JAの活動:第63回JA全国青年大会特集号
JAのリーダーは青年部から(2)【座談会】2017年2月11日
明文化し、組織挙げて養成を
座談会:JA青年組織に期待する
村上光雄氏(広島県JA三次・前組合長、元JA全中副会長)
若林英毅氏(山形県JA山形おきたま理事、元JA全青協会長)
大金義昭氏(文芸アナリスト)
(1)はこちらから(ポリシーブックが軸 / 現場の声を具体的に、行動で国民の理解を)。
◆自覚と責任を持って
村上 青年部の広島県委員長だったころも、青年部の盟友の数は800人あまりで、それほど変動がなく、少数派でした。それでも言うべきことは主張してきたと思います。それをJAや行政が聞いてくれる環境がありました。
われわれの時は、青年部の役員を経験して議員や首長になる人が多くいました。そうした経験をした人が、農協の役員になっていただきたい。
その意味では、今がチャンスだと思います。なぜなら、問題の多い「農協改革」ですがひとついいことは、認定農業者を役員にしなさいということになりました。これは青年部員が入り、農協の運営に関わるチャンスです。それによって内部からの改革となり、新しい展開が期待できます。それこそが真の意味での自己改革ではないでしょうか。
若林 ご指摘の通りです。青年部員がJAの役員として参画するのは今がチャンスだと思います。若い人が農協の経営に参画すると、今までとは違う発想が農協に生まれ、組合員へのサービスも変わるでしょう。ただこの点で、認定農業者は現在、一軒から一人で、二人以上はなりにくくなっています。青年部員は、その多くが40歳前後ですが、父親も元気で切り替えがやりにくい。彼らが出やすいような仕組みを考える必要があります。
大金 青年部員としての自覚と責任はどのようにして養われるのでしょうか。人はひとりでできることには限界があり、集まって手を結ぶことで多くのことができます。人脈は「外部脳」だと考えています。その点で青年部の組織は、何ものにも代えがたい人脈を手に入れることができるのではないでしょうか。
若林 自分の地域は「うち(自分)がいないとなり立たない、というくらいの気持ちで出てきてほしいですね。会議などで、いい情報をもらうことは出席者の権利です。しかし、それだけではだめで、それを自分の地元において実践し、成果をあげる義務があると思います。
村上 それと、青年部員は、自分の経営をうまくやらないと人がついてきません。役員に出て忙しくても、自分の経営はしっかりやらなければ信頼されません。だから現実問題として、役員に出て行くのはしんどいのです。
若林 全国組織の役員だったころは、全国の盟友がJA全中に集まって、10時~18時まで会議で意見交換しました。それぞれ思いを持った部員が、飽きもせず議論していました。それだけ青年部の役員としての自覚と責任感を持っていたのだと思います。
大金 政府による農協攻撃は「農協潰し」の様相を呈していますが、農業者としての自覚と責任を持った盟友が、外に向かって情報や意見を発信していくことが求められています。ポリシーブックはそのための大きなステップアップになっています。一段階上をめざして、広く、国民をこちらに引きつけることが求められています。
◆意見吸収の仕組みを
若林 そうです。同じ協同組合組織である漁連や生協にも積極的に発信し、そうした意見を広げる必要があります。政府の農協改革を批判できるのも青年部です。自民党にすり寄るのでなく、外に羽を伸ばして運動につなげていただきたい。
大金 政府の「農協改革」があり、一方で、若い世代が農協に振り向いてくれないなど、いままさに農協は正念場にあります。農協の組合長、理事の経験者として、農協は青年部をどのように育成し、活用するべきだと考えますか。
◆認定農業者で参画を / JA役員教育の場に
村上 青年部出身で、その延長戦上で組合長をやってきたので、青年部以外の組合員との間で、やりにくい面があったのも事実です。だが、実際に農業に従事している農業青年の声をくみ上げるのが農協です。総合農協として、青年部、女性部の意見を聞き、農協運営の方向を示していかなければなりません。そうでないと地域農協としての存在が問われるでしょう。
地域性もありますが、この点で、多くの農協は認識が甘いのではないでしょうか。若者の意見を吸収するシステムができていないように思います。認定農業者を役員に一定程度入れるというこの機会に、トップがその方法を仕組んでいかなければなりません。
若林 JAの経営が厳しく、先の見通しが立ちにくくなっています。JA山形おきたまは、米地帯ですから、理事のほとんどは青年部の盟友であり、そのOBです。一方で農協を都合のいいところだけ利用しようとする部員も少なくありません。それをどう取り込んで、教育するかがこれからの課題だと思っています。
大金 村上さんは、組合長として農協の財務改善に努め、その上で事業を再編し、アンテナショップのような新規事業も始められました。非常に分かり易い手順だったと思います。
◆言うべき事しっかり
村上 組合長になったとき、経営は破たん寸前でした。このため経済事業だけは収支とんとんにしなければならないと考え、本体から離して株式会社化しました。職員には、ちゃんと研修させて渉外に回しました。また労働組合には将来の人員計画を示し、理解してもらいました。経営は厳しく固定比率は67%で、償却費が5年で15億円でしたが、その範囲内で組合員に増資を仰ぎ、設備投資もしました。その間、職員の新採用も続けました。
赤字なのに設備投資や新採用することに批判がありました。しかし組合員は経営の実情と将来の展望を話すと分かってくれます。経営が苦しくても、先を見通し、やり方によってできることはあるということだと思います。
大金 批判する。反抗する。これは青年の特権です。多少は恨まれても、言うべきことはしっかり言うということを忘れないでほしいですね。
村上 こうしたいのだという自分の考えをちゃんと持たないといけません。いまは、マスコミがなにもかも先導し、扇動しているように思います。自分が何をしたいのかがないと、批判しようにもできません。自分の軸を持っていただきたい。これはJAグループ全体にもいえることですが。その意味でも、青年部は農協のリーダーを養成する機関です。それが持続可能な農協経営を実現し、「協同」を次代へつなぐシステムだと思います。
若林 組織的に将来の農協のリーダーを育てる必要があるのは明らかです。米の30年産問題を控え、買い取りで、いくらなら売り、いくらなら買い取るかと聞いて、生産者も農協の職員も、答えられないのが実情です。さすがに野菜や畜産は答えられますが、米ではいません。自分が売りたい価格を言える農家とともに、買取価格を示すことのできる職員を育てる必要があります。
村上 委託販売に安住しすぎたということでしょう。我々は、まず農協の担い手を育てなければなりません。そのためにも、青年部を農協運動の担い手として育成することです。このことをJAグループで確認し、そのことを銘記していただきたい。
大金 北海道では、青年部の活動を経て組合長になる人が多く、その流れができあがっています。国の内外が激動期に突入しているいまだからこそ、地域農業や農協の担い手を積極的に育てることで、農協の未来を明るいものにしたいですね。本日はありがとうございました。
(写真)大金義昭氏、村上光雄氏
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