JAの活動:挑戦・地域と暮らしと命を守る農業協同組合 女性がつくる農協運動
地域で輝け JA女性【インタビュー・川井由紀JA全国女性協会長】2019年1月22日
・食と農を支える活動持続を
―会長としての活動でこの1年間にどんなことを感じましたか。
この1年間は、JA女性組織に関してグループ内に留まらず、大学や学会、ラジオなどさまざまなところで発信する機会があったことから、なぜ私たちの先輩はJA女性組織を立ち上げたのか、その歴史を改めて勉強し、この組織の活動の素晴らしさ、ずっと引き継がれてきたことの素晴らしさに気づいた1年でした。そしていろいろな機会に発信することで多くの方々に女性組織の良さを知っていただいたと思います。
私は祖母たちが地域で集まって農協婦人部活動や共同購入運動などをしていた光景を覚えていますが、それは台所改善に代表される衛生面の改善のほか、食、健康、子育て、営農などの学習活動や助け合いの強化でした。農協の生活指導員が行政などと連携していろいろな活動を農村女性に提案していきました。
私の世代ではもうほとんど実現していることですが、昔は働くだけで農家の女性に自由に使えるお金がなく、女性が中心となった直売所づくりも自分の財布を持とうという運動がきっかけで、全国に広がっていきました。全国女性大会での事例発表が、私たちの地域でもやってみよう、という機運の醸成につながっていったと思います。農家の女性でも役割を認められ自分のお金を持つことは大事なことで、子どもの教育にもいい影響を与えたと思います。
国連は今年から「家族農業の10年」としており、家族農業を支えるのは女性だということから、昨年、アジアやアフリカの女性組織が集まる会議で私たちJA女性組織の活動を発表する機会がありました。
そこで話したことで非常に興味を持たれたのは直売所の取り組みです。商品のネーミングやパッケージなどにも関心が集まりましたが、何よりもきちんと自分で値段をつけて売ることができるということに、どうしてそんなことができるのかと驚く声もありました。私は安売り競争するのではなくきちんとした価格で売ることが大事だと話しましたが、私たちはこうした活動を通じて、社会のなかでの地位、家のなかでの地位を変える努力をしてきたと思います。この努力をアジアなどの女性組織に伝えることも大事ですし、私たちメンバーの次の世代にも伝えていきたいと思います。
昨年はアメリカの家族農業者中心の農業団体であるナショナル・ファーマーズ・ユニオン(NFU)のみなさんと話をする機会もあったのですが、女性のための教育プログラムを重視していて、きちんと女性のリーダーを育てなればならないと強調していました。
NFUには女性組織はないそうですが、女性の経営者、リーダーを育成していくことを大切にしていて、単に女性参画を、といっているだけでは、あのアメリカですら進まないということなのかと驚きながらも思いました。私たちも目標数字を掲げてJAへの女性参画を進めていくことが大事でまだまだ当たり前のように参画できているわけではないということです。
(写真)川井由紀・JA全国女性組織協議会会長
―JA全国女性協として2019年からの新3カ年計画(案)はどのような内容ですか。
JA全国女性大会で正式に決めることになりますが、スローガンは「JA女性 地域で輝け 50万パワー☆」です。昔に比べればメンバーは少なくなりましたが、それでも全国で約54万人のメンバーがいます。これだけのメンバーがいる組織というのは素晴らしいことであり、一人ひとりが地域で仲間と手をつないで、これからも輝いていこうという思いを込めました。☆印をつけたのはまさに「輝く」という意味です。
―具体的にはどのような活動を展開していきますか。
地域で輝くための5つの具体的活動を掲げています。1つ目は「食を守る☆」です。食料自給率の向上に向けた運動と安全安心な食について学習し情報発信をしていきます。それから地域の農産物を非農家にも利用してもらう地産地消、伝統食の継承も進めます。伝統食についてはホームページでも発信し、今だからこそ見直してもらいたいと考えています。それから食品ロスの削減に取り組むことも改めて掲げました。日本の食品ロスは年に約600万tにもなり、世界の食料援助量約300万tの2倍にもなっていることも勉強しなければなりません。
2つ目は「農業を支える☆」です。農業を取り巻く情勢について学習、情報発信し、農業理解を促進するため食農教育にも取り組みます。それから国連は今年から「家族農業の10年」を制定しましたが、私たちも家族農業に対する理解を深めていきます。
3つ目は「地域を担う☆」です。女性組織メンバーによる居場所づくり、行事の維持などを通じて地域を支えていきます。ミニデイサービスやカフェなど交流の場をつくっていくことも地域を担うことになると思います。また昨年も自然災害が多く発生しましたが、防災に対する意識を高め万一の備えを万全にする活動にも取り組みます。それから地域における協同組合間の連携、他団体との交流を通じて活動の場を広げていく考えです。
4つ目は「仲間をつくる☆」です。次世代のリーダーを育成し、全組織でフレミズ組織を作ります。私たちもしっかりそれを支えていき活躍してもらうようサポートします。一方で世代別の組織も必要ですが、幅広いメンバーの参加を広げて地域のなかでいろいろな世代が混ざり合った活動を大事にしていくことも具体的活動の1つに掲げます。
5つ目が「JA運営に参画する☆」です。JA役職員との積極的な交流、情報交換を強化するほか、支店運営委員会など各種委員会への参画に取り組みます。
JA運営への参画目標はこれまでよりも引き上げ、「組合員30%以上、総代15%以上、理事等15%以上」をめざします。
―国連は持続可能な社会づくりのための目標としてSDGs(エスディージーズ/持続可能な開発目標)を掲げていますが、新3カ年計画の活動ではこれをどう位置づけていますか。
国連が掲げているSDGsについてはしっかり学ぶ必要がありますが、実はSDGsが掲げている17の目標は私たちがこれまでにすでに取り組んできたことも多いということです。
「食を守る☆」、「農業を支える☆」という活動は12番目の目標である「つくる責任、つかう責任」という持続可能な消費と生産につながることですし、「地域を担う☆」は「住み続けられるまちづくりを」ということに関連します。また、「仲間をつくる☆」は「パートナーシップで目標を達成しよう」に関連し、「JA運営に参画する☆」は「ジェンダー平等を実現しよう」ということになります。
つまり、今まで取り組んできていることはいいことであって、今度の新3カ年計画はそれを続けることが大事だということを強調したともいえます。JA女性組織のメンバーのみなさんには自分たちの住んでいる地域で、自分たちはいいことをしているということを実感してますます輝いていただきたいです。協同してこれまでの活動を続けることが大事なんだと考えています。
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