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JAの活動:女性に見放されたJAに未来はない JA全国女性大会

現地レポート:JA山口県 「女性部と共に」JAと協働2020年1月31日

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参加型の組織づくりへJA山口県宇部総括本部副本部長梶山ゆかりさん

 女性部活動、生活・福祉事業一筋にきたJA山口県の梶山ゆかりさん。県単一のJAがスタートしたばかりで、一番難しい時に、宇部事業本部の福本部長として総務と経済部門を担当する。JA山口県は75歳以上の正組合員が半分を占め、正組合員対策は即ち高齢者対策でもあり、これまでの経験と知識を生かした活躍が期待される。

ミニデイサービスで利用者の世話をする梶山さんミニデイサービスで利用者の世話をする梶山さん

◆副本部長として総務・経済を担当

 梶山ゆかりさんは、2019年4月1日に県単一JAとしてスタートしたJA山口県の宇部事業本部副本部長に就任した。2名の副本部長が金融と総務・経済を担当し、梶山さんは後者を担当している。旧JAで言えば常務に相当する役職とのこと。

 女性組織の事務局や生活指導員など農協では一貫して女性組織や生活活動を担当してきたため、「経済は専門外でご苦労はないのか」と尋ねたところ、言下に「それはない」と返ってきた。この言葉はこれから記載する梶山さんの「働き方」と実績をみれば納得できよう。


梶山ゆかりさん◆生活と営農指導「車の両輪」で

(写真:梶山ゆかりさん)

 梶山さんのJA職員としての原点は最初の職場である高千帆農協での体験にあるという。その一つは、女性組織担当は購買課に所属していたため、営農指導員や相談にくる組合員から営農経済を学び、また女性部が購買事業の集金をしていたことから、生活指導と営農指導は車の両輪で、一体的取り組みが必要だと実感したことである。

 もう一つは、職員の働き方が気になり「この状態を何とかしよう」と経済事業の販売高増加を目的に提案した「農協祭」での体験だという。農協祭ではJAを知ってもらおうと全職員をテントに配置し、バザーではメニュー提案から調理、前売り券の発行・販売まで女性部が全面協力で取り組んでくれた。結果は経済事業の販売高も上々で初の試みは大成功に終わり、事務所に戻った梶山さんを女性部全役員が拍手と労いの言葉で迎えてくれたという。女性組織の協同の心と底力を知らされた梶山さんの女性組織との二人三脚はここからスタートした。


◆支部ごとに対話活性化方法作成

 梶山さんが一貫して追求してきたのが女性組織活性化で、その一つに合併時の対応がある。合併で部員の顔が見えにくくなると結集力が弱まることを懸念し、JA小野田市誕生の際に当時不景気風が吹き出していたこともあり、家計簿記帳運動と「JA仲間づくり秘湯の湯積立貯金」を組み合わせた活動を開始した(500人が貯金を開始)。「仲間づくり」に繋がったこの取り組みで「全国家の光大会全中会長賞」を受賞している。

 さらに、JA山口宇部誕生の際にはJA独自で「家の光愛読者大会」を開催し、2500人もの部員が参集し、県単1JAとなった今回の合併では、仲間づくり運動としてJAとの協同で検診メリット(1割引き、厚生連病院との連携)等を付与した「元気で長寿定期貯金」に取り組んでいる。いずれもJA合併で不安・危機感を感じていた部員たちが、JAと女性組織のこれからを我がこととして受け止め、「皆でやろう」と声をかけあい目標を達成してきたという。

 とはいえ、世代交代に加え地域婦人会解散で女性部も解散した支部が現れるとそれに同調する空気も生まれ、女性組織の基盤が揺るぎかねない状況がでてきた。一度つぶれた組織の再生は容易でないことを知る梶山さんは女性組織の見直しに取り組むことにした。

 まずは「女性部は必要か否か」を支部ごとに話し合うこととし、その際に職員には「何も言うな、記録係に徹するように」と指示した。そこでは「参加しないのに会費を取られる」「自分が役員の時に潰したくない」「でも役員はやりたくない」といった率直な意見が出され、その記録をもとに検討を重ね、「女性組織活性化方策」を創りあげた。

 それは、(1)会費は徴収せず、参加者の実費負担、(2)活動は全体の方針を参考にしつつ、支部ごとに決める、(3)活動は支部ごとに支店を拠点に、(4)年2回、支部報告と全体の方針を討議、というもので、ボトムアップ型の活動とそれを全体にフィードバックする双方向性の仕組みで、それゆえ活動は実に多様である。参加費の実費負担は「参加したい活動」づくりや「参加型組織」への脱皮を促すが、その基本は「教育」だとし多様な学習の場も開設した。このように梶山さんは合併や女性の意識変化等の環境変化にすばやく対応してきたと言える。


◆事業とリンクし活動を見える化

 梶山さんの仕事への取り組み方で特徴的なのが、女性活動とJA事業をリンクさせた多彩な活動を創り出していることである。その理由は、女性組織だけでは女性のニーズに応えきれないこと、そしてJA事業への女性活動の有用性を「数字」で示し可視化するためである。それは活動に取り組む上で不可欠な上司やJAの理解を得るためであり、女性組織は組合員組織の一つだとして認知してもらうためだという。

 ちなみに梶山さんはJA山口宇部誕生に先立って、県中央会に組織合併プロジェクトを提案し立ち上げてもらったが、これも合併後の女性組織の位置づけを明確しておくためであった。

JAデイサービスセンター「樹」◆女性部の活動をJA事業に反映

 働き方のもう一つの特徴は、女性組織発の活動をJAに働きかけJA事業に進化、発展させたことである。例えば、高齢者福祉事業についてみると、2000年の介護保険制度施行に先立ちヘルパー資格を取得した女性部員たちとヘルパー派遣をスタートさせ、さらにその後の展開を視野に入れ組合員への意向調査を実施している。それを基に作成した高齢者事業活動策をJAに提案、これが理事会で承認されJAの高齢者対策事業活動がスタートしている。

 梶山さんは担当者として訪問介護ステーション、居宅介護支援事業所、デイサービスを順次開所し、福祉事業の拠点づくりに取り組んできたが、これらはJAと女性組織との協働の産物と言えよう。デイでヘルパーやボランティアとして活動する部員にお会いしたが、「自分たちで作った施設だからと」とイベント等も自主・自立で実施しているという。


◆女性理事5人に独自の学習会も

 注目したのは女性理事選出に梶山さんと女性部リーダーがタッグを組み積極的に取り組んだことである。まず最初は白羽の矢を立てた女性を地域から当選させ、さらに「1名では足りない」と、女性部枠が設けられたのを機に理事・総代、地域リーダー育成のための講座を立ち上げ、女性部枠1名に加え地域選出2名の計3名の女性理事が生まれた。その後は女性部枠を2名に増やし、地域選出3名を合わせ5名の女性理事を誕生させた。この間にはスキルアップのために理事会資料をテキストに各自夕食持参の学習会もやってきたと言う。

 こうした女性理事の増加と発言力アップが理事会での女性理事の影響力を強め、女性組織の位置づけやJAとの協働事業等、JAのあり方に影響を及ぼすようになったのではないか。


◆現場から課題をJAとのパイプ役

 女性組織担当として梶山さんが心がけてきたことは「部員と共に」だと語る。部員と共に現場から課題や取り組み方を探り、話し合いを重ねながら活動の企画、実践、そして総括し、次へと繋いできたとのこと。そこでの自らの役目は「JAと女性部とのパイプ役」だとし、「女性部の声をJAに繋ぎ」、「JAの要望等を女性部に繋ぎ」、両者良しとする活動や事業をすることだという。だから、同時に「JAと共に」と「JAの総合性を活かす」ことを強調する。

 これはJAは、それぞれが役割分担しつつ協働することでJAの総合性を活かした事業活動ができることと、そうした方向性をめざす大切さを指摘していると言えよう。その意味で「JA自己改革」に取り組む今、担当者の果す役割はますます重要性を増している。



◇   ◇   ◇



女性の参画、一層必要に

JA山口県宇部統括本部長 福江幸雄


 宇部統括本部では、地域の皆さんにJAと「地域の農業」を知ってもらうため「食農教育」に取り組んでいますが、今後は子どもたちだけでなく、地域の方々にも広げたいと考えています。また、JA山口県は75歳以上の正組合員が全体の半分を占めるので、「高齢者対策=正組合員対策」として捉えた暮らし支援が必要で、それはJAの存在意義と次世代対策にも繋がると考えます。

 そして、直売所や高齢者福祉事業は女性組織の活動が原点であり、また教育文化活動の主役も同様であり、女性組織を「JAの基礎組織」として位置づけています。女性の参加・参画がなければJAが成り立たないJA運営に重要な役割を担う組織です。

 JAの歴史的背景によるジェンダー差別をなくすためにも、JA運営に女性の参加・参画が、これまで以上に必要だと考えています。

(インタビュー・文責 日本協同組合連携機構客員研究員・根岸久子)



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