都市型JAの役割は同じではないと思います。今回の全国大会でも「創造的自己改革」というキーワードがございますが、各JAが創意工夫ある取り組みをして、地域の実態に応じた多様な特色あるJAづくりをすすめることが、組合員・地域の皆さまの期待に応えられることになると考えます。また、地方のJAと都市部のJAとの連携というものも考える必要があると思います。役割は違えども、全国JAのめざすべき方向は同じです。このような難局をチャンスと捉え、JAグループ一体となって頑張っていきましょう。
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