JAの活動:緊急企画:JA対話運動~コロナ禍での協同~
運営は組合員の自由意思で 「地域」で共通する生協とJA 日本生協連 藤井喜継専務理事【緊急企画:JA対話運動~コロナ禍での協同~】2020年7月29日
JA対話運動~コロナ禍での協同~
JAグループが組織を挙げて取り組んだ「JAの自己改革に関する組合員調査」の結果がまとまり、7月29日公表された。この調査の目的は聞き取り調査を通じて組合員との対話を強めようというもので、コロナ禍のもと、あらためて「対話」の重要性が認識されている。JAのこの取り組みに対し、同じ協同組合である生協、あるいは地域振興という目的を持つ団体や組織、あるいは識者の評価、さらにこの調査で何を得たか、JAの現場の声と取り組みを聞いていく。(随時掲載)
農協のパワーに感銘
――JAグループは昨年、1年かけて准組合員も含め、直接組合員宅を訪ねて対面で組合員調査を行いました。JAの事業に対し、組合員がどのように評価しているか知るとともに、調査を通じて組合員との対話をより深めようというものでした。組織を挙げて取り組み、約606万人の組合員を対象に実施しましたが、同じ協同組合組織として、このJAの取り組みをどのようにみますか。
藤井 すごい取り組みだと思います。協同組合は、組合員と向き合って事業を行うことが基本です。それをやり切ったのはすばらしいことです。農協のパワーを感じますね。調査の結果をみると、多くの組合員が、JAは地域になくてはならない組織として評価しています。改めて組合員の皆さんが協同組合を意識し、農協の組合員であるという誇りをもっていることが分かったのではないでしょうか。
農協は生産者、生協は消費者の組合ですが、いずれも地域を拠点としています。地域の人たちに、どう対応し、サービスするかが常に問われています。正組合員は当然ですが、その周りにいる人も活動の対象になるのですから、正組合員も准組合員もそこには区別がないと考えるべきでしょう。
そもそも日本の農業は集落を単位に助け合いながら作業を行い、生活してきました。それを農家は正組合員、非農家は准組合員として分けるのは無理があると思います。調査結果で、准組合員を含め、農協があってよかったという回答が多かったということは、単位農協が地域に根差したサービスを行っているということの証(あかし)ではないでしょうか。
信頼されている農協
――政府の農協改革では、農協は指導・経済活動に集中すべきで、特に金融・共済に偏った都市部の農協を問題にしていますが。
藤井 協同組合は自主・自立の組織であり、どのような運営・事業を行うかは組合員が自ら決めることです。都市部でもこれだけ農協が頑張っているということは、銀行やスーパーなど農協以外にも多くのサービスがあるなかで、組合員が自ら農協を選んでいるからではないですか。信用と共済事業であっても、農協が選ばれたということは、利用者である組合員の心に響く事業を展開してきたからである、それだけ信頼されていることです。このことを忘れてはならないと思います。
一方、農協以外のサービスのない中山間地域などでは、農協はなくてはならない存在になっていることが調査ではっきりしました。対面調査によって改めて組合員と向き合ったのは、農協にとってよい機会だったのではないかと思います。
調査結果をみて思ったことは、農業・農協を応援したいと思う人が多いことです。単に事業の評価だけではなく、農業に対して親近感や思いを持つ人が、多くいることを示しています。組合員や地域の人に選ばれた組織であるという確信と自信を持っていいのではないでしょうか。
消費を通じ農業応援
――准組合員の農協への参加はどのようにみますか。政府の農協改革では、議決権がないことなどを問題にしていますが。
藤井 協同組合は、組合員が出資して、自ら運営、利用する組織です。大事なのは運営への参加です。議決権がないという問題はあるかもしれませんが、農協のさまざまな活動に正組合員と一緒に参加できればいいのではないでしょうか。それも含めて、准組合員をどう位置付けるかは組合員が決めることです。
また、単協レベルでの正・准組合員の問題はあるとしても、全国レベルで考えると、都市部の農協の組合員も、同じ農協組織でともに日本の農業や農村のために活動しているのだと考えたらいいと思います。組織の違う生協も、消費することで農協・農業を応援する。この気持ちが大事だと思います。都市農協の准組合員でも、日本の農業や農村のことを考えて、信用・共済で農協を利用していれば、たとえ准組合員が増えても、農協であることに胸を張って農協の看板を掲げていて、なんら問題はないのではないでしょうか。
地域の団体と連携を
――生協は農業と農協に対し、どのようなスタンスで臨んでいますか。
藤井 食料をつくっている農業が元気であって欲しいです。日本の農業を通じて、安全で安心な食を守り、田畑や森など自然環境があるという日本の原風景、そして日本の伝統的な食文化を守り、次世代へ継承していく。それが消費者・組合員、生協の願いです。そのなかで生協、JAを含めた地域のさまざまな団体・組織との連携のあり方を議論していく必要があると思います。
特に農協をはじめとする協同組合間の連携では、全国レベルでJCA(日本協同組合連携機構)の場があります。生協と農協の連携の基には、同じ地域の組織だということがあり、海外に出て行くことができる企業と異なり、我々協同組合は、地域をいかによくするか考える組織です。各地で連携の事例が多くみられ、その取り組みも増えています。
――連携の際のポイントは何でしょうか。
藤井 日本生協連も都道府県生協連も基本的には連合会組織です。一つひとつの組織は小さくても、それをベースにみんなでまとまって力を強めようということで議論してきた歴史があります。
連携の仕方はいろいろあると思います。農協が大型化して、かつての支所・支店の廃止が増えています。生活購買に強い生協と、集落をまとめる農協が、お互いのノウハウと施設をうまく使って、地域の人々の生活をフォローする動きが生まれています。
日本生協連は今年度の通常総会で、「日本の生協の2030年ビジョン」を決めました。コンセプトは「つながる力で未来をつくる」です。農協や社協(社会福祉協議会)など、地域に根を張る組織・団体とのつながりを強め、「安心してくらし続けられる地域社会」づくりを目指します。
多様な経営に対応を
――農協の取り組んできた自己改革をどのようにみますか。
藤井 農協の自己改革の資料をみて感じたのは組合員が多様化していることです。農業の担い手も大規模から中小零細経営までさまざまで、経営形態も多様です。農協の自己改革では、それらに正面から向き合い、それぞれに合わせたメニューづくりをされていると思います。大変なことですが、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
生協と農協は、地域を守るということで共通した目的をもっています。それも生協あるいは農協だけでなく、地域のあらゆる組織と力を合わすべきです。地域づくりと地域を守る視点から生協と農協が事業と活動で連携することがますます求められると思います。
――収束のみえないコロナ禍ですが、協同組合への影響は。
藤井 リアルに集えないことは、人のつながりからなる協同組合にとっては大変なことです。生協では、リモート産直見学など、いろいろ知恵を絞っています。リモートでも顔は見えますが、それ以上のつながりをどうつくるか、生活スタイルの変化にどう対応するか、組合員と向き合いながら次のステップを考える必要があります。
日本生協連では2018年から、日常の消費行動に環境や社会など他者への視点をプラスする「エシカル消費」の取り組みを展開しています。これを「誰かの笑顔につながるお買い物」と表現し、地域・環境・社会・人々の4つの視点で進めています。
農業に関しては、食べ物の先にある生産者がいます。そのことを考えて消費することが持続可能な農業につながるのだと考えています。コロナ禍は食料、国産について、国民の関心を高めました。その意味で農協には頑張っていただきたい。我々も国内の農業が大事であることを積極的にアピールしていきたいと思います。
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