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JAの活動:人づくり 組合員からの学びで人が育つ

座談会:10年、20年後を見据えた人づくりを(1)2020年2月7日

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出席者:藤山作次JAえちご上越理事長
下小野田寛JA鹿児島きもつき組合長
田村政司JA全中教育部教育企画課課長

 協同組合の第5原則は「教育、研修および広報」の必要性を指摘しているが、今日、JAを支えてきた世代が大きく変わる中で、協同組合の価値を次の世代へ伝えるには、学びと実践を通じた「人づくり」が欠かせない。この認識のもと、JAえちご上越の藤山作次理事長とJA鹿児島きもつきの下小野田寛組合長、JA全中教育部教育企画課の田村政司課長の3人が、「人づくり」をテーマに意見交換した。

三人左から田村課長、下小野田組合長、藤山理事長

組合員・地域に育てられる現場感覚と対話能力向上を

 田村 第28回JA全国大会の決議に基づいて「第3次JA人づくりビジョン運動方針」を定めました。多くの課題がありますが、大前提は、人づくりのための人づくりではなく、JAの理念・ビジョンと、それを実現する経営戦略に基づいて人材育成をするという考え方です。
 もう一つは、これまでの職員に特化した教育を改め、組合員、役員、職員3者の学び合いによる人づくりを打ち出しました。対話運動や支店協同活動もそうした学び合いの機会です。三点目は学びと実践のPDCAサイクルです。学びのための学びではなく、学んだことを実践する中で体得し血肉化していくことです。

藤山氏 藤山 教育は協同組合運動でもっとも大切なことです。JAの組合員、役職員は、戦後の第1世代が引退し、いまや第2、第3世代に変わり、協同組合の精神が薄れてきている現実があります。それを認識した上で施策を講じていますが、これだけJAをめぐる環境が厳しくなっている今日、協同組合とは何かについて、改めて組合員に理解してもらう必要があります。

 役員はさまざまな研修の機会がありますが、実践者である職員は、協同組合のことをどこまで理解して組合員と接しているかが問題です。JAえちご上越では第6次の中期計画で、「組合員から育てていただく」という考え方を重視しています。支店協同活動も「地域から育てていただく」ということです。そういう形の中で育つ職員であってほしいですね。

 下小野田 時代の流れ、世界の趨勢を見て「格差」「分断」が進んでいます。そういう時代背景から、いま協同組合の存在が重要になっています。今回のラグビーのワールドカップがあれほど盛り上がったのも時代が求めているからだと思います。我々もJAは一つ、ワンチームを目ざして頑張らなければなりません。その時、JAで重要な役目を果たすのは職員です。600人いる職員がきちっと組合員に向き合って仕事をすれば、ものすごいことができます。職員は組合員にとって信頼のパートナーであり、組合員も優れた職員が育つことを望んでいます。


◆農業の知識と経験

 田村 職員教育についてですが、今日、職員のなかで農家子弟が少なくなっています。JAは農業をメインとして仕事しているのですが、信用・共済の職員は、実際の農業には直接コミットしていませんが、農家の営農、地域の農業に関心を持つことが大切です。農業の学びと経験から得られる感性が、組合員との絆、確かなコミュニケーションにつながるのではないでしょうか。

 藤山 昨年の新入職員15人に耕作放棄地20アールで米づくりをしてもらいました。営農の担当者の指導で植え付けから収穫、食べるところまで経験し、コストや収益を計算してもらっています。
 もう一つは、一昨年から職員を対象に、20haの休耕地で「放課後Agriスクール」を始めました。現在20人ほどの職員が参加しています。さらに今年、機構改革で営農と生産購買を一体化しました。効率化も含め、営農指導とセットで事業を進めようというものです。
 また、肥料、農薬の購買を担当する職員が、「農業の知識が不足しているので勉強したい」と言ってきたので、営農基礎講座を始めました。今年2回実施しましたが、1回に140人の参加者があり、支店の一般職も参加したいという声が出ており、好評です。

下小野田氏 下小野田 農業への理解は不可欠ですね。そのため人事異動では意識して部署間でローテーションしています。特に支所は営農、購買、販売、信用、共済部門があるので農業について全て体験できます。また若手の新人には、職場離脱制度でJAの子会社に行ってもらい、種まきや育苗などの作業を経験させています。

 田村 これから信用事業の厳しさは続くでしょう。営農経済だけでなく、信用、共済、くらしの事業を含め、農業を通じて組合員、地域、JAに、いかにして付加価値を興すことができるかを考える必要があります。その基盤としてすべての職員が農業にコミットするようにすることが、JA経営の下地づくりになると思います。

 藤山 若い職員は、組合員訪問しても会話がはずまないのが実情です。少しでも農業の知識、経験を持って訪問することは重要ですね。


◆営農指導力の向上

 田村 いま農業、農協経営はどのような問題がありますか。

 藤山 米単作地帯のJAえちご上越ではなかなか農業の将来像が描けません。米は共乾施設の維持管理に金がかかります。実費を組合員に負担してもらうことも考えられますが、それでは農家経営がますます厳しくなります。これまでは信用・共済事業で赤字を賄ってきましたが、経営が厳しくなるなかで、これをどうするか、具体的な施策が打ち出しにくいのが実情です。この状態が今後も続くとしたら、組合員教育を徹底し、経営についての理解を得ないとやっていけなくなります。

 下小野田 農家所得の向上が第一ですので、直接的には営農・販売・購買に力を入れ、その結果として信用共済にお金が回るよう、営農経済事業に力を入れる方針です。これが農家のため、JAのためであり、地域のためでもあるのです。その一つとして、昨年11月にJA直営のラーメン屋を開店しました。もともと近い「食」と「農」を通じて農業をアピールしたいとの思いからです。
 産地ならではの新鮮なトンコツを使ったスープは自慢の一品です。ぜひ全国のみなさんに食べに来ていただきたいと思います。この4月にオープンする直売所の農家レストランのステーキやトンカツもおいしく提供したい。

田村氏 田村 これからも、JA事業の中心は営農販売事業だと思います。それには、技術的にも、営農指導員の力量アップが求められるのではないでしょうか。

 藤山 営農指導の機能を高めるため、センター構想で指導員を拠点に集めました。しかし転作や補助事業などに伴う事務処理が多く、なかなか現場に出られない現状があります。特に園芸農家などは、その技術は職人レベルにあり、技術面での指導は不足しています。組合員の経営のなかに入り、学びながら成長して欲しいですね。

 下小野田 指導員も自分で野菜を作らなくても、経営について客観的にアドバイスしたり、情報をつないだりすればいいと思います。JAには農業生産を行っている子会社が3つあるので、苗づくりや野菜の選別などを一緒にやることで経営感覚を養えると思っています。(続く)

【座談会:10年、20年後を見据えた人づくりを(2)】

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