JAの活動:年頭あいさつ2017
【年頭あいさつ】山本有二氏(農林水産大臣)2017年1月1日
明けましておめでとうございます。
平成29年の新春を迎え、皆様の御健勝をお祈りいたしますとともに、我が国農林水産業の一層の発展に向けて所感の一端を申し述べ、年頭の御挨拶とさせていただきます。
昨年は、熊本地震や度重なる台風など、多くの災害が発生し、農林水産業も大きな被害を受けました。農林水産省といたしましても、被災された皆様が、農林水産業に対する希望をもって、前向きに復旧・復興に取り組んでいけるよう、引き続き、全力で支援してまいります。
東日本大震災については、津波・原子力災害からの農林水産業の再開支援、科学的根拠をもった風評対策、輸入規制の緩和・撤廃の働きかけ等の単なる復旧にとどまらない将来を見据えた復興に引き続き全力で取り組んでまいります。
昨年11月、「農業競争力強化プログラム」をとりまとめました。このプログラムは、農業者の所得の向上を図るため、農業者が自由に経営展開できる環境を整備するとともに、農業者の努力では解決できない構造的な問題を解決しようとするものです。具体的には、生産資材価格の引下げや流通・加工構造の改革、生乳流通改革のほか、土地改良制度の見直しや、収入保険制度の導入といった改革を盛り込んでおり、これらの改革を確実に実現してまいります。
農林水産省一丸となって、農林水産業の成長産業化、「強い農林水産業」と「美しく活力ある農山漁村」の実現に向けて、全力をあげてまいります。
TPPについては、協定及び関連法案が、昨年12月、国会で承認・成立いたしました。我が国農林水産業の体質強化は待ったなしの状況であり、引き続き、体質強化に向けた各種施策を実施してまいります。
以下、本年における農林水産行政の主な課題と取組の方針を申し述べます。
【食料・農業・農村政策】
「農業競争力強化プログラム」に盛り込んだ改革を確実に実現してまいります。
農業者の所得向上を図るには、生産資材価格の引下げと流通・加工構造の改革が極めて重要です。
生産資材に関する法規制の見直しや、業界再編等を推進することにより、生産資材業者の生産性を高めてまいります。また、農業者が生産資材の購入先について、価格等を比較して選択できる環境の整備等により、良質かつ低廉な生産資材の供給を実現してまいります。
また、流通・加工構造の改革については、農業者・団体から実需者・消費者に直接販売するルートの拡大や、中間流通の抜本的な合理化の支援などにより、業界再編等を推進します。
生産資材業界や流通・加工業界の業界再編を進めるためには、全農の生産資材の買い方や農産物の売り方の見直しも極めて重要です。農協改革法等に基づく農協改革の着実な推進を含めて、農協系統との対話を積み重ねながら、農業所得の向上に全力をあげてまいります。
生乳の流通については、指定団体に委託販売する生産者のみに補給金を交付する仕組みを見直し、生産者が自由に出荷先を選べる制度に改革いたします。具体的なスキームについては、法案提出に向けて、関係者の意見を聞きながら早急に調整を行ってまいります。
農地中間管理機構による担い手への農地の集積・集約化を更に進めるため、土地改良制度の見直しにも取り組みます。農地中間管理機構が借りている農地のほ場整備事業について、農地所有者等の費用負担をなくし、事業実施への同意を不要とします。
また、自由な経営判断に基づき経営の発展に取り組む農業経営者を育成するため、品目の枠にとらわれずに、農業経営者の農業収入全体に着目したセーフティネットとして、収入保険制度を導入いたします。
人口減少社会を迎えて国内の食市場が縮小する一方、世界全体の食市場の拡大が見込まれる中、農林水産業が成長産業となるためには輸出を促進することが不可欠です。
このため、平成31年の農林水産物・食品の輸出額1兆円目標に向けて、「農林水産業の輸出力強化戦略」を実践していくとともに、昨年11月に策定した「農林水産物輸出インフラ整備プログラム」に基づき、ハード面とソフト面のインフラ整備等を整合的かつ計画的に進めてまいります。加えて、生産者の所得向上につながる日本産品の輸出サポート・プロモーション・ブランディングを一貫して行う機関を創設するとともに、地域商社等の取組の促進、JAS法に基づく制度のあり方の見直し等による国際標準化を見据えたJAS規格や日本発の食品安全管理規格等の充実・普及など、輸出拡大を更に促進するための取組を進めてまいります。
米政策改革については、昨年11月にお示しした29年産米の生産数量目標等が、行政による最後の配分となります。30年産以降、行政による配分に頼らずとも、生産者自らの経営判断により、需要に応じた生産が行われるよう、引き続き、麦、大豆、飼料用米等の戦略作物の本作化、需給に関する産地銘柄ごとのきめ細かい情報提供等を進めるとともに、県、市町村や関係団体が構成員となる農業再生協議会が地域営農の戦略本部として機能するよう環境整備に努めてまいります。
また、高収益作物への転換を促すため、平場・中山間地域などにおける水田の畑地化・汎用化や、水田地帯における収益性の高い野菜生産への転換を支援します。
傾斜地などの条件不利性とともに、鳥獣被害の増加等により厳しい状況に置かれている中山間地域について、地域の特色を活かしながら農業を振興していくことが重要です。このため、実践的な計画の下で、収益性の高い農産物の生産・販売、6次産業化の取組、都市農村交流等、地域の人々が一体となって、農業のみでなく様々な地域資源を磨き上げて所得を向上させる取組を総合的に支援してまいります。
また、農業・農村の多面的機能の維持・発揮を図るため、地域の共同活動、中山間地域等における農業生産活動、自然環境の保全に資する農業生産活動を支援するとともに、改正された鳥獣被害防止特措法に基づき、ジビエ利活用の推進等、鳥獣被害対策の内容を充実させてまいります。
特にこれからは、観光が農山漁村地域の振興の重要な柱となってまいります。訪日外国人旅行者の受入れも含めた農山漁村への旅行者の大幅拡大を図るため、地域の食、古民家、農山漁村景観、農業遺産、農林漁業体験など地域の資源を活用した観光コンテンツの創出、「農泊」の現場での実施体制の整備に取り組むことにより、インバウンド需要を取り込んでまいります。
さらに、農村の美しい田園風景や伝統文化を守るとともに、次世代を担う農業後継者が上質で豊かな暮らしをすることができるよう、豊かな農村資源を活用した活力ある農村の実現や、若者や女性が住みたくなるような魅力的な農家住宅などの生活環境の整備に向けた取組を進めてまいります。
我が国の農林水産物・食品が高く評価される根拠の一つは、その安全性です。引き続き、科学的知見に基づく食品の安全性の向上等に万全を期し、食の安全と消費者の信頼確保に努めてまいります。
【林業政策】
我が国の林業・木材産業は、戦後に造成された人工林が本格的な利用期を迎える中、豊富な森林資源を循環利用しつつ、森林・林業の持続的な発展と公益的機能の発揮を図ることが重要です。
昨年5月に策定した新たな森林・林業基本計画を着実に実行してまいります。路網整備や施業の集約化等により原木供給力を増大させるとともに、川上から川下までをバリューチェーンでつなぐ原木供給体制の構築、規模拡大や事業者間連携による木材加工・流通体制の整備等を推進し、国産材の安定供給体制を確立します。また、CLTに係る政府一体での活用促進や量産化によるコスト低減を進めていくとともに、セルロースナノファイバー等の新たな木材製品・技術の開発・普及、公共建築物や商業施設等における木材利用の促進等により、新たな木材需要の創出に取り組みます。
さらに、森林吸収源対策としての間伐や主伐後の再造林対策を強化するとともに、森林環境税(仮称)の創設に向けて全力をあげてまいります。
これらの取組をとおして、森林資源の循環利用による林業の成長産業化を実現してまいります。
【水産政策】
かつて世界一を誇った我が国水産業の復活を図るため、漁業・養殖業を持続可能な収益性の高い操業体制へ転換させるとともに、水産物の加工・流通、消費の拡大を促進します。
このため、漁村地域ごとに収入向上及びコスト削減に取り組む「浜の活力再生プラン」や、漁村地域が連携し、浜の広域的な機能再編や担い手確保を図る「広域浜プラン」の策定を推進しています。
この地域ぐるみの取組に対して、担い手への漁船のリース導入等の取組を支援することにより、持続可能な収益性の高い操業体制への転換を図ります。
また、海外の需要を取り込むため、HACCPに対応した流通・加工施設の整備や、重要品目の安定生産対策等の輸出に向けた取組を推進します。
さらに、国際的な資源管理の強化にリーダーシップをとって対応するとともに、新調査計画に基づく鯨類科学調査を進め、商業捕鯨の再開を目指してまいります。
これらにより、水産日本の復活を実現してまいります。
以上、年頭に当たり、今後の政策展開を中心に私の所感の一端を申し述べました。
私は、農林水産業こそ、経営意識を持った創意工夫により飛躍的に成長することができる、夢ある産業であると確信しております。若者が憧れ、誇りを持って活躍することができる、そういった農林水産業の実現、夢と希望の持てる農政新時代の創造に向けて全力で取り組み、大いに飛躍する一年としたいと考えております。
農林水産行政に対する皆様の御支援と御協力を賜りますよう、本年もよろしくお願い申し上げます。
平成29年1月
農林水産大臣 山本 有二
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