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JAの活動:JAは地域の生命線 いのちと暮らし、地域を守るために 2017年今農協がめざすもの

【インタビュー・JA福岡中央会倉重会長】農業者所得・農業生産拡大に挑戦2016年12月24日

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組合員との対話を通じて着実に実践
インタビュー・倉重博文JA福岡中央会会長
聞き手:高武孝充前JA福岡中央会水田農業対策部長

 TPP批准と関連法案の国会通過、規制改革推進会議農業WGの全農、農協を解体するともいえる「意見」をどう捉えているのか? またJAグループ福岡としてどう自己改革に取り組んでいくのかを、倉重博文JA福岡中央会会長に聞いた。聞き手は高武孝充 前JA福岡中央会水田農業対策部長。

 ――まず、TPP批准の衆参両院通過をどういう風に受け止めていますか?

倉重・高武対談 私たちは、TPPについては日本農業が崩壊するという危機感だけではなく、日本の形が変わるという確信を持って多くの団体と歩調をとりながら一貫して反対の立場を取ってきました。この姿勢は今も変わっていません。従って、TPP批准の衆参両院通過については今も憤りを腹の底から感じています。安倍総理の「自民党は強行採決など考えたことはない」という国会答弁には呆れています。アメリカの次期大統領が批准どころかTPPには反対だ、と言っているのに何故急いで批准したのか理解できません。むしろ、日米二国間のFTAで韓米FTAのように更なる譲歩を要求されるのではないかと心配しています。もともとアベノミクスは国民を見るべきところにGDPなど国力を見ています。農業者を見るべきところに農業生産力を見ています。だから、一般企業の経営者に「いずれ農地はあなたたち企業のものになります」とか、「農業を輸出産業にする」などの軽い発言が出るのでしょう。「農村の所得を倍増する」「美しい農村を守る」という言葉が空言に聞こえます。
 コンビニでのおにぎり1個130円のうち農業者の手取りが16円と聞いています。農産物の輸出が増えても農業者の所得が増える保証はありません。私は、長い間協同組合人として生きてきました。こういう空々しい言葉を聞くと、地域で頑張っている組合員農家の顔が浮かんできます。このままでは終わらせないと心底思っています。必ずTPPの国会批准に対する総括を行う必要があると考えています。

 ――会長の気持ちは、痛いほど私の心に響きます。次に政府の規制改革推進会議農業WGは11月11日「農協改革に関する意見」に対する会長の率直な考え方をお聞かせください。

福岡中央会 倉重会長 端的に言うと、政府が進める「農協改革」は、JAの自己改革によって農業者の所得増大に寄与するように5年間の猶予が与えられました。「農業改革」がいつの間にか「農協改革」にすり替わり、農業・農協の現場を全く知らないメンバーによるあまりにも偏った意見としか思えません。しかし、素人では書けない部分もありますから政府の誰かが入れ知恵をしたということも考えられます。だから余計に腹が立ちます。
 何故かというと、TPPの集中審議でSBS米の「調整金」問題が出ました。私の知るところでは、2016年度第1回目の結果ではシェアが高い中国産米輸入業者の政府買取価格が1キロ198円です。輸入業者の中国産米買取価格は1キロ80円程度と言われていますからその差額118円の中から40~60円が国内卸売業者に「調整金」として流れた、と聞いています。60円とすれば60キロあたり3600円安くなります。マスコミも取材してそういう報道を行いました。ところが農水省は「そうところまで調査はしていない。これ以上調査を進めると民間組織の自由な活動に対し不当な介入になりかねない」という答弁を繰り返し真相は闇の中に葬られてしまいました。
 「農協改革に関する意見」は政府の管轄下にある規制改革推進会議が出したものですから過剰な不当介入だと言わざるを得ません。同じ政府の中で都合の悪いときは不当な介入は避けると言い、反対の時は平気で意見を言う。まさに政府の姿勢の一貫性が問われる重大な問題ではないかと考えます。
 少し、具体的に見ていきますと、第一に「全農の購買事業の見直し」として資材などの情報・ノウハウの提供などサービス業に徹し、1年以内に新しい組織へ転換し、関連部門の生産資材メーカーへの譲渡・売却を進める。第二に「全農の農産物販売」は1年以内に委託販売をやめて全量買取とする。第三に全農改革に進展が見られない場合は、「第二全農」の設立推進など国はさらなる措置を講じる。第四に「JAの信用事業」として農林中金への譲渡を進め3年後には信用事業を営むJAを半減する。組合員勘定は直ちに廃止、准組合員の利用規制についての実態調査等々です。
 これは農業者の所得増大に寄与するどころかリスクを負うことにもなりかねない暴論です。明らかにJAの解体を狙った内容であり地域に根ざした「相互扶助」「共存共栄」など協同組合の理念を全く理解されていない方々の一方的な意見としか思えません。その後、自民党によって規制改革推進会議の意見は修正されましたが、その本質は大きく変わっていないと思います。政府が提唱する「地域創生」とは相反する内容となっています。
 わが国の総合農協は国際協同組合連盟からも高い評価を受けています。もし、この意見が政府の方針として推進されるならば、協同組合全体を否定することを意味するものであり、私達はJA以外の協同組合との連携は当然、広く一般国民の皆様の理解も求めながら、徹底して闘います。
 200年近く存続してきた協同組合がなくなることがあってはならないと確信しています。

 ――会長の「徹底して闘う」という覚悟は高度な政治判断を必要としますね。

高武氏 まず「農業者の所得増大」を掲げざるを得なくなった背景には、1991年の牛肉・オレンジの輸入自由化をきっかけとした輸入農産品の増大に歯止めをかけられなかったことがあり、そのことについての政府と政治の責任が問われるべきだと考えています。その責任をJAや農業委員会に押しつけられるのは非常に心外です。
 「JAは政治に中立であるべき」ということを十分承知の上で、敢えて言えば選挙での農政連・農政協推薦は、今後は政党中心ではなく組合員のための政策中心であるべきと思っています。こうした議論を地域ごとに起こしていく時期に来ていると考えています。

 ――会長の考えを全国的に展開すれば、佐賀県知事選結果や東北での参議院選挙の結果を考えると相当インパクトがありますね。

 ――それでは最後に、地域の生命線としてJAが自己改革でめざすものについて、福岡の特徴をふまえて会長の考えを聞かせて下さい。

 第41回JA福岡県大会(平成27年11月)で「持続可能なくらし・農業、"ふるさと福岡"の実現~自己改革を通じた さらなる農業振興と地域への貢献~」と称した3カ年の中期方針を策定しました。羅列的になりますが紹介しましょう。
 第一は「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」への挑戦です。
 第二は「地域活性化」への貢献です。
 第三は組合員の「積極的な参加と利用」の促進です。これは准組合員との接点を強化していくことも盛り込んでいます。農業経営移譲で准組合員になった人もいますから政府が言う利用制限などは農協法に抵触すると考えています。
 第四は「食」「農」「協同組合」にかかる国民理解の醸成です。
 そして第五に、自己改革の着実な実践を担保する仕組みと安定経営基盤の確立です。
 そのうえで、最後に結集軸としての新たな県中央会の構築です。
 また、大会決議にもとづき、JAグループ福岡の新たな組織再編について、来年度から県下1JA体制の研究も進めていくこととしています。
 これらを各JAが一歩一歩組合員との対話を通じて実践していくこと、このことが最も重要だと考えています。毎年、検証しながら必ずやり遂げるつもりです。

 ――JAは地域に根ざした組織ですから夜逃げするわけにはいきませんね。今、紹介された中身が具体的にどう実践されたかを、いずかの機会に詳しく聞きたいと思います。
 本日はどうも有難うございました。

<インタビューを終えて>
 倉重会長は単協時代から協同運動で生きてきた生粋の協同組合人である。今回のTPP国会批准、規制改革推進会議の踏み込みすぎた「農協改革に関する意見」については、根源は同一であると確信し、腹の底から憤りを感じられていることが伝わってきた。「空々しい言葉を聞くと地域で頑張っている組合員農家の顔が浮かぶ」「協同組合がなくなることがあってはならないと確信している」自己改革へのゆるぎない意気込みを感じた。(高武 孝充)

(写真)対談風景、倉重博文 JA福岡中央会会長、高武孝充 前JA福岡中央会水田農業対策部長

※高武氏の「髙」の字は正式には異体字です。

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