JAの活動:第40回農協人文化賞-わが体験と抱負
【一般文化部門受賞】組合員と向き合い対話 久保 薫 ・JAふくおか八女 前代表理事組合長2018年7月20日
「より良いものを消費者・生活者に届けたくて」先進地にも足を運び、品種転換や栽培技術の普及、全国に先駆けて化粧箱からパック販売への転換など生産改革・販売改革に取り組んできました。
JAふくおか八女は平成8年、2市4町2村の8JAが合併し誕生しました。その間、「やる気と情熱」を胸に生業のブドウ栽培に励みながらJAぶどう部会長として主に生産畑を歩んできました。JA合併7年後の15年に理事へ就任。21年からは代表理事副組合長・組合長も経験させていただきJAの成長と変化を共にしてきた人生でした。
JA管内は、県内でも一番農業が盛んな地域であり、園芸作物を主とする販売高は250億円台を維持し、平坦地から山間地まで多種多様な農産物が生産されています。
組合長に就任した24年7月「九州北部豪雨」が発生しました。この災害は、JAにとっても発足以来、最大級の危機的状況と言っても過言ではなかったかと思います。「人は無事なのか。どのくらいの被害なのか」。不安の中で連日、被災者の所へ足を運び、励まし、離農される人を1人でも減らすのが私の仕事だと肝に命じたものでした。「私が現場に足を運び励ますことで、組合員の皆さんが少しでも安心される」。それを私は肌で感じ取ることができました。 「JAふくおか八女の農業が終わるときは福岡の農業が終わる」。常に組合員の皆さんにもこの思いを告げ、国、県、市、JAグループの皆さんからも多くの復旧・復興の支援を受け、併せてJA独自の「1億円復興支援事業」を29年度までの6か年にわたって継続しました。全国各地の多くの方々からの支援の「おかげ」で今年、JAふくおか八女はどうにか再生することができました。
私は現場が好きですから、組合長になっても現場をよく歩きました。「組合員の皆さんが今、JAに何を求めているのか。組合員の皆さんと向き合い、耳を傾ける」。これこそが協同組合の原点であると常に思ってきました。
24年より「組合長への手紙」という取り組みも始めました。若い方からお年寄りまで、いろいろな提案・アイデアが届きました。中には「組合長と直接会って話したい」「私の地域にも、ぜひ組合長来てください」という内容には私も早々に対応させていただきました。意見・要望を組織運営に取り入れる「対話」の必要性を感じました。
県内JAでは、担い手との対話により、農業振興を図ろうとしていた時期でもあり、この「対話技術」を盛り込んだ「TAC」をJAふくおか八女でも5年前に発足させました。どうしてもJAは組合員や農家の皆さんの要望に一律的な対応をする部分がありますので、内容や規模・特性に応じ、対話形式で個別対応を充実させることが重要だと思いました。
29年度、組合員の皆さんとの、JA職員の能動的な活動が評価され、TAC全国パワーアップ大会で「全農会長賞」をいただいたことは職員の大きな励みとなっています。
◆ ◇
今後、JAが果たす役割の1つに組合員の高齢化への対策と新規就農者の育成という大きな課題があります。高齢化対策としてパッケージセンターの充実(現在3か所)、新規就農者の育成については27年に「就農支援センター」を立ち上げました。全く農業経験がないサラリーマン出身の若者が農家生産者を指導員に1年間みっちり実践研修を受けています。これまでに1期生5人、2期生5人、3期生4人が高齢化でやめていかれる方のハウスを借りるなどして就農。なかにはJA生産部会の平均収量以上の成果を上げている元研修生もいます。JA、生産部会、地域が彼らの成長をしっかりと支援していく態勢ができたことを本当に良かったと思います。
29年度より生産意欲向上と経営規模の拡大に向け、独自の自己改革の一環として「農業生産基盤強化支援事業」に取り組み、初年度160件の申請に対し約1900万円を支援しました。
JA組織・事業改革は10年後を見据えた「支店・事業所・施設の再編整備」を行っています。
私たち組織のトップは今を直視していくことも大事ですが、常に将来どうあるべきかを考えていくことが大切なことだと思います。支店の再編・施設の集約、あるときは組合員さんから反対されても将来に向かって実行する勇気も必要であり、それがリーダーの役目だと思います。
今年7月から支店再編に向けた代替え措置として閉鎖支店管内において「移動購買金融店舗車」が運行を開始します。過疎地における買い物難民対策は地域貢献活動としてどうしても取り組むべきとの強い信念を持ち、役職員一丸となって取り組んでいきます。
最後になりますが、今年6月で私は組合長を辞しました。常に多くの仲間に支えられ、多くの職員が私の思いを感じ取り仕事をしてくれました。皆さんの「おかげ」に心より感謝をし、私も次のステップで頑張っていきたいと思っています。
(写真)九州北部豪雨の被災地に足を運ぶ
【略歴】
くぼ・かおる
昭和26年生まれ。45年農業に従事、平成2年10月筑後市農協ぶどう部会副部会長、6年同部会会長、15年JAふくおか八女理事、21年代表理事副組合長、24年代表理事組合長(~平成30年6月退任)。
本特集の記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
第40回農協人文化賞-わが体験と抱負
重要な記事
最新の記事
-
備蓄米 「味に差なく、おいしく食べてほしい」 江藤農相2025年4月24日
-
関税発動で牛肉の注文キャンセルも 米国関税の影響を農水省が分析2025年4月24日
-
トランプ関税で米国への切り花の輸出はどうなる?【花づくりの現場から 宇田明】第58回2025年4月24日
-
【JA人事】JA北オホーツク(北海道)吉田組合長を再任2025年4月24日
-
三島とうもろこしや旬の地場野菜が勢ぞろい「坂ものてっぺんマルシェ」開催 JAふじ伊豆2025年4月24日
-
農林中金 ロンコ・インベストメント・マネジメントに資本参画 不動産分野の連携強化2025年4月24日
-
積雪地帯における「麦類」生育時期 推定を可能に 農研機構2025年4月24日
-
日本曹達 微生物農薬「マスタピース水和剤」新たな効果とメカニズムを発見 農研機構2025年4月24日
-
棚田の魅力が1枚に「棚田カード」第5弾を発行 農水省2025年4月24日
-
みずほ銀行と食農領域の持続可能な発展に向け戦略的提携 クボタ2025年4月24日
-
【人事異動】兼松(6月1日付)2025年4月24日
-
日本生協連「フェアトレード・ワークプレイス」に登録2025年4月24日
-
旭松食品「高野豆腐を国外へ広める活動」近畿農政局 食の「わ」プログラムで表彰2025年4月24日
-
群馬県渋川市の上州・村の駅「お野菜大放出祭」26日から 9種の詰め放題系イベント開催2025年4月24日
-
JA蒲郡市と市内の飲食店がタッグ 蒲郡みかんプロジェクト「みかん食堂」始動2025年4月24日
-
適用拡大情報 殺菌剤「バスアミド微粒剤」 日本曹達2025年4月24日
-
倍率8倍の人気企画「畑でレストラン2025」申込み開始 コープさっぽろ2025年4月24日
-
農業・食品産業技術開発の羅針盤「農研機構NARO開発戦略センターフォーラム」開催2025年4月24日
-
雪印メグミルク、北海道銀行と連携「家畜の排せつ物由来」J-クレジット創出へ酪農プロジェクト開始 Green Carbon2025年4月24日
-
山椒の「産地形成プロジェクト」本格始動 ハウス食品など4者2025年4月24日