JAの活動:JAグループしまねの挑戦
水田園芸で大型経営 多品目でリスク回避、200haめざす2020年1月30日
若い力、新技術で島根県農業をリード(1)出雲市の(株)岡農産
島根県の水田地帯である出雲市の(株)岡農産は100ha近い農地で、米と露地野菜を組み合わせた経営を確立している。価格の下落によって米に見切りをつけ、果樹や野菜で所得確保をめざす法人が多いなかにあって、8人の若い青年を雇用し、多品目の野菜に比重をおいた土地利用型農業を実現。将来200haへ向け、一層の規模拡大をめざしている。
岡農産で働く若いパワー(前列左から2人目が社長の岡さん)
岡農産のある出雲市平田地区は宍道湖の東側にあり、山陰屈指の斐川平野の一部をなす水田地帯。そこで岡農産は主食用米45ha、WCS(稲発酵粗飼料)18ha、ブロッコリー18ha、キャベツ7ha、タマネギ3haと多種類の野菜を作っている。
平田地区は昭和60年代から、女性が取り組みやすく、収益性の高いブロッコリーの栽培が盛んで「かあちゃんブロッコリー」のブランド品になっている。岡農産社長の岡舗潔さん(43)もその流れから、米とブロッコリー中心の経営を父親から引き継いだ。
本格的に品目を増やし、規模拡大を始めたのは、株式会社化した2年ほど前からで、必要な農地は、その7割以上を農地中間管理機構を通して確保した。平田地区を中心に、一部は安来市を含め、多くは出雲市内に散在している。品目の多さや農地の位置などから、経営的には決して効率がよい条件ではないが、岡さんを含めた役員4人を含め12人で運営し、ブロッコリーやタマネギなど野菜を中心に水田園芸で規模の拡大をめざしている。
特に戦力になっているのは若い従業員で、雇用はほとんどが職安(ハローワーク)の紹介だが、9割は定着しており、それぞれの分野を任されている。また出雲地区本部は記帳代行、農業資材や販売の情報提供などで岡農産を支援。農地中間管理機構を通して農地を借りやすいよう、株式会社化した。
岡さんは多品目栽培について、リスクの回避をあげる。かつて米とブロッコリーが中心だった時、米の暴落に遭い、ブロッコリーに救われたことがある。いま規模拡大に取り組んでいるのがタマネギ。県が推奨している園芸品目の一つで、岡さんは今年度から5か年で20haへ拡大する計画を持っている。タマネギは定植から収穫まで、ほぼ機械化が可能な品目で、露地栽培の規模拡大には適している。ただ収穫期の6、7月は梅雨期の上に、ブロッコリーの収穫、田植え作業にも重なる不安はあるが、必要な機械は整え、すでに担当するメンバーを決めている。
岡農産の将来展望として、岡さんは、全体で200haまで規模を拡大し、販売額をいまの約1億円から、5億円に拡大する夢を持っている。「野菜なら、それはできる」と自信を示す。その背景には、いま進められている宍道湖西岸地区大区画圃場整備事業がある。完成後にはいくつかの営農組合が農地を利用することになるが、いずれも担い手が高齢化して、農地の維持が難しくなることが予想される。区画は1haで、潅排水施設も整っており野菜栽培ができる。
キャベツは、平田地区から東へ車で1時間半かかる安来市でも作っている。問題は運送だが、これはJAしまねの出雲地区と安来地区の地区本部の連携によってトラックを手配してもらい、運送の手段を確保している。今後、岡農産の規模が大きくなると、こうしたJAの支援が一層、必要になる。
また、平田地区でタマネギを本格的に作っているのは岡農産だけだが、仲間づくりの必要性を感じている。集出荷施設や輸送手段などで協力しあうことで、よりコストを削減できる。「地区を越えた部会づくりも必要」と感じている。
いま、岡さんが取り組もうとしている新しい作目にサツマイモと白ネギがある。サツマイモは干し芋用として、県内の業者から引き合いがきており、白ネギは労力配分の上で、冬場の作業に適している。岡さんの挑戦はこれからも続く。
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