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JAの活動:第63回JA全国青年大会特集号

青年部が世代を超え食農教育2017年2月10日

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将来の仲間作りも
現地ルポ:JA兵庫六甲岩岡青年部

 兵庫県JA兵庫六甲の西神戸農業経営者協議会岩岡青年部は若いメンバーのJA青年部だ。部員の減少で一時解散していたものを15年前に再結成した。地域農業の担い手として次世代農業者の組織化を進めていたJAの呼びかけに応えたものだが、メンバーのなかには、保育園児や小学生だったころ、父親あるいは祖父の世代が青年部活動で取り組んだ「食農教育」で行っていたサツマイモ掘りなどで、農業の楽しさを覚えていた者も少なくない。一度は途切れても、先輩たちが播いた種は、世代を超えて実を結んでいる。

先輩の意思を引き継ぎ、再結成した岩岡青年部のメンバーら 岩岡町は神戸市の西の端にあり、一部で宅地化が進んではいるものの、ほとんどの農地が農業振興地区内にあり、大消費地に近い条件を生かした野菜栽培が盛んだ。かつては青年部の活動が盛んだったものの、世代の変わり目もあって部員が減り、解散していた。しかしその後、農業に魅力を感じる若い後継者が増え、15年前、新規就農希望者も含めて20代から30代前半の農業後継者14、15人が集まり、再結成となった。
 最初は、町の保育園でサツマイモを中心にした夏野菜の定植を園児たちと一緒に行ったのが始まり。いま最年長で、28歳で就農した副会長の西海和也さん(43)は、「集まるだけではなく、何か具体的な活動をしなければだめだという話になり、保育園で園児と一緒にサツマイモ苗の定植を始めた。収穫の時は親子で参加して土に親しんでもらう。これが青年部の役割だと考えた」という。この保育園との交流は今も続いている。
 その後、同じように小学校でも食育がカリキュラムに取り入れられ、校長やPTAの相談を受け、小学校3年生を対象に岩岡特産のキャベツの栽培も始めた。これも現在まで続いている。小学校では青年部員が野菜の先生となり、作業だけでなく、農業についても教える。
 キャベツ栽培はこれだけでは終わらない。小学校の体育館を使って、キャベツと一緒に植えた大根を模擬セリで保護者に販売。これによって、作るだけでなく、収穫して自ら販売することも経験し、青年部の職業である農業を小学生や保護者に知ってもらう。小学生のキャベツ栽培は、野菜を作って楽しかったで終わるような単なる食農教育活動ではなく、職業としての〝職農教育〟活動というわけだ。
 前会長の安尾拓也さん(28)は「これからも、青年部は岩岡の農業の未来を担う子どもたちへの食農教育活動を行うと共に、職業としての職農教育活動を継続していく」と言い、岩岡の子どもたちが、農業者として将来、青年部の盟友になることも夢見る。
小学生と野菜を収穫(提供=JA兵庫六甲岩岡支店) だが、自分たちのこうした想いとは別に、子どもたちは農業の魅力を本当に理解してくれているのだろうかという不安があった。そこで青年部はキャベツ栽培を体験した小学生にアンケート調査を実施。結果は期待を裏切らなかった。ほぼ全員が、野菜づくりは楽しかったと答え、10人に1人が、将来岩岡町で農業をしてみたいと回答した。「予想以上の回答に盟友たちはびっくりした」と安尾さん。
 一方で、「農業はしんどそう」「かっこよくないし、汚れるからやりたくない」というのも多かった。それなら、おしゃれな農業をみせようと考え、取り入れたのがミニトマトのソバージュ栽培だ。なるべく手をかけない伸び放題で育てる栽培法で、つるをハウスの骨組みに這わせ、ミニトマトのトンネルをつくり、子どもたちを喜ばせた
 これを提案したのは青年部唯一の女性部員だった。先のアンケートで、子どもたちが自分でつくってみたい野菜のトップだったのがトマトだった。それが若い女性の感性にフィットし、ミニトマトのソバージュ栽培につながった。だれも栽培の経験がなかったので、種苗会社に相談し、試行錯誤しながらの栽培だった。この成功体験から、翌年は保育園でカボチャのソバージュ栽培に挑戦。空中にぶら下がったカボチャに園児たちは目を丸くしていたという。
 こうした地道な食農教育活動を続けていて、昨年春には青年部員を喜ばすことがあった。地元の保育園で、改装工事の際にできた白い壁にヒマワリの絵を描くように言ったところ、普通は花から描くところを、園児たちは土と種子から描き始め、上に向かって茎、葉、花へと順に描いていったという。ヒマワリは種から生長して花を咲かすということを、青年部と一緒に種をまいて、無意識のうちに覚えていたのだ。
 園長から「子どもは実際に土や野菜に手で触れ、脳を刺激させることが一番の経験として残る。園児の時期にどれだけ感性を伸ばすかが大事」ということを教えられ、盟友たちは自信を持ったという。
 会長の安福信哉さん(30)は「青年部に誘われたとき嬉しかった。真っ先に思い出したのは小学校の食農教育で、前の青年部と一緒にトウモロコシを作って食べたことだった」という。同じ過程を踏めば、青年部がいまやっている食育教育は次世代にもつながるはず。西海さんは「いま、自分の娘も食育を経験しているので、それを覚えていてくれたらいいな」と、期待する。
 岩岡青年部の活動は岩岡町や西区内にとどまらない。JA兵庫六甲の「食農せんせい制度」に参加し、サツマイモの定植作業や餅つき大会などの出張授業も行っている。神戸市の若者と企業と農漁業者が連携した新たな商品づくりを進める「にさんがろく」プロジェクトなど、他団体との交流にも積極的に取り組んでいる。一方、地元でもJAの依頼で水稲苗を配達。水田へ直接配達する仕事は、JA職員より地元の地理に詳しい青年部員の方が早い。こうした活動で地域での存在感を高めている。

◆    ◇

 岩岡青年部のメンバーがつくっている作目はばらばらで新規の作目が多く、親世代の慣行のやり方は通用しない。「それだけに情報交換が必要になる」と西海さん。例えば、ハウス野菜のチューブ灌水は盟友から学んだ。技術だけではない。「作目は違っても、作業の時間配分など、経営のやり方で学ぶことが多い」という。また、青年部は神戸市西区内のスーパーにインショップを出している。市内のスーパーと契約し、数種類の野菜の供給を始めたのも青年部員だ。
 青年部活動も含め、これからやりたいことについて、安尾さんは「食育は保育園や小学校だけでなく中学、高校にも広げ、若い人の就農活動にもつなげたい」という。西海さんは「青年部で後継者を育てるのは難しいが、少しでも力になれば」と、地域農業と青年部を継ぐ仲間づくりの必要性を感じている。

◆「職農教育」に期待 前田 憲成・JA兵庫六甲常務理事

 JA兵庫六甲の青年組織は、全体の組織名を「JA兵庫六甲農業青年会議」といい、170名を超える会員で構成されています。その中で、神戸西地区の組織は「西神戸農業経営者協議会」となり、その支部となる「岩岡青年部」は、岩岡支店管内の青年農業者で組織されています。
 青年部員は、将来の地域のリーダーであり、農協の経営者候補ですから、日ごろからそのような位置づけで話をしていることは多いです。一例としては、毎年、組合長を始め常勤理事と青年組織の幹部による意見交換会を定例開催しています。
 青年部員が「食農教育」の担い手になっている例は、当JAの中でもたくさんありますが、農業をやってみたいという次の世代を育てる職業教育としての「職農教育」に着目しているところは、すばらしいと思います。JAとしても、一緒に考え行動できるよう青年部との「協働」活動に取り組みます。
(写真)先輩の意思を引き継ぎ、再結成した岩岡青年部のメンバーら、小学生と野菜を収穫(提供=JA兵庫六甲岩岡支店)

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