JAの活動:JA全農の若い力
全農ET研究所 畜産基盤の強化に直結 櫻井皓介さん【JA全農の若い力】2020年8月28日
JA全農ET研究所は早くからET(Embryo Transfer:受精卵移植)に取り組み、和牛生産基盤を支えている。現在は年間2万5500個の受精卵と1100頭のET妊娠牛を全国に供給しているほか、新技術の開発にも力を入れている。今回は同研究所の3人の若い力を訪ねた。
畜産基盤の強化に直結
受卵牛・種雄牛チームでリーダーを務めるのは2012年入会の櫻井皓介さん。
入会以来、家畜市場で農家の代理で牛を買いつける素牛購買を担当し、2018年にET研究所に配属された。大学時代に受精卵移植師の資格は取得していたが、実践の技術は配属後に身につけた。チームは村里さんら職員5人。ほかに繁殖義塾の研修生を引き受けている。チームのミッションは「農場に来た牛をとにかく受胎させること」と明解だ。
妊娠牛としての出荷頭数は年間1100頭の実績を挙げている。この数字を維持することが目標で、そのためには受胎率7割を維持する必要があるという。そのために研究所が一体となって良質の受精卵を生産すると同時に、村里さんも指摘しているとおり、移植前の受卵牛の健康や発情を確認するなど、櫻井リーダーのもと「受胎できる、状態のいい牛にする」のがチームとして重要だ。
「預かっているホルスタイン牛などを妊娠牛として帰すことで酪農家の経営安定につなげる事業であると同時に、妊娠牛を全国に供給することで和牛生産の拡充と生産基盤の維持にもつながっています」と櫻井さん。全農ET研究所では受精卵を産地に供給する事業とともに、このように妊娠牛自体を生産しそれを現場に供給することで酪農・畜産を支えている。
「研究所でありながら事業が直接、生産基盤の拡張につながると感じています。持っている技術を使って1頭でも多く供給していくことが私たちの仕事だと考えています」
若い世代をサポート
櫻井さんたちが受精卵移植をした黒毛和種の妊娠牛は、およそ分娩3か月前に契約繁殖農家に預けられる。その後、出産を終えた牛は研究所の農場に戻ってくる。母牛となって帰ってきた牛のなかには体調が悪く受胎に苦労したなどの牛もいて「よく育ったな」と感慨を覚えることもあるという。研究所に戻った牛は、今度は採卵する供卵牛として飼養される。つまり、櫻井さんたちがつくる受卵牛は供卵牛をつくることにもつながっている。現在、年間100頭の供卵牛をつくることを目標にしている。そのための子牛の導入と出荷計画の策定も櫻井さんが担当する。子牛の導入計画は入会後の素牛購買の経験が役立っており、現在の受精卵移植の仕事とともに「全農に入会し、生産者に近い現場で働いていると実感している」という。
受精卵移植技術の習得は難しく「場数を踏んでいくしかない」というが、その技術者を育てるためにつくった「全農繁殖義塾」の研修生への指導が大切になる。
櫻井さんは「繁殖義塾を通じて、畜産や酪農の現場に興味がある若い世代に、繁殖の知識と技術向上をサポートし、て現場で活躍する仲間を増やしていきたい」と話す。
(あわせて読みたい記事)
全農ET研究所 受精卵移植で増頭に貢献 村里慎太郎さん【JA全農の若い力】
全農ET研究所 ゲノム育種で優良和牛 造田篤さん【JA全農の若い力】
JA全農家畜衛生研究所クリニックセンター 検査を武器に農家をサポート【JA全農の若い力】
畜産農家の経営安定へ飼料の基礎研究で貢献 全農飼料畜産中央研究所(上)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(139)-改正食料・農業・農村基本法(25)-2025年4月26日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(56)【防除学習帖】第295回2025年4月26日
-
農薬の正しい使い方(29)【今さら聞けない営農情報】第295回2025年4月26日
-
1人当たり精米消費、3月は微減 家庭内消費堅調も「中食」減少 米穀機構2025年4月25日
-
【JA人事】JAサロマ(北海道)櫛部文治組合長を再任(4月18日)2025年4月25日
-
静岡県菊川市でビオトープ「クミカ レフュジア菊川」の落成式開く 里山再生で希少動植物の"待避地"へ クミアイ化学工業2025年4月25日
-
25年産コシヒカリ 概算金で最低保証「2.2万円」 JA福井県2025年4月25日
-
(432)認証制度のとらえ方【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年4月25日
-
【'25新組合長に聞く】JA新ひたち野(茨城) 矢口博之氏(4/19就任) 「小美玉の恵み」ブランドに2025年4月25日
-
水稲栽培で鶏ふん堆肥を有効活用 4年前を迎えた広島大学との共同研究 JA全農ひろしま2025年4月25日
-
長野県産食材にこだわった焼肉店「和牛焼肉信州そだち」新規オープン JA全農2025年4月25日
-
【JA人事】JA中札内村(北海道)島次良己組合長を再任(4月10日)2025年4月25日
-
【JA人事】JA摩周湖(北海道)川口覚組合長を再任(4月24日)2025年4月25日
-
第41回「JA共済マルシェ」を開催 全国各地の旬の農産物・加工品が大集合、「農福連携」応援も JA共済連2025年4月25日
-
【JA人事】JAようてい(北海道)金子辰四郎組合長を新任(4月11日)2025年4月25日
-
宇城市の子どもたちへ地元農産物を贈呈 JA熊本うき園芸部会が学校給食に提供2025年4月25日
-
静岡の茶産業拡大へ 抹茶栽培農地における営農型太陽光発電所を共同開発 JA三井リース2025年4月25日
-
静岡・三島で町ぐるみの「きのこマルシェ」長谷川きのこ園で開催 JAふじ伊豆2025年4月25日
-
システム障害が暫定復旧 農林中金2025年4月25日
-
神奈川県のスタートアップAgnaviへ出資 AgVenture Lab2025年4月25日