JAの活動:農協改革を乗り越えて -農業協同組合に生きる 明日への挑戦―
【神出元一・JA全農代表理事理事長】生産者が実感できる「改革」実行(前半)2017年10月30日
チャレンジ精神で持続可能な農業を実現
生産者にとって最大の願いは、自分のつくった農畜産物が正当に評価され、所得が向上することだろう。
その「農家所得の向上」に向かって、JA全農は何をするのか、「改革」プランの進捗状況と合せて、神出元一代表理事理事長に聞いた。
◆順調に進んでいる「改革」プラン
--まず全農の「自己改革」プランの進捗状況からお聞かせください。
「自己改革」プランは順調に進んでいますが、具体的な成果を出す時期はもう少し先になります。先行している肥料は、銘柄を集約し予約注文を集め、11月末までに入札を行います。そこでJAグループの共同購入の力、生産者への価格引下げ効果がどう出るか分かります。
農業機械は、資材事業研究会などで生産者の意向を聞いて、450型式ほどある大型トラクターの仕様を絞り込み、それに基づく開発要求をメーカーにしました。メーカーから回答をもらい仕様を確定して、来年夏を目途に価格も決めて秋ごろから供給ができるようにしていきます。段ボールの規格も、作物ごとに絞り込んでいます。
また農薬のジェネリック開発はもう少し時間がかかりますが、三菱商事と新しい販売会社を設立し、私たちが持っている原体の海外での登録や製造の仕掛けができたので、来年以降、具体的な動きが出てきます。
飼料事業では、JA西日本くみあい飼料の3工場を閉鎖して倉敷工場を新設し、すでに稼働していますが、水島港の整備が終われば大型船から直接、効率的に搬送でき、さらにスケールメリットが発揮できます。
--販売関係は?
営業開発部を立ち上げて、品目を限定することなく営業していきながら取引先にどんなニーズがあるのか、取引先の売上げをどう伸ばすのかなどを商談して提案していきます。
単なる物売りではなく、JAグループの総合力と全農の商品の価値をきちんと伝えて、取引先がどう消費者や顧客に売るかに応じたコンセプトをつくっていくことです。
すでに営業開発部には多くの実需者が来られ商談されています。さらに、JAの販売担当役職員の方にも来ていただきマーケット情報を提供し、産地と全農のコラボができるフロアにしていきたいと考えています。
イトーヨーカ堂の社長だった戸井和久チーフオフィサーのこれまでの経験を活かし実需者の目でみた提案を、一つずつ実践に移していき、新しい全農の営業活動を展開していきます。
◆実行スピードと現場への浸透がポイント
--生産資材コスト低減も大事ですが、農家所得向上のためには、販売がもっとも重要ですね。
飛躍的に高く売れるということではなく、デフレ下で家庭消費から食費への支出はシビアですが、国産の美味しいものをきちんと分かっていただける人たちを広げていくような売り方にしていきます。
生産コストについては、個別の価格ではなく、物財費や労働費そして生産性の向上、物流を含めたインフラなどについて、一つずつ積み上げて生産にかかわるトータルコストを抑制し、10a当たりの販売高とトータルコストでどう農家所得に貢献したかという、生産者が実感できる仕組みにしたいと考えています。
「自己改革」について、数値目標が示せるものと、構造改革のように数値目標が示せないものがありますが、来春頃には見通しを出し、1年間の総括は1年後の来年7月に出したいと思います。
--こうした改革を進めてきてポイントになることは何だと思いますか。
柱は二つあります。
一つは、この1、2年できちんとしたレールをつくり、ゴールはここだと示すことです。ゴールはどこか試行錯誤する期間がいまで、方向性が決まればスピード感をもって実行することです。
もう一つは、全農の自己改革が「自己満足」で終わってはいけないということです。そうならない最大のポイントは、生産者の目に見え、改革の成果が実感できることです。
組織決定してからのこの4~5か月間は、全農と県本部・経済連の間、県本部・経済連とJAの間で密に話し合い、JAの総合事業としての自己改革に全農改革がきちんと反映され、兼業農家を含めた生産者や法人経営、集落営農組織の人たちにどれだけ浸透するかです。
--生産者に浸透しているかどうかは、どうやって見極めますか?
現場に入るしかありません。そして本当に動くかどうかは人次第ですから、長澤会長、大澤、菅野両副会長そして私をはじめとする常勤役員や都府県本部長らが心を一つにし、その姿を職員にも見せて、夢をもって楽しく、自信をもって一緒になって汗をかきチャレンジしていきます。
◆総合力発揮しモノ売りから 「コト売り」へ
--2つの柱で改革プランを実行しながら、全農がこれから目指すものは何ですか?
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