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JAの活動:第28回JA全国大会特集「農業新時代・JAグループに望むこと」

27回のJA全国大会を回顧 運動の歴史に学びいざ実践 未来を拓くJAに【白石正彦・東京農業大学名誉教授】2019年3月13日

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 組合員やJAグループの3年に一度の意思結集の場であるJA全国大会が28回目を迎えた。とりわけ今年は、JA改革によって、農協の将来に係わる大きな転換が求められている。JAグループは過去27回の大会で、その都度、組合員の意思を結集し、全国農協中央会のリーダーシップのもと、厳しい状況変化に対応してきた。東京農業大学の白石正彦名誉教授に過去27回の大会を振り返ってもらい、これからの農協のあり方考える機会にしたい。

過去の蓄積を生かし
組合員の意思結集へ

 非営利目的で人々が結集した事業体である協同組合は、投下資本(株式等)に対して最大限の利潤を追求する"営利企業"とは異なり、また、"権力を保持している政府組織"とも異なる。協同組合は"協同組合の定義・価値・原則"を包含している「協同組合のアイデンティティーに関するICA(国際協同組合同盟)声明」を組織・事業・経営の国際基準としている。営利企業と協同組合の根本的な差異は、協同組合の場合は出資金に対する利子制限を明示し、農産物の協同販売など事業利用に応じた剰余金の配分が基本である。
 1993年から95年においてこのような国際的な協同組合原則の明確化にJAグループが貢献し、さらに心豊かな生活文化を経済面・社会面の価値に加えて3つ目の協同組合の価値として組織目的に明示するために日本の生協グループが貢献し、筆者も3年間、ICAでの草案づくりに関わった。ICAには、現在、107か国の308協同組合全国組織等が加盟し、傘下の組合員総数は12億人を超えている。
 年表でも明らかにしたように、わが国の農協の組合員、単位農協、連合組織の意思を分散させないで民主的に結集するために全国農協大会を全中のリーダーシップで開催し、これまで成果をあげてきた。このためJA全国大会の歴史から見た農協運動のプロセスと今年10月から一般社団法人に移行する全中の在り方も含め、農協運動の課題について明らかにしたい。

創造的自己改革を打ち出した第27回JA全国大会(写真)創造的自己改革を打ち出した前回の大会

 


全指連を全中に再編
総合指導組織確立へ

 戦後の農協は、農地改革により同質的な自作農を正組合員、非農業者を准組合として組織され、事業経営を開始し、悪性インフレの下で、政府による低価格での米の供出制度や統制された肥料流通を担うエージェントとしての役割を担わされた。しかし、そのような統制が徐々に撤廃されるという情勢変化に多くの農協が対応できず、赤字経営(1949年度の総合農協の40%が欠損)に転落した。 
 このため、1951年4月には農漁業協同組合再建整備法、1953年8月には連合会の再建のため農林漁業組合整備促進法が制定された。他方、農協・連合会の事業経営再建への取り組みは、集落原理を活用しつつ、1950年から農協振興刷新運動(系統農協の共販、肥料共計運動、資金計画化運動)として具体化された。
 このような状況下で、農協の組織・事業経営の体質を強化するために1954年6月の農協法改正により、従来の県指導農協連合会および全国指導農協連合会を再編して、農協の総合的指導機関として農協中央会制度が創設された。
 この創設プロセスでは、表のように全指連の下で第1回農協大会は1952年10月に農協の刷新強化、農協指導事業強化、農協法改正で農業団体再編成(系統組合運動の中核たる組合総合指導組織を全国的に確立)を主題とし、第2回農協大会は1953年12月に、主題を全国の農協の意思を代表する総合指導組織の確立を中心とする農協法の改正を速やかに実現するために開催された。

日比谷野音を埋めたJAグループのTPP交渉反対集会(写真)日比谷野音を埋めたJAグループのTPP交渉反対集会

 


「農基法農政」始まる
営農と生活の向上へ

 さらに、創設された全中の下で第3回大会は、1955年12月に農業団体再編成、総合事業計画樹立実行運動、農協事業の拡充強化、不振組合対策、米穀予約売渡制度の継続、主要農産物の価格並びに流通を主題として開催された。
 農政の課題が食糧増産から転換して昭和1961年制定の農業基本法に基づく農業経営の規模拡大、成長作目の選択的拡大などに焦点が移り、1962年7月の農協法改正で農事組合法人制度が創設され、農業に係わる共同利用施設の設置や5戸以上の農家による協業経営に法人格を与え、農協の正組合員となった。
 ちなみに、茨城県玉川農協は1957年度から山口一門組合長のリーダーシップで稲作+養豚など複合4類型等の選択による営農形態確立5か年計画、1962年から第2次5か年計画等を実践した。この結果、1956年度に販売高に占める米の割合が66・6%と3分の2を占めていたが、1971年度には米の割合は7・0%に減少し、一方で畜産は肉豚主体に82・6%に拡大した。しかも、同年度間における正組合員1人当たり販売高は、10万円から291万円、購買高は7万円から164万円、貯金は7万円から198万円に拡大したメカニズムは、農協における作目別生産部会先導型の内発的事業革新の萌芽として評価できる。
 1967年11月の第11回大会では、農業基本構想の推進、農協運動の強化、役職員教育の振興が決議され、1970年10月の第12回大会では生活基本構想の実践、沖縄農協との一体的活動の促進などが決議された。後者の決議は、農家の兼業化、農村の混住化・都市近郊化、准組合員比率の上昇による組合員構成の異質化に対応したJA先導の営農と暮らし、地域社会開発を展望した方向付けとして注目された。

 


低成長と生産過剰で
品目別の需給調整へ

 第1次(1973年)・第2次(1978年)の石油ショックのインパクトで経済の低成長期に移行し、米の生産調整と転作に加え、農業基本法農政下の選択的拡大作目であるミカン、鶏卵、豚肉、牛乳の過剰基調に対する需給調整、農地の貸借による流動化、大規模農家の負債問題が顕在化するとともに、1985年には組合員の2兼農家比率が68%、准組合員比率も31%に上昇した。
 1979年10月の第15回大会は、"1980年代日本農業の課題と農協の対策"の推進等を決議したが、その中で農協グループが米過剰は構造的であることを意思統一し農産物の全品目別需給対策に着手し始めた点が注目される。
 実践面では、1980年6月に、全中が関係団体と協議し、全国農産物需給対策協議会が設立された。さらに、協同組合間提携推進事務局(全中、全農、全漁連、日生協で構成)は、1982年10月に『協同組合間提携の戦略的展望』をまとめ、提携関係を本格化している(本書は、時嘲社から出版)。
 さらに、宮城県仙南地区9市町村の角田市農協など7農協は、広域営農団地活動を基礎にして仙南農産加工連合会を設立した。
 一方で県内のみやぎ生協と地元産農産品の産消提携(産直)をスタートし、1984年には仙南加工連の豚肉を中心とした生協産直取扱高は62%、7農協のAコープ店が8.0%で協同組合間提携による取扱高が70%に達するなど新たなモデルを展開し注目されてきた。

1952年、三重県宇治山田市で開かれた第1回農協全国大会(「全中三十年史」より)(写真)1952年、三重県宇治山田市で開かれた第1回農協全国大会(「全中三十年史」より)

 


貿易・金融の自由化
農協の構造改革運動

全国農協大会の開催年月と主題・決議事項等 1986年9月以降の急激な円高・ドル安の進行のもとで、農業・農協をめぐる環境は大きく変化した。これに対し、全中は1988年12月の第18回全国農協大会で、今後の中長期運動方針として「21世紀を展望する農協の基本戦略―国際化のなかでの日本農業の確立と魅力ある地域社会の創造―」で、①3H農業生産の振興(a健康・安全、b高品質、c高技術)、(2) 主要作物のコスト低減目標(米3割程度、酪農2~3割程度等)、(3)1ないし数集落単位で20~100haの農場的な地域輪作体系を構築、(4)農業生産資材コスト低減、(5)高付加価値化をめざす加工事業、有機・低農薬生産物の供給、米需給均衡化への主体的取り組み等に取り組んだ。
 1991年10月の第19回全国農協大会では、原則として「自己責任経営で高度な事業機能を担える"広域合併農協"と"補完組織としての統合連合組織"の二段階システム」に大転換する改革構想を決定した(1997年4月の合併構想達成率は47.6%、2000年4月は65.3%)。
 1994年10月の第20回大会では、国際協同組合同盟(ICA)の協同組合新原則をふまえて「JA綱領―わたしたちJAのめざすもの」を制定し、協同組合原則志向の体質強化に取り組み、一方では信用事業面で金融システムの一員として地域に根ざしたJAバンク構想を明らかにした。

 


「規制改革」始まる
総合農協の再構築へ

 1999年の食料・農業・農村基本法の制定、2001年7月に農協法、農林中金法等が改正され、一方で2001年から2003年まで総合規制改革会議では、農協経営に競争原理を導入する観点から現行の農協規制を見直す検討(准組合員制度の運用の適正化、非JA型農協設立の促進等)を開始した。
 さらに2013年から2015年までの「規制改革会議」での検討と政策措置が先導し、官邸主導で2015年8月の農協法が改正(2016年4月施行)され、2019年9月末に農協法に基づく中央会制度は廃止され、県中央会は連合会(非出資)に、全国中央会は一般社団法人に組織形態が変更され、全中の全国監査機構は廃止され、会計監査人監査制度へそれぞれ移行する中で、JA全中を結集軸とした求心力の維持・拡充が大きな課題である。
 平成2019年3月には、第28回JA全国大会が「創造的自己改革の実践~組合員とともに農業・地域の未来を拓く~」を主題として開催される。
 この議案では、危機から脱却する「JAグループのめざす姿(10年後)」として「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合としての総合力発揮」の3本柱として(1)持続可能な農業の実現、(2)豊かでくらしやすい地域社会の実現、(3)協同組合としての役割発揮が掲げられている。
 具体的な取り組み事項としては(1)「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」へのさらなる挑戦(重点課題)、(2)連携による「地域の活性化」への貢献」(重点課題)、(3)組合員の「アクティブ・メンバーシップ」の確立、(4)自己改革の実践を支える経営基盤強化(重点課題)、(5)「食」「農」「協同組合」にかかる国民理解の醸成、(6)JAの自己改革を支える中央会・連合会による取り組み、(7)自己改革の着実な実践と伝える取り組みの7項目が明示され、そのうち上記(1)、(2)、(4)の重点課題の実践が期待される。
 さらに、2018年にはJA女性部員数は54万5000人(うちJAの正組合員32・2%、准組合員22・3%、非組合員45・5%)で正組合員戸数に占める女性割合比は14・7%、正組合員人数に占める女性の割合21・0%、JA総代に占める割合は9・0%である。また、2018年4月のJA青年組織の盟友数は5万8000人である。この両組織への効果的支援も大きな課題である。
 JA全中は、JAの組織基盤として、地域農業振興の主人公は正組合員、准組合員は農業の応援団と位置付けており、このような正組合員、准組合合員の顔の見える連携の広がりのなかでこそ食料・農業の地域循環、多様な農業の担い手の所得確保ができ、農に親しむ豊かな地域社会が展望できる。

1965年から44年間、JAグループの拠点だった旧JAビル 

ICT時代に対応し
農協運動一層進化を

 デジタル革命時代といわれる現段階では、あらゆる組織は(1)そのアイデンティティーの明確化と、(2)情報通信技術(ICT)の進歩によるデジタルマーケティング(「レジリエンス」(特定の問題や損失に見舞われたとき、そこから復元するための能力)、「アジリティ」(迅速に学び、変化する状況にスピード感をもって対応する能力)の創造的適用が問われている(P.Kotler etc.:MARKETING 4.0―Moving from Traditional to Digital, WILY,2017)。
 今後のJA全中とJA県中は、JA全国教育センターの機能とアジア農協振興機関(IDACA)の機能、さらにJA全国連の教育研修機能を包含した高度のJA教育研修機能の発揮が課題である。
 ちなみに、ドイツの協同組合アカデミー(AG)は、国内外の協同組合人育成のため、博士号の学位も取得できる国際色豊かな仕組みになっている。この成果も踏まえて、新時代をリードする国内の協同組合役職員リーダーの育成機能と日本の総合農協をモデルとして学びたいというアジア、アフリカ、中南米の諸国の協同組合役職員リーダーづくりのニーズを結びつけたJA全中・県中の教育事業活動の役割発揮のために、協同組合教育基金をJA組合員・役職員からも募集し、設立する協同組合教育運動の展開を日本のJAグループの総意として方向付けることを期待したい。

 

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