JAの活動:JA全国女性大会特集2017
【鈴木JA全国女性協会長・石田龍谷大教授 対談】横・世代の連帯が大事2017年1月25日
肌身で実感魅力ある活動を
JA全国女性組織協議会会長鈴木春美氏
龍谷大学農学部教授石田正昭氏
女性の参画はJA改革にとって大きな課題である。JA女性部の組織を広げ、次世代へつなぐため、女性に魅力ある活動はどのようなものか。JA全国女性組織協議会の鈴木春美会長と龍谷大学の石田正昭教授にその方策を話してもらった。
石田 政府の農協改革では、JAの地域活動を評価していないようですが、どう受け止めていますか。
鈴木 そうだとしたら残念なことです。私たち女性組織はくらしの活動を通じて、JAと地域の架け橋となっています。生産者として安全な農産物をつくり、地域のみなさんに食べていただくとともに、老後も安心してくらせるようにミニデイサービスなどの助けあい活動も行っています。私たち女性組織のこうした活動が十分に理解されていないのはつらいですね。
石田 一方で農水省は農業女子プロジェクトを持ち上げています。彼女たちも地元では農業に従事し、そこにくらしもあります。一緒に活動できないものでしょうか。
鈴木 以前、和食アドバイザーの研修で農業女子の方と一緒になったことがあります。皆さんは、和食アドバイザーの資格を各々の経営に活かそうと熱心に受講されていました。一方で私は和食に関する知識を習得し、それを活動に活かしてみなさんに和食の良さを知ってもらいたいというものでした。「個」と「面」と違いはありますが、それぞれ違いを認め合って、一緒に活動できれば新たなパワーも生まれてくるかもしれません。
石田 JAはもっと積極的に和食の良さをPRする必要があるのではないでしょうか。
鈴木 そう思いますね。女性組織は全国のみなさんと郷土料理や、わが家の味、懐かしい味などを募集し、ホームページにアップしています。おかげさまで伝統料理を検索してJA全国女性協のホームページを見つけてくださる方も増えています。これからも様々な方法で活動を知っていただくとともに、和食の良さを発信していきたいと思います。
石田 そうした、女性だからできる活動を通じて、JAの存在価値を知ってもらう必要がありますね。地元のJA利根沼田ではどうですか。
鈴木 JAでのくらしの活動はもっともっと充実したものにできると思います。支店協同活動も女性組織活動とうまく結びつけられれば、もっと多くの人に女性組織を知っていただく機会にもなるし、地域に欠かせないJAとしての親近感もわいてくるのではないかと思っています。
私の属する支部では、年金支給日に窓口にきた人にまいたけご飯をつくって配ったり、手芸品ミニモップをつくって配布したりしていますが、「へえ、農協がこんなことも」と喜ばれています。こうした活動は支店が動かないと、なかなか広がりません。支店長や担当者と一緒に、支店をいかに盛り上げていくかが大切でだと思います。
石田 女性組織の連帯もいいのですが、お嫁さんの世代が横につながることも大事です。それを大切にすると女性組織も元気になるのではないでしょうか。つながりはスマホでできます。
鈴木 フレミズでは、ラインやフェイスブックなどが盛んに使われています。フレミズ交流集会などがきっかけでつながった仲間たちが、それぞれSNS(ソーシャルネットワークサービス)で活動を共有している姿は本当に心強く頼もしいです。全国の若い仲間が頑張っているフェイスブックを見ると、わたし自身も本当に刺激になります。
石田 その点で、農協の広報戦略も根本的に改める必要があります。スマホの活用を全中でも検討していただきたいですね。いずれにしても仲間づくり、横の連帯を、会長の世代だけでなく、さらに若い世代に広げなければならない時代になったと思います。その辺に気づくJAの経営者であってほしいですね。女性のJA経営参画についてはどのように考えますか。
鈴木 女性組織では女性総代や理事など、数値目標を設けていろいろ取り組んでいます。総代については、女性の割合を10%以上にするために働きかけていますが、昔ながらの慣習があり、その中で女性総代を増やせないJAが多いのが実態です。また、数値はあくまで手段でありゴールではないので、ただ達成すれば良いというものではありません。女性総代を増やしながら、従来のJAの総代のあり方を見直すなど、JAには前向きに取り組んでほしいと思います。
わたしの所属するJAでは、総代の事前学習会が1年に1回でしたが、それでは不十分だと思い、 常勤役員との懇談会で、来年の総代会までに数回の学習会開催を申し入れ、約束していただきました。一人ひとりの総代が役割を認識し地域を盛り上げていけるように、女性総代の登用をきっかけに中味を充実させていければいいと思います。私たち女性組織がスローガンで掲げる「ふみ出す勇気・学ぼう・伝えよう・地域とともに!!」は、女性の参画をきっかけに地域とともにJAが変わっていくことにもつながるのだと思います。
石田 「学ぶ」は「真似る」から変化したものです。真似て実行する。案外それに気づいていないのではないでしょうか。
鈴木 そう感じています。スローガンの「学ぶ」は、机に向かって難しい勉強をすることではありません。真似ることからの学びが大切だと思います。仲間づくりのいい事例があれば真似してみる。日ごろの活動でも、同じようなことをしているようで、活動が盛り上がっているところは必ず工夫があるものです。そうした小さな工夫をまずは真似をしながら、自分たちなりにアレンジできる力をつけていきたいです。
石田 農協改革で理事構成が問題になりましたが、JAは自主改革の取り組みとして、これからは自分の意見がいえる理事選びが重要です。女性の総代が発言する場合も、女性組織がバックにいて、みんなでJAの運営について考える仕組みづくりが必要です。
鈴木 地元のJAでは、女性組織と常勤役員の意見交換に女性の総代、理事も参加するようにしています。女性組織の活動を通じて地力をつけ、JA運営にも積極的に参画していけるように、女性組織メンバーの組合員化や女性総代や理事との連携も必要だと思います。
石田 進んだJAでは総代会前に地区座談会で3回くらい学習会をしています。1回ではだれも理解できないでしょう。回数だけでなく、常に情報提供することが前提です。貸借対照表を説明されても事前学習会とはいえません。みんなでわかり合うことが大事だと思います。そもそも総代会資料はワンパターンです。まず活動報告から入るべきで、それなら議論できるでしょう。
鈴木 JA女性組織の存在は知っていても、実は職員も組合員も具体的にどんな活動をしているか知らない人も多くいます。このため、総代会資料の活動報告では、女性組織についても記載を多くしていただければ目に触れる機会も多くなると思います。総代会資料に限らず、JAを利用する人が、その魅力を肌身で実感できるように工夫することが大切だと思います。
石田 そうですね。特に女性組織メンバーだから利用できる商品があってもいいのではないでしょうか。
鈴木 全国連との事業連携の具体策については、いま検討しているところです。JAグループが足並みそろえて、女性組織として加入メリットが出るような取り組みを全国共通で実施すれば、女性組織の仲間づくりにも新規組合員加入にも大きな効果があると思います。それが仲間づくりではないでしょうか。
また、地上1月号で、1300人がおにぎりを作ったという記事をみて思いついたのですが、女性協で「おにぎりの日」を作ろうかという話が出ています。
石田 漁協と連携してノリを供給してもらうのはどうですか。
鈴木 漁連と連携できたらいいですね。それが新しいことに挑戦する勇気ですね。女性協のよさは団結力です。『家の光』と連携して取り組む9月の学習月間では、米の消費拡大について学習します。
米の消費拡大などの課題を、例えば「おにぎりの日」などを通じて「なんだか面白い」と思える企画で、どんどん解決できるとJAの中でも女性組織の存在感が増すのではないかと思います。面白いと思えることが、活動を継続させるためには不可欠で、その活動がみえることが必要です。知恵と工夫と女性のパワーで、JAと地域の架け橋になりたいと思います。
〇対談を終えて
国は「農業の成長産業化」の旗印の下、農業女子プロジェクトの育成に注力している。しかし、このプロジェクトには"個人"という概念はあるが、"組織"なり"連帯"という概念はないようだ。ここがJA女性協とは大きく違う。
本文では触れていないが、鈴木会長とのインタビューの中で発見したJA女性協の新たな役割は、"農業後継者の育成"だ。新しい農業者を作る上で女性なり母親の果たす役割は大きい。実際には男性よりも大きいのかもしれない。職業としての農業に誇りを持つ、それを伝えるのは「生き生きとした母親」の姿ではないか。長期的に見て「JA変革の旗手は女性にあり」を実感した。(石田)
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