JAの活動:農協改革を乗り越えて -農業協同組合に生きる 明日への挑戦―
【後半】焼き芋を武器に所得向上 JAなめがた(茨城県)2017年11月8日
・・・取り引きのあった大阪の食品企業「白ハトグループ」と提携し、平成25年に「農業生産法人(株)なめがたしろはとファーム」を設立。大学芋やお菓子用ペーストなどで規格外のカンショを利用し、農家所得の向上につなげた。
◆生産物の全て商品化
棚谷組合長は「これまで産地は、高く売ることを主眼に、販売単価を上げることに努めてきた。JAなめがたの方針は平均単価を上げることではない。生産したもの全てを売り切り、生産者の所得全体を上げることが重要だと考えている。カンショでも市場の規格に合わず出荷できないものが25%ほどあり、これは廃棄されていた。加工する方法も検討したが1JAでは限界がある。全国には数多くの食品会社があり、自分でできないことは、他業種とタイアップすることだ」と積極的に提携を進めてきた。
一方、JAでは、5000tのカンショを貯蔵する能力を持つキュアリング定温貯蔵施設を整備した。これによって市場や量販店に、欲しい時、欲しいだけの量を年間通じて供給できる体制をつくりあげた。規格品の品質のよいものはより高く売れ、そのほかは加工に回すことで、生産されたカンショのすべてを商品化できるというわけだ。その結果、JA外に出荷している生産者の畑は、収穫後、商品にならないカンショが散らばっているが、JAに出荷している生産者の畑には残渣(ざんさ)一つないと言う。
こうした取り組みで、同JAのカンショは、280人ほどの生産者が約700haを栽培しているが、平成24年からほとんど変化していない。一方、売り上げはこの数年右肩上がりで28年度は35億円を超えた。
こうした取り組みが評価され、JAなめがた甘藷部会連絡会は29年度農林水産祭の天皇杯を受賞した。
(関連記事)・JAなめがた甘藷部会など7氏・団体に天皇杯ー29年度農林水産祭(17.10.19)
◆地域をブランドに
そして、平成27年には、JAと白ハトグループ、それに行政も加わって、廃校となった市内の小学校を改修して「なめがたファーマーズ ヴィレッジ」を開業した。7haの農地を持つ、サツマイモを中心とした体験型の農業テーマパークで、サツマイモの種類や歴史を学ぶことができる。
普通、こうしたテーマパークは交通の便のよい都市近郊に立地するものが多いが、純農村ともいえる行方市に建設した理由について、白ハトグループの佐藤大輔常務執行役員は「サツマイモを通じて、行方(なめがた)の地域の生活そのものをブランド化して地域を盛り上げたい」と、原料の産地につくった意義を強調する。また同JAは東京スカイツリーに隣接する商業施設にサツマイモの定植、収穫の体験ができる「屋上農園」を運営している。今年で6年目を迎え人気イベントになっており、JAなめがたのサツマイモPRに大きな効果をあげている。
(写真)なめがたファーマーズヴィレッジ
「ヴィレッジ」は地元に密着し、地域と地域の農産物のPRに成果をあげるとともに、地域の雇用創出にもつながっている。こうした取り組みから地域に対するJAの姿勢がうかがわれる。棚谷組合長は、「職員には、土曜も日曜もJAの職員であることからは離れられない。職員には地域に生きていることを忘れないようにしてほしい」と言う。地域のごみ拾いや沿道の草刈りなど、職員が自主的に参加している。カンショの産地化の取り組みは、生産者とこうしたJAの職員に支えられている。
(写真)地域の環境保全に貢献するJAの職員
JAなめがたの概要
● 組合員数:1万1245人(うち准組合員2094人)
● 職員数:174人(正・準・パート)
● 販売品取扱:103.4億万円
● 購買品取扱高:19.5億万円(その他子会社3社、農機燃料部門等)
● 貯金残高:633.3億円
● 長期共済保有高:2305.6億円(平成28年度)
※この記事の前半は【前半】焼き芋を武器に所得向上 JAなめがた(茨城県)をご覧下さい。
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