JAの活動:【緊急特集・JA対話運動】
【緊急特集・JA対話運動】第8回<JA延岡(宮崎県)>「絆世帯」重点に訪問 次世代対策へ足元から2019年5月13日
宮崎県JA延岡は、JAの役職員と地域住民のつながりを強める新たな仲間づくり運動として「絆運動」を展開している。JAの役職員が、身近な人を「絆世帯」として選び、毎月1回訪問する。組合員に限らず、JA管内の50歳以下の世帯が対象で、5年、10年後を見据え、組合員との対話を通じて次世代へのアプローチを強化しようという取り組みである。同JAは設立当初から月1回の正組合員訪問活動を展開しているが、絆運動はそれとは別に、これまで築いていた職員と組合員・地域住民との関係の一層の醸成をはかろうというものである。
◆危機感から始まった運動
平成29(2017)年12月から始めた絆運動の背景には、JAと組合員のつながりが希薄になっていることへの危機感がある。それは、正組合員が減少する一方で、次世代組合員の確保ができていないこと、また全組合員の8割強を占める准組合員との関係も築けていないことへの危機感だった。
かつてJAの職員は、友人や親戚、近所の人々など、人と人のつながりがあり、それがさまざまな情報交換の機会となり、職員自らの成長とともに、「私の顧客」としてJAのさまざまな事業の利用につながっていた。しかし、社会環境の変化とともに、このような職員・JAとの関係が希薄になっている。准組合員は多くが直売所や住宅・マイカーローン等の利用者であり、契約の時以外は、JA職員と接する機会はほとんどない。このような危機感から「若手職員が次世代の組合員にアプローチしやすい環境づくり、および准組合員との対話活動の重要性が認識されるようになった。特に准組合員との対話では、何かの基準で選んだ代表者ではなく、身近な人から始め、なるべく多くの准組合員に広げていこうと考えた」(総合企画部)。それが「絆運動」である。
◆1人5世帯を「絆世帯」として選定、広報誌を手渡し
「絆世帯」は、JAの役職員全員が一人当たり5世帯を選ぶ。対象は管内に住む親戚や友人・知人などの身近なところから、50歳以下の人。この際、正組合員か准組合員か、JAの組合員かどうかは問わない。その上で、毎月1回、全役職員が各自の絆世帯を訪問する。
同JAは、設立当初から月1回の正組合員訪問活動を行い、不在の場合は広報誌のポスティングで済ませているが、絆運動では必ず手渡しすることになっている。もともと身近な存在の絆世帯であり、また運動の目的である「職員と組合員・地域住民との結びつきの強化」につなげるためである。絆世帯への訪問は、訪問時にJAの広報誌を手渡すことから、毎号の発行日20日から、翌月の5日までに行い、訪問の日時やアポ取り、勤務時間内外か等の決まりはなく、各役職員の判断に任せている。
絆世帯を5世帯にしたのは、「世帯数を増やすのではなく、少数の絆世帯に対して、各職員が親身になって対応できるようにするため」(同)という考えだ。実際、話がはずみ、従来の組合員訪問より、訪問時間が長くなっている。絆運動を事業推進に使うことも認めているが、事情を知った間柄だけに相手の立場で提案できるというよさもある。
訪問が終わると、各役職員は「絆運動管理シート」に記載するが、この運動は事業推進とは異なり、つながりの強化を目的とすることから、絆世帯の意見や要望、提案を記載する欄はなく、これらを報告する義務もない。何でも話ができる世帯が5世帯あれば、地域のさまざまな情報が分かる。要は、絆世帯の意見には、各役職員が責任をもってきちんとフィードバックを行い、つながりを強化することが重要であって、報告書を書くことが、絆世帯と職員との関係に何かをもたらすわけではないとの考えに基づく。
◆これからの絆運動
現在、絆世帯の登録は337人の役職員で1685世帯。准組合員や地域住民の比率が高いという。今後、登録世帯が50歳を迎えた時でも、JAとのつながりを維持しつつ、新たに50歳未満の世帯を登録することになり、運動の広がりと継続につながる。
同JAはこの「絆運動」を「種をまく運動」ではなく、その前段階の「荒地を耕す土づくり運動」として位置付けている。その対象は地域住民であり、准組合員対策でもある。
絆運動がスタートして1年余り。JAでは、この運動の効果をどう評価するかについても、議論を進めている。また各支店や事業所で、絆運動の委員を設け、彼らを構成員とする絆運動運営委員会を開き、より充実させるための意見集約することなど検討している。
総合企画部総合企画課の恒吉輝彦課長は、「運動が形骸化しないよう、効果的な訪問活動に向けた仕組みづくりを進め、今後は、これまで以上に『地域に寄り添う・地域に根ざしたJA』としたい。またこれからは、准組合員の意思反映に向けた組織化の検討も進めなければならないと考えている」と意欲を示す。
絆世帯を訪問し意見を聞く職員
(関連記事)
・【緊急特集・JA対話運動】まとめ
重要な記事
最新の記事
-
【座談会】JA全青協OBの思い 経験が糧に(2)生産者の声 発信が大切2025年2月27日
-
【座談会】JA全青協OBの思い 経験が糧に(3)先が分かる経営者たれ2025年2月27日
-
日本の食の未来へ「前進あるのみ」 第71回JA全国青年大会が開幕2025年2月27日
-
バイオスティミュラント表示のガイドライン パブリックコメントの募集へ 農水省2025年2月27日
-
社員が米づくり 海外店舗へ輸出 プレナス2025年2月27日
-
23年の農作業事故死亡者数が高水準に 熱中症、未熟練作業者に専用研修など強化 農水省2025年2月27日
-
花が咲いていない真冬のチューリップ祭り【花づくりの現場から 宇田明】第54回2025年2月27日
-
「故郷」を後にする老人のつぶやき【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第330回2025年2月27日
-
大分県のねぎ産出額100億円達成、生産振興大会を開催 JA全農おおいた2025年2月27日
-
スキムミルク使用「一条もんこの明日も食べたい モゥ~っとミルクのキーマカレー」新発売 JA全農2025年2月27日
-
岩手県大船渡市の大規模火災への相談対応 JAバンク、JFマリンバンク2025年2月27日
-
農家向け栽培管理アプリ「Agrihub」に新機能「AI栽培レポート」追加 アグリハブ2025年2月27日
-
千葉県香取市 移住・広報・農業・観光の4分野で地域おこし協力隊を募集2025年2月27日
-
JSS蚕糸の日2025「国産蚕糸・絹の価値とは」開催 日本サステナブルシルク協会2025年2月27日
-
「ノウキナビ」自社配送サービス開始 中古農機具も自宅まで配達 唐沢農機2025年2月27日
-
適用拡大情報 殺虫剤「日曹フェニックスフロアブル」 日本曹達2025年2月27日
-
「米5kgはお茶碗76杯分」小売店向け訴求POPデータに新デザイン アサヒパック2025年2月27日
-
北洋銀行と農業融資分野におけるCDS基本契約締結 日本公庫2025年2月27日
-
藤沢の配送センターで地域交流イベント開催 パルシステム神奈川2025年2月27日
-
東日本大震災 被災地ゆかりのゲストが語るオンラインイベント開催 パルシステム東京2025年2月27日