JAの活動:第28回JA全国大会特集「農業新時代・JAグループが目指すもの」
【インタビュー JA共済連経営管理委員会会長 市村 幸太郎 氏】組合員・地域の人と共感できる関係を2019年3月8日
JA共済事業は、JAグループの創造的自己改革の基本目標を踏まえて4つの柱で共済事業の自己改革に取り組んできた。市村幸太郎JA共済連会長は、全国のJAが足並みを揃えて創造的自己改革に取り組んだことによって、JA役職員と組合員や地域の人たちとの間に「共感」できる信頼関係が生まれた、これはJAにとって「宝」だと評価。そうした成果を基に次期3か年計画では、さらに組合員・利用者との絆を強固なものにし将来につなげていきたいと語った。
―今回のJA全国大会についてどのようにお考えですか。
農業協同組合が誕生して70年余りを経るなかで、「協同組合」の精神を理屈で理解していても、心や肌で感じる機会が少なくなっていたかもしれません。そんな中、前大会に引き続き、今大会においても「創造的自己改革」をテーマに、「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」「地域の活性化」という3つの基本目標が示されました。
前大会からこれまで、農村地域も都市部も合わせて、全国のJAが足並みを揃えて「創造的自己改革」に取り組んできました。JA役職員は改めて農業協同組合の役割について考え、組合員・利用者の方々の生の声に耳を傾けました。やがて、お互いに「共感」できる信頼関係が生まれ、その重要性を肌で感じられるようになりました。これは、自己改革が生み出したJAにとっての「宝」だと思います。そして、この「宝」は今後の自己改革においても大いに活かされていくものと私は思います。
(写真)JA共済連経営管理委員会会長 市村 幸太郎 氏
◆4つの柱で共済事業の自己改革
―これまでの共済事業における自己改革の取り組みを振り返っていかがですか?
共済事業では、JAグループの創造的自己改革の基本目標を踏まえ、様々な取り組みを展開してきました。まず、「農業者の所得増大」と「地域の活性化」に向けた取り組みとして、16年度に「地域・農業活性化積立金」(16~18年度、総額240億円)を創設し、共済事業としての農業経営に貢献する取り組みや地域の活性化を展開しました。
その取り組みの1つとして、農業者の皆さまにとって農業経営を取り巻くリスクを認識いただくための「農業リスク診断活動」を展開しています。2018年4月からは、タブレット型端末機『Lablet's(ラブレッツ)』等による「農業リスク診断システム」の活用も始まり、18年度上期時点で約14・7万回の診断活動を実施しました。これにより、多くの農業者の皆さまにリスクの点検やリスク対策状況の確認をいただきました。あわせて、共栄火災と連携し必要な保障の提供にも取り組んでいます。また、地域の実情に応じて県域ごとに、担い手サポートセンターの活動支援、食農教育および農業高校等への農業機械の寄贈などの農業関連分野への貢献や、地域の活性化に向けて子育て支援や移動購買車の寄贈など様々な取り組みを実施しています。なお、これらに対して18年度上期までに151億5800万円が活用されております。
この他、組合員・利用者の利便性向上と契約者対応力強化を図るため、JAの事務負荷軽減に向けた取り組みを行っています。16年4月から、ラブレッツを活用した生命総合共済の契約申込み手続きのペーパーレス化、初回共済掛金のキャッシュレス化を皮切りに、段階的に新事務手続きを展開しています。あわせて自動車損害調査体制の見直しにも取り組んでおり、17年度末には14年度に比べ約3割の事務負荷軽減が図られました。このような取り組みがJA全体の業務効率化につながり、JAの自己改革を後押しできると考えていることから、次期3か年以降も取り組みを強化していきます。
JA支援機能の強化に向けた取り組みでは、15年10月に生命査定機能、16年10月に引受審査機能を全国8か所の地区業務センターへ集約しました。これにより、JA指導・サポート部門に再配置可能な要員を全国で計198名確保しました。今後も、JA支援機能の強化に向け、業務効率化に取り組みます。
◆安心と信頼の「絆」を未来に
―次期JA共済3か年計画の展望や、自己改革の今後の取り組みについてお聞かせください。
JA共済は、JAとの一体的な事業運営のもと、新技術等を取り入れ他事業とも連携しながら、万全な保障・サービスの提供を行うとともに、環境変化を見据えた態勢を構築していく必要があります。
次期3か年計画では「安心と信頼の『絆』を未来につなぐ~地域のくらしと農業を支えるJA共済~」をスローガンとし、「強固な事業基盤の確保」と「効率化の追求と健全性の強化」の両面から展開することによって、組合員・利用者との絆を強固なものとし、将来につなげていきたいと考えています。
また、共済事業の自己改革については、今回のJA全国大会において、JAグループの自己改革が引き続き重点課題とされることから、これまでの取り組みを継続・深化させるとともに、情報発信を強化し組合員・地域住民等への理解促進にも取り組んでいきます。
―近年自然災害により農業生産基盤は大きな打撃を受けていますが、JA共済としての対応について教えてください。
今年度は特に地震や台風が相次いで発生したことによって、自然災害共済金のお支払いは、平成31年1月末時点で2837億円に達し、東日本大震災の影響を受けた23年度に次ぐ規模となりました。現場では、被害に遭われた方々へいち早く連絡を取って訪問する初期対応に努め、ラブレッツを活用して共済金の迅速なお支払いを行うことが出来、JA共済の使命をしっかりと果たせたのではないかと思います。
◆互いに共感しあえる活動を
―最後に、全国のJA役職員の方々へメッセージをお願いします。
共済事業を進めていくのは、組合員・利用者のため、JAのため、そして自分のためです。役職員がそれぞれ自分自身のために、生き生きとやりがいを持って働けば、組合員・利用者のお役に立てるでしょうし、自然とJA事業の発展にもつながります。そして、どんな環境下にあっても、この目的意識を持って、組合員・利用者、地域のくらしに向き合い、共感しあいながら活動に取り組んでいただきたいと思います。
(関連記事)
・第28回JA全国大会特集「農業新時代・JAグループが目指すもの」
・第28回JA全国大会特集「農業新時代・JAグループに望むこと」
重要な記事
最新の記事
-
鳥インフル 国内47例目 千葉県で確認2025年1月30日
-
初動5年で農業の構造改革 28の目標掲げ毎年検証 次期基本計画2025年1月30日
-
営農管理システム「Z-GIS」と「レイミーのAI病害虫雑草診断」アプリが4月に連携開始 地域全体を簡単把握、現場データ管理がより手軽に JA全農と日本農薬(1)2025年1月30日
-
営農管理システム「Z-GIS」と「レイミーのAI病害虫雑草診断」アプリが4月に連携開始 地域全体を簡単把握、現場データ管理がより手軽に JA全農と日本農薬(2)2025年1月30日
-
2025年も切り花の品薄単価高が続く【花づくりの現場から 宇田明】第52回2025年1月30日
-
何かと言えば搗いた餅【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第326回2025年1月30日
-
雑草防除で成果保証型サービス開始 節水型乾田直は栽培を普及へ BASFジャパン2025年1月30日
-
担い手集め地域農業守る 労働力支援協議会が発足 JAみなみ筑後2025年1月30日
-
農林中金「アグリウェブ」に農業特化型生成AIを提供開始 きゅうりトマトなすび2025年1月30日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」神奈川県で幻の果実「湘南ゴールド」を収穫 JAタウン2025年1月30日
-
JAしまね「ファミマフードドライブ」を通じて食品寄贈 地域支援拡大の仕組みを構築2025年1月30日
-
「北海道スマートフードチェーンプロジェクト事業化戦略会議2025」開催 農研機構2025年1月30日
-
今年いちばん「うまい米」第11回「お米番付」最優秀賞など発表 八代目儀兵衛2025年1月30日
-
茨城県のブランド豚肉を堪能「常陸の輝きメニューフェア」2月1日から県内のレストランで開催2025年1月30日
-
「日本さつまいもサミット」今年度の特選生産者8組が決定2025年1月30日
-
【人事異動】協友アグリ(1月29日付)2025年1月30日
-
【人事異動】東邦化学工業(2月1日付)2025年1月30日
-
【役員人事】クミアイ化学工業(1月29日付)2025年1月30日
-
彦摩呂が驚く 南アルプス市のおいしいもの「タベサキ」新番組スタート2025年1月30日
-
農業課題解決と技術革新へ 広沢技術振興財団ものづくり技術助成事業に採択 AGRIST2025年1月30日