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JAの活動:JA全国女性大会特集2017

【ショウガで福井を元気に】1400人がジンジャーガールズメンバー2017年1月26日

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地域とくらしを守るJA女性部の活動JA福井市女性部

 地産地消や加工品づくり、食農教育、高齢者福祉など女性部の活動がJAの事業へと発展した事例は多い。そんなJA女性部の取り組みが福井市では新たな産地形成と地域の元気づくりの大きなエネルギーを生み出している。JA福井市女性部のみなさんを訪ねた。

◆手づくりおはぎが大人気

JA福井市の農産物直売所「喜ね舎 1個120円の「おはぎ」だけで年間5000万円、弁当、惣菜をあわせ1億5000万円の売上げを誇る「企業組合ファームまぁま喜ね舎(きねや)」。平成23年に法人化し現在、女性35人が従業員として働いている。「きねや」とは福井弁で"来てください"の意味だそうだ。  この女性起業はJA福井市女性部のグループ活動が基盤となった。現在、JA女性部は6次産業化をめざす女性グループを支援することを活動の柱のひとつにしているが、そのきっかけになった取り組みである。
 平成13年、JAは農産物直売所「喜ね舎」をオープンする。その際、青果物だけでなく惣菜なども販売しようと、直売所の一画に加工品コーナーを開くことにし、メンバーを女性部から募った。その結果、曜日ごとにグループで担当し惣菜づくりをする体制でスタートした。
加工品も積極的に開発 今や売上げの4割近くを占め、直売所全体の人気商品ともなった「おはぎ」は、そのグループの1つが販売を始めたものだ。同企業組合の現在の代表理事である齊藤久仁子さんによると、「モチ米を使った加工品を提供しようという話がきっかけになって、それなら昔ながらの田舎のおばあちゃんの作り方でおはぎを、と販売をはじめた」という。
 ただし、最初はそのグループが担当する曜日のみ、つまり週に1回しか店頭に並ばなかったのだが、ほどなくして、これが評判に。他のグループも製造を始め、毎日店頭に並ぶようになった。
 ところが、おはぎにしても他の惣菜にしても曜日ごとに作るグループが違うため、利用者から「曜日によって味が違う」といった声が寄せられた。これがきっかけになって、グループを一本化して新たに「ファームまぁま喜ね舎」として組織化することになったのである。
 法人化した現在は女性部とは独立した組織で従業員には非農家の若い女性もいるが、現在も女性部の特産加工部会の一員として位置づけている。
 JAの直売所設置がきっかけになった女性たちのグループ活動が、今では年間売上げ1.5億円の企業に成長し地域の女性の雇用の場も生み出した。「もともと商売っ気がないのが女性部」と齊藤さんらは話すが、こだわったのは家庭の味。それが魅力なのだろう、お彼岸には1石(150キロ)のモチ米を使っても品切れになるほどのおはぎの売れ行きで、評判を聞きつけて敦賀など遠方からも買いにくるという。特別新しいメニューを開発したわけではない。むしろ地域の消費者は伝統の味と地元の農産物を使った地道な取り組みに信頼を寄せているといえそうだ。

◆活動の源は集落座談会

齊藤久仁子さん 自分たちで作った野菜を自分たちで使って昼食を提供する食堂もある。平成20年にオープンした「かあちゃんキッチン」がそれだ。
 仕事先で定年を迎えた女性たちが、家の畑で作っている野菜を使った食事を出す食堂と惣菜をAコープに出店するグループを作った。その後、JA本店前に移転。28名のメンバーがまだ夜も明けない早朝から自分たちの野菜などを持ち込んで昼食の準備を始める。自信をもってつくった安全・安心な野菜で本当の家庭の味を提供する、がモットーだ。食堂では毎日100食程度を販売、他のAコープ店に500~600食の惣菜を配送している。
 代表の阪下利美さんは"かあちゃんキッチン"を始めて「女性が元気になってきました」と話す。食堂は一人暮らしの高齢者の利用も多く地域の人々の暮らしを支えていることは間違いがないが、メンバーの女性たち自身が元気に生きていくための活動でもあると実感しているという。今はランチタイムが終了すると閉店するが、できれば喫茶コーナーとして営業時間を延ばし女性部メンバーが集う憩いの場にすることができれば、と夢を描いている。
 そのほか女性部には惣菜製造の「菜っぱや」、ジャムなど加工を手がける「愛菜夢工房」などいくつもの農産加工グループがあり、それぞれの支部を拠点に活動を続けている。
 こうした女性たちの活動が活発に続き広がっているのは、全部員に女性部活動について丁寧に説明する努力を続けてきたからだろう。
 「毎年2月から3月にかけて集落単位で女性部生活座談会を開いています。女性部活動の意義や魅力、その年の重点的な活動内容などを末端の部員にも徹底してきました。これが1年の活動の始まりです」と小川喜久子部長は話す。

◎女性起業育成を 女性部が支援

右から小川喜久子部長、吉村眞理子副部長、岡嶋百合子副部長、 28年度の部員数は2246人。25あるJA支店に支部があり支部長がとりまとめ役となる。集落数は管内全域で250。残念ながら現在ではそのすべてに女性部組織が存在しているわけではないが、組織のある全集落で開く座談会での活動説明や意見交換が女性部活動の基礎をなしている。
 こうした場で女性部として加工グループを支援していることや、食や健康など関心のある目的別にグループをつくり活動の輪を広げる楽しさ、あるいは伝統料理など技を持つ人をカルチャーリーダーとして募集していることなども説明する。
 この集落座談会での呼びかけから始まり、今や大きな運動となって地域農業振興にも貢献しているのが「ショウガで福井を元気に」を合い言葉に取り組んでいる「ジンジャーガールズ」である。

◆農村女性の豊かな暮らし

 もともと女性部には営農部会があり、地産地消や家族の健康のため新しい野菜づくりにチャレンジしようと部員に呼びかけるのは女性部として大切にしてきた活動だった。種や肥料などはJAが準備し営農指導員による研修会も開いてきた。
市場出荷用の新ショウガを収穫する「ジンジャーガールズ」のメンバー この取り組みの一環として安全・安心にこだわった「女性ブランド野菜」づくりもめざそうと、平成24年の集落座談会の場で全部員に提案されたのがショウガづくりだった。地域でも初の栽培、JAが種を供給、作り方の学習会からスタートした。初年度は409人が栽培にチャレンジし、2年目にはメンバーは698人となり直売所への出荷と加工品づくりにも取り組んだ。
 その第一弾が「生姜しょうゆ」。メンバー自らショウガをきめ細かくすり下ろし、老舗醤油メーカーと協力して商品化した。ショウガのすり下ろしには、すでに活動している農産加工グループの加工所を利用することができた。これまでの活動の蓄積が新たな取り組みを後押しするのに役立ったのである。
 その後、アイスクリーム「しょうが愛す」、「生姜ごはんの友」、「生姜あられ」、ジンジャーエール「福井生姜えーる」などを開発、販売も直売所出荷だけでなく市場出荷も実現した。
 初年度の販売高は27万円。それが5年目の28年のショウガ出荷量は市場・直売所・加工用計で約10.8t、販売金額計は約920万円となりメンバーは1414名にまで増えた。
 スタートから3年後には営農部会から独立しジンジャーガールズ部会となった。仲間を増やして生産量を増やし福井をショウガ産地とすることで所得向上につなげることももちろん目標ではあるが、ジンジャーガールズはショウガづくりを健康づくりや生きがいづくりにも発展させようというのが活動方針だ。
 実際、ジンジャーガールズには90歳を超えるメンバーがいる。その地域は高齢者ばかりの中山間地で耕作放棄が増えることも懸念されていたのだが、仲間に会えるのが楽しいから、と高齢者が集ってショウガづくりを行い、結局はいちばん生産量の多い地域になったという。ショウガづくりは女性農業者が活躍する起爆剤になっている。
 女性部といえばJAの生活指導員の担当と思われがちだが、同JAは生活指導員と営農指導員が連携しながら役割を果たしている。女性部の事務局であるJA福井市総務企画部の渡辺ひろ子次長補佐は、その2つは「農村女性の暮らしを豊かにするための両輪」なのだと話す。安心・安全な農産物を自分の手で作る―、それが農村女性の活動の出発点であり豊かな地域づくりにつながる。JA福井市女性部の活動にはそんな確信が感じられる。そうした女性の視点を各地でJA運営に反映することも期待される。

◎女性に支持されるJAづくりへ
JA福井市・豊岡 英二代表理事理事長

JA福井市・豊岡  英二代表理事理事長 女性部の活動がきっかけになったJAの事業には、子どものエコプロジェクト活動もあります。 読み終わった新聞や本、段ボールなどを集めるステーションをAコープに設置し、子どもが持ち込んだ重さを計り図書券に引き換え、子どもたちの通う小中学校へプレゼントされるというリサイクル活動です。 量販店などが同じようなことをしていますが、持ち込んだ個人に還元されるだけです。JAは個人ではなく子どもたちの学校に還元する取り組みで、これは女性部の始めた運動です。
 JA改革の方向として、女性が利用したいJAづくりに、まず踏み込まなくてはいけないのではないかと思っています。JA福井市の経営管理委員会も28人中女性は1人。女性総代もほんの6.2%しかいません。女性が利用したいと思うJAづくりに女性参画が大事です。
 そのためには組合員だけではなくてもっと地域を巻き込んだ活動をしていく必要があると思っています。リサイクル活動も、地域で元気な6次産業化をめざすジンジャーガールズの取り組みもその例です。
 やはり女性部に期待されるのは食と農を中心にした活動で、そこから地域にすそ野を広げてもらいたいと考えています。それによって准組合員も女性部に加わるなど、新たなにJAに参加してもらう人を増やしていかなければならないと考えています。
(写真)JA福井市の農産物直売所「喜ね舎」、加工品も積極的に開発、代表の阪下利美さん、右から小川喜久子部長、吉村眞理子副部長、岡嶋百合子副部長、市場出荷用の新ショウガを収穫する「ジンジャーガールズ」のメンバー

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