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JAの活動:ウィズコロナ 命と暮らしと地域を守る農業新時代への挑戦

【対談】農水省・青山総括審議官×JA全農・平野スマート農業推進室長 農業新時代を拓くスマート農業(下)【特集:ウィズコロナ】2020年8月20日

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JAの音頭で普及を

◆スマート農機のシェアリングを

全農平野室長JA全農耕種総合対策部スマート農業推進室平野幸教室長

青山 たぶん同じ地域だと作業時期が重なってしまうので難しいところがあると思います。そこは全農のように農家の皆さんとお付き合いのある組織が調整して、この地域はこの1週間で、こちらはその次の週というように差配してもらえればシェアリングが進んでいくのではないかと思います。
岡山の真庭市での実証事業では標高で作期が違うことに着目して同じ機械を2倍使うという計画をしていました。昨年は台風に見舞われるなどでなかなかうまく行きませんでしたが、シェアリングを実現するにはスマート農機をどこからどこへ運べば異なる作期で使うことができるのかといったことを広範囲で検討していく必要があると思っています。たとえば、どこに休んでいる農機があるのかといったことをデジタル化して把握するといった仕組みを全農が中心になってつくっていただくといいのではないでしょうか。

平野 全農では共同利用と呼ぶことが多いのですが、その必要性は認識しており、以前から様々な取り組みを行ってきました。しかし取り組んでみると課題が多く、普及は容易でないと感じています。
それから先ほどの資材事業研究会の中で出てきた意見として「水稲は比較的進んでいるが園芸でもスマート農業を進めてほしい」というのもありました。

青山 果樹や園芸は水稲と比較すればニッチな世界なのでスマート農機の開発が遅れているということはあります。ただ、中山間地域の果樹では夏場の防除作業が厳しく、それから草刈機などの要望も強く、我々も早くスマート化に取り組まなければならないと思っています。
中山間の傾斜地ではドローンでの防除は難しいと言われていましたが、山梨での実証ではドローンが空気を下に押し下げるダウンフォースの力でブドウの葉が舞うので上からの散布でも葉の裏の防除もできるという声もありました。

--青山審議官は経営管理ソフトは農業を変えるものとしての重要性を指摘されましたが、現場ではどのような例がありますか。

青山 高知のある集落営農法人の場合、新人が入ってきても地図情報があるのではそれをみればどこを耕作しに行けばよいか現場に行ってすぐ分かるということでした。手書きのときは現地確認に手間がかかったということですから、新人が入ったときでも情報を共有できたり、農業経営のノウハウを継承していくにもこういうソフトは絶対に必要だと思いましたね。

平野 我々もよく言われるのは、事業承継のときにZ―GISのような仕組みがないと、先代の頭の中に入っていた地図が次の世代に引き継がれないということです。これが開発した目的の一つでもあります。人が代わったり、代替わりがあったり、新しい従業員がきたり、というときにこういうシステムが必要だと思います。
エクセルの表を見える化するだけの簡単なものですが、「今日の作業はここ」というように指示書として提供できますし、JAでは管内の水田全体をZ―GISに取り込んでブランド米生産に活かしているところもあります。
また、リモートセンシングに注目していまして、この春からあるリモートセンシングシステムと連携するようにしました。その試験としてある法人のほ場を撮影し分析した結果を親子に見てもらったところ「ここは昔から収量が悪いんだ」と言っていたところと結果が一致するなど、父親の知識が後継者に見える化して伝えられることも分かりました。これなどはまさにスマート農業について納得していただけた機会になったと思います。

青山 昔からある技術や知識をつなげてみることではじめて分かることや出来ることがあって、それによって新たな価値が出てくるということはあると思います。そういった仕組みを使った成果を紹介することで「そんなことが出来るようになったんだ」というものを皆さんに紹介しながら普及を図っていくということだと思いますね。
平野 審議官が最初に指摘されたように、温室に環境測定装置をつけ、収量だけでなく温度管理の方法も隣の團場のやり方を見えるようにしたシステムがあるんですが、「あの収量を挙げている人はこの時間に温度を上げているんだ」といったことが分かって、部会の中でそれを真似て高度にしていこうと確認しているところがあり、産地づくりにつなげています。

◆地域の農業戦略をデータで支える

--今後の取り組み方針と農政に期待することをお聞かせください。

平野 Z―GISについては地域を面的にほ場ごと色分けすることで、地域を見える化して地域戦略を練るツールにもなっています。たとえばJAのある支店内のほ場を全部登録し、生産者の年齢も入れてみると、5年後にどれだけ管理する人がいなくなってしまうかも分かる。それに基づいて戦略を切り替えるといったかたちで使うなど活用法を広げたいと思います。
審議官のお話を伺い、国と向いている方向は同じだということが改めて分かりました。もちろん全農自身もトラクターの共同購入のような取り組みを今後も進めていきたいと思っていますが、同時に農家が手を出せるような商品や技術を普及していければいいと考えており、政策としても後押ししていただければと思います。

◆JAグループの情報発信に期待

--全農およびJAグループに対する期待をお聞かせください。

青山 148か所でスマート農業の実証を行っていますが、半分くらいはJAが組織として関わっていただいています。実際に「労働時間が減った」「収益が上がった」という成果が出てきていますが、その紹介の仕方に私たちは苦労しています。
一方、JAがスマート農業を展開している実例は国の事業の箇所数よりも多いと思いますから、ぜひ、組合員の方たちにそういう実例の成果をお知らせいただきたいと思います。より多くの人たちが注目してくれれば、スマート技術を入れてみようと思う人も増えると思います。使う人が増えればコストも下がります。JAグループの情報発信に期待しています。
もう一つは今日の話題になりましたが、シェアリングへの期待です。これからスマート農業が普及していくにはシェアリングが欠かせません。そのためには共同で使うことに慣れている人たちに誰かが音頭をとってシェアリングするということが必要だと思いますが、一番なじみが深いJAグループが音頭をとるなどの役割を果たしていただければと思っています。

--ありがとうございました。

【対談】 農業新時代を拓くスマート農業(上)

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