JAの活動:第40回農協人文化賞-わが体験と抱負
【営農事業部門受賞】生涯を協同組合運動に 牛山 喜文・JA上伊那前代表理事専務理事2018年7月13日
7月5日に開催された第40回農協人文化賞で受賞された17名の方々に、これまでの農協運動の体験談と今後の抱負についてお書きいただきました。JAcomでは、その内容を数回に分けて紹介していきます。本日は営農事業部門で受賞した五人、牛山 喜文・JA上伊那前代表理事専務理事、木村敏和・JA山形おきたま代表理事組合長、高峰博美・JAあしきた前代表理事組合長、非常勤理事、竹下正幸・JAしまね代表理事組合長、松山幸雄・十勝畜産農業協同組合代表理事組合長を紹介します。
私は、昭和43年に旧南箕輪村農業協同組合に一般職として入組しました。以来、平成30年に上伊那農業協同組合の代表理事専務理事を退任するまで、職員として38年、役員として12年、協同組合運動を学び、その実践活動に邁進できたことは本当に幸せだったと感じております。
いつも心にしていたのはJA綱領の一節である「協同の理念を学び実践を通じて共に生きがいを追求しよう」でした。
◆ ◇
JA上伊那は平成8年に管内の5JAの合併により誕生しました。上伊那地域は明治時代より養蚕業が盛んで、この養蚕を通しての協同活動も盛んに行われ、協同組合運動発祥の地とも言われています。協同こそ弱い立場にある者の生きる道との想いを先人から学びとれます。今日、全地区に組織されている集落営農組織の根底には、自分たちの地域や農業を自ら守っていこうとする協同の心・共に助け合う精神の醸成があると思います。
このような協同組合運動が盛んな地域でJA職員38年のなかでの激変は2回の合併経験です。1回目は昭和47年管内8農協の合併で、合併当初、管理部門所属となり合併効果をいち早く出すために、それぞれ独自色の強かった事務手続きを統一したことに対する反発もあり苦労をしました。
支所金融課長時代には、経営不振農家の再建に取り組み、何回となく訪問を重ね、家族や経営のこと、そして将来を話し合い、信頼関係を構築したうえで、これからの経営計画の樹立と進捗管理をしてきました。
ときには、貯金通帳を預かってしまうこともありました。しかし、経営の見通しがついた農家から手を握って喜ばれたときは自然と涙が頬をつたわりました。
◆ ◇
2回目の合併は、平成8年、現在の上伊那農協の合併です。合併1年前に長野県中央会へ出向を命じられ上伊那農協合併事務局長の任に当たりました。今回の合併には不賛成の組合員もいて困難な道のりでしたが、寄せ集めの農協ではなく、新しく生まれ変わった農協、日本一の農協を目指す農協として経営計画書をつくり組合員に理解していただきました。合併後は総務課長・総務企画部長・監査部長を命ぜられ新生上伊那を軌道に乗せるべく取り組んで参りました。
現在、JA上伊那管内には45の集落営農法人があり、ほぼ全地区を網羅しています。高齢化や担い手不足・荒廃地問題はどこも同じで、この問題に取り組んだのが集落営農実践委員会の組織であり、職員時代25年間事務局長を務めてきました。平成19年からの経営所得安定対策ではいち早く営農組合を全地区に、さらに平行して法人化の研究を精力的にすすめて参りました。
法人化は「我が家祖先伝来の土地」に係る問題で、何回となく集落懇談会や説明会・個人宅への説明を繰り返し、賛同を得て発足をみました。地元の法人は農地中間管理機構を通して25haを集約し水稲・小麦・そば・ねぎ・ブロッコリー等を栽培し法人のモデルケースとなっています。
(写真)集落営農法人を訪ね懇談
代表理事専務理事に就任したのは平成24年で、「協同組合は教育に始まって教育に終わる」の精神で組合員と職員教育、そして新規就農者の確保と育成に力を入れてきました。農家組合・生産部会・女性組織との繋がりを大切に常に組合員の目線を意識していました。職員には「JAでは組合員から預かるお金を預金と言わずなぜ貯金と言うのか」とよく話していました。新規就農者の若者とはよく話し込み意見や要望を聞き励まし続けています。
平成29年度の自己改革では常勤役員が先頭に立たねばとの想いで積極的に取り組み、基本的にJAからの一方的なものでなく、組合員とともに変わっていくこととしました。まず、管内45の集落営農法人を訪問し、多くの意見要望を各部門が共有、さらに認定農業者や比較的利用の少ない組合員宅も含め80戸余り訪問し多数の意見をいただきました。支所運営委員会で取り入れたグループワーク方式の会議では出席者700余名の全員の方から意見をいただきました。
組合員向け広報誌では、毎月自己改革のページを掲載していますが、きっと読んでいてくれると思います。准組合員宅には改革チラシとカレンダーを持参、准組合員対象のイベントも計画しています。
JA上伊那は長野県南部に位置し、いくら道路交通網が整備されても個人で農産物の販売や資材の購入は困難な地帯です。これからも農家所得をアップしていく為にはどうしても協同組合運動をより活発にしなければなりません。協同組合運動を生涯の道に選んだ私は、更に地区のリーダーとして頑張りたいと思います。
【略歴】
(うしやま・よしふみ)
昭和22年生まれ。
43年旧南箕輪村農協入組。平成11年上伊那農協総務企画部長。平成15年監査部長。平成18年理事就任。平成24年代表理事専務理事。
(関連記事)
・【営農事業部門受賞】総合事業で地域を守る 木村敏和・JA山形おきたま代表理事組合長
・【営農事業部門受賞】6次化はJA事業そのもの 高峰博美・JAあしきた前代表理事組合長、非常勤理事
・【営農事業部門受賞】県1JAの強み発揮へ 竹下正幸・JAしまね代表理事組合長
・【営農事業部門受賞】苦境乗り越え畜産振興 松山幸雄・十勝畜産農業協同組合代表理事組合長
重要な記事
最新の記事
-
【人事異動】JA全農(2025年1月1日付)2024年11月21日
-
【地域を診る】調査なくして政策なし 統計数字の落とし穴 京都橘大学教授 岡田知弘氏2024年11月21日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】国家戦略の欠如2024年11月21日
-
加藤一二三さんの詰め将棋連載がギネス世界記録に認定 『家の光』に65年62日掲載2024年11月21日
-
地域の活性化で「酪農危機」突破を 全農酪農経営体験発表会2024年11月21日
-
全農いわて 24年産米仮渡金(JA概算金)、追加支払い2000円 「販売環境好転、生産者に還元」2024年11月21日
-
鳥インフル ポーランドからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2024年11月21日
-
JAあつぎとJAいちかわが連携協定 都市近郊農協同士 特産物販売や人的交流でタッグ2024年11月21日
-
どぶろくから酒、ビールへ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第317回2024年11月21日
-
JA三井ストラテジックパートナーズが営業開始 パートナー戦略を加速 JA三井リース2024年11月21日
-
【役員人事】協友アグリ(1月29日付)2024年11月21日
-
畜産から生まれる電気 発電所からリアルタイム配信 パルシステム東京2024年11月21日
-
積寒地でもスニーカーの歩きやすさ 防寒ブーツ「モントレ MB-799」発売 アキレス2024年11月21日
-
滋賀県「女性農業者学びのミニ講座」刈払機の使い方とメンテナンスを伝授 農機具王2024年11月21日
-
オーガニック日本茶を増やす「Ochanowa」有機JAS認証を取得 マイファーム2024年11月21日
-
11月29日「いい肉を当てよう 近江牛ガチャ」初開催 ここ滋賀2024年11月21日
-
「紅まどんな」解禁 愛媛県産かんきつ3品種「紅コレクション」各地でコラボ開始2024年11月21日
-
ベトナム南部における販売協力 トーモク2024年11月21日
-
有機EL発光材料の量産体制構築へ Kyuluxと資本業務提携契約を締結 日本曹達2024年11月21日