JAの活動:JAトップアンケート 今、農業協同組合がめさずこと
【JAトップアンケート】JA四万十 武政盛博代表理事組合長 「買取販売強化が目標」2015年11月12日
今回は、JA四万十の武政盛博代表理事組合長のご意見を掲載する。
JA四万十
武政盛博代表理事組合長
回答日:2015.9.30
【問1】あなたの農協では、農業・地域に対し、どんな役割を果たそうと考えておられますか。今後もっとも重要な役割だとお考えの内容をお書きください。
単純にJAの組合員農家が生産量を拡大し、多くの所得を挙げること。農業者の所得アップによって地域経済が豊かになり、暮らしやすい地域社会の確立に繋げたい。地域社会は農業者、地域住民を区切るような隔たりではなく、一緒になって家族的な?がりを保ち助け合い、1つの集合体として地域社会が成り立っている。お互いに相関関係もあり、その中でJAは総合事業の強みを活かし、中心的な役割を果たし、地域貢献する必要がある。
その為、職能組合、地域組合の両面で機能することで、地域農業の振興や地域経済、地域社会的にも貢献できる組織であり続ける必要性を感じている。JA事業のほとんどが地域インフラにも?がっている。地域経済を考えても地域間収支、県間収支をプラスにする為には、この地域では農業(1次産業)の発展しかないと考える。
当JAの目標は、大きく2つに分けて、1つは「販売高を意識した地域農業の振興と担い手を核とした生産基盤の拡充」で地産外商に繋げたい。販売高を伸ばす目標をJA役職員が共有し、手段として米など買取り販売を強化することで農家所得に繋げ、新たにショウガなどの買取り販売にもリスクもあるがチャレンジしたいと考えている。生産量を伸ばす為、人(担い手)の育成、JAが事業主体として生産施設整備等へこれからも積極的に投資も行い、力を入れた取り組みとしたい。もう1つは「食と農を基軸とした参加・参画型事業展開と教育文化活動」を拡充し、食農教育を中心に、組合員始め地域の人が趣味などを活かし、自ら進んで事業参加・学習ができ、自然にJAに集える目的別組織を多く作ることを両輪に地域組合としても大きな役割を果たしたい。
私たちの地域は以前、米の単作地域で園芸は後進地域であったため、県の補助事業を受け、施設野菜でのレンタルハウスを中心に30年余り進め一定の面積増に繋げてきたが、最近の傾向として新規参入者より高齢者のリタイア組が多く増反に?がらなくなってきた。そこで担い手対策としてI・Uターン向けの就農相談会、レンタルハウス説明会をJA独自で年数回行い、昨年は11名ほどが新規就農の実績に?がり、地道な取り組みの大切さを痛感した。
また、認定農業者は専業農家のため、地域農業の担い手にはなりにくいと考えており、多様な担い手(守り手)として定年帰農者、女性、二種兼農家等などが組織できる集落営農組織の育成に積極的に取り組んできた。集落営農を維持・発展さすためには経理を一元化した法人化をめざし、JAとして出資、経営指導することで、JAとのつながりを重視し、1つの大きな経営体となり得る支援として、集落営農組織には行政の助成に加えJA独自での様々な支援もメニュー化して強化を進めている。
【問2】問1の役割を果たすうえで、今、農業・地域での最大の課題は何ですか。
JA四万十管内では、全国の中山間地と同じように、人口の減少(農業者の減少)、少子超高齢化社会の進展、就農者の減少と耕作放棄地の増加等が着実に進んでいる。特にこれらの要素は地域経済の活力源である生産力の脆弱化へと進み、地域農業の衰退や地域事態が壊滅に?がり兼ねない状況になっており喫緊の課題と考えている。
生産・販売を上げるため、さらなる対策が必要で行政との連携も必要だが(1)担い手・守り手(作る人づくり)の育成、(2)生産基盤整備の拡充、(3)新たな技術開発による反収アップ、(4)JAの販売力の強化、(5)生産コスト削減のため、生産資材の供給単価の追求、(6)出荷・流通経費の圧縮、(7)新規導入作目の開発、(8)経営指導の充実、(9)JAとして対応できる人づくり・増員などが課題と考えている。
【問3】問2の課題を解決するため、もっとも力を入れようと考えておられることは何ですか。
(1)担い手づくり戦略に基づき、あらゆる機会(JA単独以外も含め)を通してI・Uターンも含めた新規就農相談会を開催、1人でも多くの就農者の確保。
(2)地域農業振興計画に基づきレンタルハウスやアパートハウス(仮称)などJAが事業主体となった生産施設設備の拡充。
(3)環境制御技術(炭酸ガス発生装置・環境測定装置・循環扇)、電照、連作対策での養液栽培など導入し、反収アップによる生産量の拡大。
(4)販売面では遠隔地のハンディは県単位の共同販売で優位性を保ち、一方JA独自の米の買取り販売戦略の拡充とショウガ等新たに買取り販売の取組強化。
(5)市場価格調査に基づく全農へのロット・予約・配送コスト等反映した供給価格提案、生産資材の仕入れ価格の競争入札採用での価格低減策の実施。
(6)出荷資材価格の競争原理の追求、選果作業の人的効率化、輸送経費の圧縮、作業機器の導入による効率化と諸掛経費の削減。
(8)県との連携による経営指導による数値化による経営改善(家族面談による経営状況の把握)
(9)経済事業への人的シフト強化による出向く体制や組合員ニーズにスピード感を持って対応できる人づくりの実践などに力を入れる。また、県域での移住促進を進めており、農業分野へ取り込むため、あらゆる研修制度を活用しながら、JA主導で、農を学び就農に?がる一体化戦略の策定と実践したい。
【問4】問3に関連して、第27回JA全国大会議案では「9つの重点実施分野」を掲げています。このうち課題を解決し、貴JAがめざす姿を実現するために、もっとも重要と考えておられる事項を3つあげてください。また、その分野において、どんな取り組みを考えておられるのか、具体的内容をお書きください。
a=担い手経営体における個別対応
(具体的取組内容)
1.担い手経営体には大規模、中規模、小規模(多様な)があり、それぞれ1つの規模の担い手だけでは産地や地域農業を守れないと思う。産地の強さは、大・中・小規模のバランスが大切で、今の大規模一辺倒の風潮があり、効率や大規模化も必要であるが、これらの追求だけでは地域農業は成り立たない。
2.大規模化の利用促進には,JAの良さや利点を知ってもらうため、出向く機会を多くする必要があり、一定の専門職の増員が欠かせない。又、品質や価格帯の情報としてホームセンター等の調査の徹底による仕入れ価格交渉も大切で利用可能な価格帯へのJAとしての戦略の構築。
3.新たな担い手に対しては、I・Uターン問わず、就農相談会の開催、就農支援体制をJA・行政の連携のもと確立し、育成に努める。
b=マーケットインに基づく生産・販売事業方式への転換
(具体的取組内容)
1.地域内外での担い手農家から優位性を持った買取りの拡大、その為、消費者・実需者中心に精米販売を中心に玄米まで直接販売の拡大。
2.仁井田米(四万十米)ブランド力を活かした生産とPR、独自販売による農家手取りの最大化。
3.直販所を核とした消費者目線での地消地産運動の推進
4.地元産飼料米の活用にこだわった窪川ポーク(米豚)のブランド化と販売拡大に向けた推進。
5.農商工連携による加工品の開発や6次産業化による域内雇用拡充と有利販売の確立。
i=准組合員の「農」に基づくメンバーシップの強化
(具体的取組内容)
1.食や農に基軸にした食農教育や各種の文化教室、目的別組織をもっと増やし、正・准組合員始め地域の住民も含め参加してもらえる事業の構築。
2.事業を通して准組合員の加入への促進をする。准組合員向けの新たな交流会を開催し、意見交換の場つくりによる意思反映への挑戦。
3.准組合員にも運営参加を規定し、法的に許せば、ある一定程度(20%)の総代も取り入れるべきで組合員のコンセンサスを得たい。さらに将来的には役員(理事)登用へ進めていきたいと考えている。
【問5】第27回JA全国大会を機に、JAトップとして内外に発信したいお考えをお書きください。
人口減(組合員)、少子・高齢化、担い手(守り手)不足、農業の持続性すら危ぶまれる現状で、これまでも、これからも農業者(組合員)の所得増大、農業生産の拡大は最大のテーマであることは間違いない。そのため、地域全体で水田の基盤整備や園芸施設の建設に長年取り組んできた。また、農業の担い手として認定農業者の育成や担い手不足の対応策として、新規就農への機会確保、JA出資型営農支援センターと多くの集落営農組織(守り手)を有機的に繋げ、地域農業や地域を守る手立てとしたい。
JAの販売面では、都市と遠隔地であり、流通コスト販売網を考えると、県域がまとまっての共同出荷・販売は優位性の面からも不可欠で、一方、農業者所得を考えると、ブランド化や差別化を戦略とした独自販売も必要でもある。米の買取り販売は平成17年から手がけており、経営リスクもあるが一定の評価も頂いている。ショウガなどは販売に1年かかるため、10か月に分けて安定収入を図るため、年10回の仮払いを制度化し、長期販売ゆえの農業経営の安定化にJAも努めている。
また、経営の効率化を図るため大規模化への進展も一定進めてきたが、我々JAの原点である家族農業を何か置き去りにしてきた感もある。地域や地域農業、農地・水・景観・自然、を守ってきたのは正に大規模農家だけでなく、多くの小さな家族農業ではなかったのか。我々組織は零細な規模で自立できない農家が、まとまって資材購入したり、共同集出荷施設整備や共同販売による小さな力を結集することで、大きな協同の力を発揮、企業にも対抗して来たし、大きな役割も果たし存在感も保ってきたと考えている。
JA大会でもあたかも大規模化ありきの感じすらすることも多い。それを否定する訳ではないが、多くの小さな家族農業が地域や地域農業を守ってきたことも間違いないと思う。地域農業は、大規模農家、中・小規模農家、集落営農などがバランスよく正三角形のような形態の農業地域こそが我々の向かうべき方向ではないかと思っている。
地域で考えると、農業者も地域住民も1つの器の中で生活し、そのインフラ的機能を持つJAが中心でなくてはならないと思う。その為、組合員、准組合員・地域住民が一緒に活動できる事業展開こそが、JAのその役割であり地域貢献することになる。
あぐりスクール、女性大学、農業塾等食農教育や体験学習、文化教室など様々な企画をして参加・参画してもらい地域貢献にも?がる活動の身の丈に応じ精一杯取り組みたいと思う。准組合員に上記のような地域共同体的発想で意思反映ができる運営参画ができる方向性を正組合員にも理解を得ながら早急に示す必要性を感じる。地域ではなくてはならない組織体であり続けるために。
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